第12話 美女達と一緒に混浴で精神力を消費する

 エトセトラ? おーい? 


 生存確認だよ? 居るんだろ? 


 無視しないでよ?


『なんじゃ? おなご共の長湯に付き合っておるのか?』


 そうそう。


 俺一人だったら、からす行水ぎょうすいなんだけどさ。


「あん? エトセのバーチャルリアリティー能力だろ?」

『うん?』


 とぼけちゃって。 


 それにしては演技には見えないぞ?

 

『現実と仮想の区別がつかない? お主、頭、いかれてるのか? ゲームに熱中しすぎじゃね? やばい奴だわー。引くわー』

「ああーん!? お前の能力だって聞いてんだよ! ぎゃおーす!」


 湯舟のお湯をエトセトラに叩きつける。


 しかし、彼女は実体として存在しないから。


 一人でお湯と戯れてる幼子に見えるだろう。


『能力なんて使用してませーん! お疲れちゃんでーす! 喜べ! 女体じゃぞ! きゃほーい!』


 ……まじで!? げ、現実だと!? 


 ば、馬鹿な!? い、いつからなの!?


『ポニテ褐色かっしょく娘が来てからじゃ。お主も、経験値を稼がなければのう? 女体についてのう。げふふふ!』


 【スキル発動 賢者タイム 女性の裸や仕草を目撃しても、体も精神も動じない】


『あとは、若い人達でごゆっくりー! 健闘を祈る! 敬礼! 通信おしまい。エトセより』

「お見合いの席みたいな事言わないでー!? エトセー!?」


 エトセトラの気配を感じない。


 無責任にも程がある。


「ソ、ソージ君? 内なる声さんからですか?」

「サ、サーヤさん!?………ええ。はかられたと言いますか、誤解がね」


 うおっ!? ビックリした! 


 お、同じ、湯舟に入浴中!? 


 視線を向けないようにしないと。


「さん? ですか?……急によそよそしいです。呼び捨てで良いですよ?」


 や、優しさが、俺に、ダメージを!? 


 がはっ。不純な俺を許してください!?


「ソージ? 楽しんでる~? 泳ぎ放題だぞ! あはっ!」

「アイさん、泳ぎたい気持ちは、非常に分かりますけど!? いやん、裸体!?」


 アイさんが、バシャバシャと音たてながら泳いでいる。


 見ちゃ、ダメだ! 見ちゃ、ダメだぁー!? 


 ちらっと、ちらっとだからね!?


「およよ? あたしの体で欲情しちゃったか? ソージのエッチー! ほーら、潜水からの……突撃だあー!」

「そ、そんなことないし!? 男の子だもん!? 潜って?……がばがば!?」


 生の感触があああ!? 


 お湯を飲んじゃいますうう!? 


 スキル使ったのに!? 効果があまりない!?


『あ、ゴメン。スキル効果、うっかり打ち消しちゃった。誰でも間違いはあるよね? わらわのおまぬけさん! お主は許してくれるじゃろ? 追伸ついしん いかなる時も愛しています。エトセトラより』


 あざとすぎるアイドルの真似事で。


 水に流そうとするエトセトラ。


「ごほっ。げほっ……アイさん、やったな! コノヤロー! 湯をぶっかけてやんよ! ドラァ!」

「げっ!? ちょっと!? 待っつ!? きゃん!? 顔に、よくもぶっかけたなー! ソージめ!」


 小学生のプール授業の自由時間だな。


 お互いにお湯をぶっかける祭にも。


飛沫しぶきがわたくしにも!? こいつら子供ですの!?……おーほほほ! 戦闘経験ばかりですと。頭の中もおサルになるんですの? アイアイさん?」

「ごめんねー。ほんと。あたしは、賊を一人倒しただけで、天下を取った様な、愚かな思想はもってないのー。ごめんごめん」

「……ぶくぶくぶく」

「ク、クリスティーナァー!? 沈没!? アイさん! せっかく本調子を取り戻してたのに、鬼畜ですか!?」


 急遽きゅうきょ、湯の中に沈みゆくクリスティーナを引き上げる。


 ふう、エロい乳してやがって。


 心臓の鼓動を確かめないと。


 あくまで、救助だから。


 ヤマシクナイヨネ? クリスティーナサン!


「ふぁ? わたくしはどうしたのでしょう? 一時的に気を……あん、あん!? ソ、ソージ!? 胸をこねくり回さないでぇー!?」

「いやー、生きてて良かった。心臓マッサージが効いたみたいだね」


 うんうん。


 命に関わらず、安心しましたわよ? 


 おほほほ!


「あたしもんでみよう!……パン娘だけあって、パン生地きじ以上にモチモチ! 張りもあるじゃん!」

「はん!? 乱暴にしないで!?……逆襲ですわよ! あら? 意外とよい揉み心地ですわね!?」

「あらま? パ、パン娘、やめ、あん!? ソージは、みちゃだめえ!?」


 女性同士のスキンシップだと!? 


 お、お約束だけど、刺激が強いよ!?


「ろ、露天風呂の方はどうかなー!? サーヤ!? 行ってみない!?」

「は、はい!? この場所にとどまると私も、餌食えじきになりそうですから!?」

 





「ソー坊とサーヤじゃないか。こっちに来たのかい?」

「メジストさん。はい、あの、その……」

「パン娘とあはっ娘の被害からのがれて来ました!」


 露天風呂に腰をかけているのは。


 もちろん、メジスト姉様。


 裸婦像を建築しそうな、美しさ。


 もはや芸術ですね。


「そうかい。まったく、静かに入浴もできないのかい? パン娘はいつもうるさいし。アイは、楽しみを見つけると一直線馬鹿だし。心労がたえないね、ソー坊とサーヤは」

「い、いえ。クリスティーナさんは復調したばかりですので……アイさんは行動力があって良いと思います!」


 サーヤ、健気けなげな娘じゃ。


 仲間の気遣きづかいもできる、やさしい子じゃ。


「そう言えば、皆、なぜ入浴してるんだ? 俺は、アレクシスさんに勧められてだけど?」

「い、いまさら!? 私達が入ってきた時点のセリフですよ、それは!?」


 け、刑事訴追の恐れがある為。


 証言を拒否します!? 


 国会の証人喚問あるあるも、言いたくないよ!?


「気づいてないと思っているでしょ、ソージ君は。昼食後、深刻そうな顔をしていましたよ。ソフィアさんも察知していましたし」

「ソー坊をちょっといじりすぎた、あたしらにも原因があるだろうからさ。そうしたら、ソフィアが提案してきたのさ。一緒にお風呂でも、てね」


 アレクシスさんとソフィアさんによる、アシストだったのか。


 か、かなわねえよ。


 偉大なる方々には。


「うわああん! 俺のメンタルが弱小じゃくしょうなだけで、皆は悪くないんですー!……あ、クリスティーナ、あいつは悪いからね」

「よしよし、ソー坊は甘えん坊だね。あたしの胸ならいつでも貸すよ。うふふふ」


 ああ。母性を感じる胸におぼれちゃう!?


 明日、俺、死ぬのかな?


 嵐の中、田んぼの様子、見に行くのかな?


 雪山に大雪が降って、翌日に登山しに行っちゃうのかな? 


 何も、分かんねえ。あへええ!


「ソージ君! メジストさんの胸の中で溺れないの! よい、しょっと!?」

「ぐうへへ! ふぇ!? サーヤ!? ぐわはっ!?」

 背後から強制的に引き離される。


 が、予想以上に力をいれすぎたのだろう。


 サーヤもバランスを崩し。


 共に後ろから露天風呂にダイブ。


「がばごぼがば!? サーヤ、意外と強引ん!?」

「ご、ごめんなさい、ソージく、ん!?」


 サーヤに巻かれたタオルが解放されて!? 


 すらりとした体に、程よい大きさの果実があらわに!?


 きゃああ! 脳内メモリーに保存!


「サーヤのむっつり! 怒りますよ! ポロリ禁止!」

「ちょ、ちょっと!? な、なんで、わ、私だけに文句を言うのかな!? い、いじわるですよ!?」


 ほら、ね。サーヤは簡単に脱いじゃだめというか。


 初々ういういしさが最高だから。


 さじ加減だよ。


 でも……あざーす! 


 心臓どきどき! た、たまらん、サーヤ!


「サ、サーヤ!? ぐぎぎぎ! わたくしの策略をパクる、つ、も、り、ですのぉー! 前々から、貴女はおいしいところばかり! ふんぬううー!」

「とんだ伏兵ふくへいがいたもんだね! あたしを出し抜くとは、サーヤ! ソージを満足させられる体か確かめちゃうぞー! あはっ!」


 お二人とも、来ちゃった!


 ……こうも平然と裸を披露されると、男としてメンツが。


 今のご時世には古い価値観か。


 人それぞれであります。


 大事なのは、こうして美女と混浴をしていることだよねー! 


 精神力が回復してるぞー!


「ソージ君、た、助けて!?」

「はいはい。クリスティーナ、自意識過剰、お疲れちゃんですわー! なあ、魔法の修行でもやったら? このままだと、お前の時代来ねえからな! 賊一人倒したぐらいじゃあな? ぷぷぷぷ!」

「げぼうはあ!?」


 精神的ショックで倒れたか。


 許せ、クリスティーナよ。


 己を知り、敵を知れば。


 まともに戦えるって、偉い人言ってたし。


「で、あたしはどうするのかな? ソージ? 組み手がお望みなのかな~? どさくさで、あんなところ触っちゃうのおー? いやーん」

「メジスト姉さん、お願いしまーす!」

「アーイ? 覚悟はいいね? うふふふ! この、阿呆が! 寝てろ!」


 気持ちがこもった、腹にパンチです!


 ……メジスト姉さんは、絶対に怒らせないようにしないと。


「ひ、卑怯だぞ!? ソージ!? がはっつ!?」


 だって、アイさん、誘ってるんだもん。


 恥ずかしがってる俺を楽しむんでしょ?


「ソージ君、流石ですね。……敵にはしたくないです」

「さ、旅の疲れを癒そう」

「ふうー、いい湯だね。これでゆっくり過ごせるよ」


 こうして、ギルドの依頼はクリアーできました。


 アレクシスさんには『常日頃から注意した方がいいよ! 油断しちゃだめだからね!』とお告げを言われた。


 アサシン部隊、送り込んでないよな!? あの人!?

 

 

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