第14話 エトセトラとの夜のプロレスと驚愕の事実に精神力を消費する

「はあー。一日がこんなに長いのは、いつ以来だ? 引きこもりに日帰りはキツイ」

『確かに。以前のお主と比較すればのう。朝早く起床し、食事も決まった時間に。外出をして、他人と会話する。それすら出来なかったお主が……褒めてやるのじゃ! 偉いぞ! よう、頑張った! おっぱいプレスじゃ!』


 屋敷の自室にて。


 大きすぎるベッドに仰向けでごろついていたところに!? 


 美しく跳躍ちょうやくしてからの。


 ボデェープレス!? 上から来るぞ!?


「ぐががが!? ロープをつかまなければ!」

『あん、お主、どこをつかもうとしておるのじゃ? そうは簡単にのがさない💓』


 へ、変な声出すな!? 


 どこもつかんでないじゃろうがー!? 


 う、馬乗りに!? 


 マウントポジションか!? ガードしないと!?


『ひと昔に流行はやった、乗馬マシーンみたいじゃ。腰回りを動かすことで、理想の体に!? 今なら、な、なんと、エトセトラがまたがって動いてくれます! 残念ながら、挿入そうにゅうしておりません。お値段は、お主の精神力。お問い合わせ対応の人数も増やしておりますうー。エトセトラァーショッピングゥー! お主の欲望、わらわが叶えます!』

「腰をぐるぐる動かすな! 上下運動ヤメテー!? ヒヒーン、お馬さんになっちゃうから!? いつから通販番組始めたの!?」


 いくら仮想といえども。


 エトセは俺の体を自由にする事ができる。


 実際に存在してなくても、感覚器官を操ることで。


 存在があるように。


 ちゃんと、またがってる重さも感じるし。


 このように。


 両手をエトセの胸に触れて、揉む感触もある。


 バーチャルエトセトラに触れると。


 エトセ自身も感じるように設定してあるらしい。


 こやつ、何者なの? 


 人類以上の上位の存在か? 宇宙人?


『ぬあん!? わらわに不意打ち!? こやつめ、うい奴じゃ! ほれ、むぎゅーじゃ!』

おおいかぶさるなよ!? み、密着、け、警察番組!?」


 エトセトラが体を預けて。


 俺の胸の中におさまる。


 こ、恋人みたい。


 とりあえず、髪の毛を撫でておこうかな!?


『きゃほーい、これが正妻せいさいの余裕というやつじゃな! ピロートークしよ?』

「ピロトークって。愛し合った行為の後に、他愛のない話題をする? お、俺達はプロレスしただけだし。海外興業の野望でも話す!? 観客集客に、グッズ販売もするか!?」


 プロレス団体でも立ち上げる気かよ、俺は!? 


『うーん、スポンサーに大企業がついてもらわないと。最初は難しいから、商店街から広げましょう。地域密着からね。女子プロレスリングは、ある程度美女をそろえて。でも、ガチでプロレスする子じゃなきゃ、観客も燃えてくれないわ。コスチュームもセクシー過ぎてはアウト! あくまで、本業はプロレスよ! グッズ販売は人気が出始めてから。お客さんと気軽にコミュニケーションを取れるイベントを進めた方が』

「ガチ解答でびっくりだよ!? どこかで、マネージメントしてたの!?」


 話を振ったのは俺だけども。


 詳しくない? ゼネラルマネージャー経験もあるの!?


『テキトーに言ってみただけじゃ。ほほう。これがわらわに対する心臓の鼓動こどうか。……ちょっと、興奮しすぎじゃない!? 寿命を縮める速さじゃよ!? 死因になるのは勘弁かんべんじゃ!?』

「急に、う、運動したからさ。動悸がしてるだけ。……エトセトラはさ、こんな俺が、宿主で――」


 満足している? いいのか? 


 もっとまともな人物に憑依した方がさ。


『はむう、じゅる……これが、わらわの解答じゃ。気にいらん奴にキスはしまい? ベロチューをな!』

「むぐ、ちゅる、じゅる!? わ、分かんないもん!? ちゅうちゅうするキャラクターかもしれないし!?」


 舌に絡みつくような猛烈キ、キスされちゃった!? 


 チュウチュウ!?


『マイナス思考じゃな。……わらわが満足してなかったら、出会った時点で殺したおったわ!』

「は!? 初耳ですけど!? エピソード0で、俺、殺されてたの!? パラレルワールドじゃあ、死んでる俺いるじゃん!? そいつを助けに行くよー!? お前と死闘を繰り広げてでも、アナザーソージを助けるよ!?」


 明かされた真実。耐え難い事実。


 君は、受け止められかな? 


 やっぱ、コイツ、ラスボスだよおー!


『出会った時点で殺しておったわ!』

「繰り返さないでぇー!? リピートアフターミイしないでぇー!? 英語は苦手ですから!?」


 中学校レベルしかないんです。


 でも、洋楽はちょっと聴くし。


 ハリウッド映画も字幕派です。


『どうやら、他の世界のお主に、手をかけているわらわは居ないらしいぞ? 時々、アナザーエトセ達から通信が来るのじゃ。最近のメッセージで、子供が生まれました! とかあった気が』

「年賀状かよ!? ジョークだよね!? 可能性と言う名のお話だろ!?」


 アナザーエトセトラってなんなの!? 


 平行世界と連絡ってなんだよ! 


 子供できたの!? 


 パパソージ存在するの!?


『おっ? 今通信が【今からソージをぶっころさんです!wwwww】ほほう。痴話ゲンカおつと。返信』

「いやいや、それだけじゃ判別つかねーよ!? 逃げて、アナザーソージィィー!?」


 大絶叫である。


 パラレルワールドの俺、しぶとく生き抜いてくれよ!?


『お主には大いに感謝しておるわ。海外ドラマの面白さを教えてくれたしの。刑事ドラマでは、主人公の昔の同期が出てきたら。そいつ怪しい犯人説とか。まったく関係なさそうなモブが、実は殺人鬼パターンとかの』

「今、命があるのは、海外ドラマのお陰なのかな!? 地上波、枠を増やしてくれー!」


 日本のドラマも好きだよ?……海外は予算が潤沢らしいからな。


 ドラマ一話の予算が、映画を作れる程の金額もあるって聞いたこともあるし。


 世界で見られているもんな。


 マーケットシェアが違いすぎるのか。


『それに、こうして異世界までついて来とるじゃろ? いちいち、お主に対する好感度について不安をいだくな! 殺すぞ!』

「いや、めっちゃ殺意でてるじゃん。命、大事だよね。気にするわ!」


 俺は人を見る目はあると自負している。


 人の顔色ばかり、うかがって生きてきたから。


 特技みたいなもんだ。


 しかし、このエトセトラ。


 謎である。よくわからん。


 ふざけた態度が大半。目的不明。


 そもそも、エトセトラとの邂逅かいこう、覚えてないんだよなあ。


 お前、いつの間に存在してた!? 


 俺の妄想の産物!? 


 心療内科受診しなきゃ! と割とガチで思ったよね。最初の頃は。


「ハア。ツッコミしすぎで、疲労したじゃねーか」

『マジで!? ウケルー! ファミレス行くー? あーしのおごりでぇー?』


 ギャルの姿にチェンジするな! 


 スカート! パンツ見えてるぞ!


「えー? ウィーの? えとせちゃん? まじ助かるわー。コミックとゲームに金ぶっこんでさあー……疲れてるって言ってんだよ! ファミレスねーから! 袈裟けさがためやってやんよ!」

『ぐえええ!? お主、柔道の心得が!?』


 中学と、高校の授業はこの日の為にあったんだ!


 柔道の先生、厳しかったなあー。


『くう!? 体を起こせないだと!? わらわが!?』

「この正体不明のラスボスめ!……まあ、お前がいて結構楽しいし。細かく気にしても、しょーがねー。いきなりのフレンチキス!」


 お返しだぞ!


 ……せいぜい軽く、唇にキスするのが精一杯ですけどね。


『ふ、ふん。子供のキスじゃな。……し、仕方ない、今日は通信終わりじゃ! デ、デレてないからね!? お主の精神力の為なんだからね!? すけこまし!』


 あれ? こいつ、やっぱ俺の事、好き過ぎじゃね?

 

 

 

 


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