第11話 美女達のお背中、流しましょう!! で精神力を消費する

「ソージ君? どうも浮かない顔をしているようだ。悩み事かな?……確かに、パーティーの中に、男一人だけ……なるほど。女性の相手を決めるのに悩んでいるのか。うらやましい悩みじゃないか!……私の『コイツいつか、アサシン部隊派遣しちゃうぞ!? しちゃうぞ?……するぞ!』リスト上位にランクインしてしまう勢いだよ? ふはははは」

「先程の話は冗談じゃないの!? この人、計画バッチリってるよ!? ソフィアさん、旦那さんをなだめてあげてー!?」


 昼食後の休憩中に。


 アレクシスさんが会話をしに近づいて来た。

 

 女性陣は、やかたを自由に探検。


 ソフィアさんが案内役をしてくれている。


 さす、ソフィ! と言っておこう。


「冗談かどうかはさておき、相談に乗ろう。ソージ君」

「……自分の能力を持て余してしまってると言いますか。強力過ぎて、自分でもどう受け止めていいか……考え事を」

「そうか。確かに、強大な能力者に対す第一印象は恐怖だろうな。ただし、それは君自身を知らない者の勝手な印象だ。実際は、こうして能力に向き合って、悩んでいる不器用な人間だろ? 力が全ての君じゃないことは、愛しの女性たちが一番よく知ってると思うぞ! 悩む暇があったら、女性にイチャイチャさせてもらいなさい。どーでも、よくなるさ。能力がどうだとか。愛しの仲間を守れただけで良いではないかね……あれ? やっぱりランキング上位に食い込むぞ? ソージ君?」


 ……冗談かそうでないかは別として。


 アレクシスさんのアドバイスは的を得ていた。


 やはり、女性成分が枯渇こかつしていたのか。えへへへ!


『アレクシスのアドバイスを口実にセクハラしたいだけなの!? シリアス終了じゃん!?』

「違うぜ、エトセトラ。これが、俺だ! 俺なんですうー! わははは!」

『げ、ゲス野郎じゃな!? こ、こいつ!? クリスティーナが精神崩壊したのが、納得じゃ!?」






「広い浴場じゃないか! 露天風呂もあるよ! アレクシスさんが言うには、近くに大量に魔石が埋まっていて熱を放出してるらしい。それが、地下水を温めているとか。微量に魔力も含まれてるから、疲労回復には良いって」


 アレクシスさんの勧めで、大浴場を利用する事に。


 少しは気分もさっぱりするだろうからと。


 妙におススメしていたな。


『野郎のサービスシーンはいらねんだよ! うほっ! って言って欲しいのか?』


 動画コメントみたいな事述べないでよ。


 感覚共有してるから、エトセも気持ちよくなるだろ?


『いやん、お主のエッチ! 気持ちよくなるとか、女の子に言うセリフじゃないんだからね! とか言いつつ、エトセトラ入浴モードにチェンジ! バスタオル姿どうじゃ? 似合うかな? エロい?』

「……男の子に言うセリフじゃないような……エロいって直球すぎ、75点。似合うかな。だったら、高得点でした。惜しい! エトセトラ!」


 バーチャルモードのエトセトラを論評する。


 そもそも存在自体エロみたいなもんだからな。


 わざわざ確認しなくても。


『存在自体エロなの!? 概念!? でも許すうー! えへへへ!』

「こらこら、豊満な胸が背中に当たってるからね。節度ある入浴!」


 やれやれ、子供っぽい所も多々あるエトセだぜ。


 ふぁあん、背中にぃー!? あててんのよ!?


「入浴する前には、体を洗うのがマナーだぞ。ふんふーん。ま、実質俺だけしかいないけど」


 洗い場は……ここか。


 容器の中身は、薬草の液体かな? 


 シャンプーやボディソープみたいなものだろうか? 


 湿布の様な匂いと果実の様な香りがする液体も。


「ちょっとした、日帰り温泉気分だな。ぬあー、リナさん、カナさん、スライム君にも味わって欲しかったなー」


 今頃、お掃除とか雑務をこなしているのかな?


 こんを詰め過ぎじゃなければ良いけど。


「あはっ! そーおーじ! 来ちゃった! そこの容器取ってー?」

「あ、どうもー。この果実の香りがする? はい、どうぞ」


 帰ったら、絶対、むぎゅーするぞ! 


 それまで、待っていて! 


 メイドさん達!


『おい、お主!』


 野暮やぼな事を言いなさんな? 


 エトセが、一人しかいない俺をあわれんで。


 バーチャルでアイさんを表現してくれているんだね。


 ありがとう、エトセトラ。


 ああ、愛してるよエトセトラ!


『ここで言うのは卑怯じゃ!? わらわの心にクリティカルヒットしてしまうー!?』

「ねえ、ソージ? 背中、洗ってくれるー? 背中よく洗えなーい。できれば、だけどな。あはっ!」


 随分と挑発的なアイさんだ。


 再現率は高くないのかな?


 しかし、バーチャルリアリティーの将来はどうなるんだろ?


 脳を直接機械につなげたりする時代は来るのだろうか?


 ……現実と仮想の境目が無くなる日も近いのだろうな。


「ソージ? じらしてるの? 体冷えちゃうー」

「ほいほーい。アイさんのタオルで液体を泡立てて。優しく、優しく、こんな感じで大丈夫?」

「うはっ! い、い感じ! あたしの肌、ソージに、洗われちゃってる!?」


 うん、洗ってるね。


 いちいちセクシーなセリフはヤメテね? 


 男の子しちゃうからね。


「はい、元々美しい肌がさらに艶っぽくなりました。お湯で流しまーす」

「う、うん。かけ流して、ながしちゃってぇー!?……はあ、気持ちよかった。ありがと、ソージ。一足先に、湯船に行ってるぞ。ソージも、早く来てね……あはっ!」


 アイさん、全裸で走らないの! 


 おっと、バーチャルのアイさんでした。


 思わずツッコミを入れてしまったぜ。


 ……仮想通貨は、これから浸透するかな?


「ソー坊、あたしもお願いできるかい?……嫌じゃなければだけどね」

「メジスト姉さん! もう、そんな事言わないで! ご褒美ですよ?」


 次は、メジスト姉さん(仮想)か。


 うむ、団地妻を彷彿ほうふつとさせる体。


 全然、嫌じゃないです。


 意外とセンチメンタルなのね、メジスト姉さん。


 おっと(仮想)でした。


「そ、そうかい!?……ソー坊ぐらいさ。正直に伝えてくれるのは。……皆、あたしの強さにビビって遠巻きにして見るぐらいさ。それも、嫌な目つきで」

「……そう。メジスト姉さんの魅力が分からなくて良かった。おいらがこうして独占できるんだから」


 アレクシスさんの助言が思い出される。


 力は力。


 個人を構成するのは、それだけじゃない。


「うふっ、く、くすぐったいよ、ソー坊。強くしても平気だよ?」

「メジスト姉さんが満足できるように、頑張ります! こうですか!」


 タオルで少々強めに背中をこする。


 力加減に集中だ。


「ちゃんと出来るじゃないか!……好きなタイミングでお湯をかけていいからさ? うふふふ」

「は、はい。お湯をぶっかけちゃいますよ。ソイヤッー!」


 勢いよく。


 メジスト姉さんのあでやかな背中にお湯をぶちまけた。


 そう快感で満たされる。


 ありがとうございました!


「さっぱりしたよ、ソー坊。……甘えさせてもらって、あ、ありがとう……だね」

「メ、メジスト姉さん!? おでこにキスを!? のぼせちゃう!? ぷしゅーう!?」


 親愛の象徴のでこちゅー!? 


 弟分で良かったよー! 


 こ、これがメジストねえの唇の感触!? 


 あへあへあへー!


「むむっ! メジスト姉さーん、ソージを誘惑してるの? ふーん、意外に年下の男が好みなんだ。ソージは逃げた方がいいかも? 性的な意味でわれちゃうよ?」

「アイ? どうやら水死体がお望みのようだね! 溺死させてやるよ!」


 メジスト姉さんがアイさんを始末? しに湯舟へ。


 浴場で殺人事件は定番だよね、ドラマだと。


 ……メジスト姉さんとアイさん、名探偵を呼ぶ展開は控えてね。


 あと、警察も。


 おっと、バーチャルリアリティーだったぜ。


 本物にそっくりな反応だな。


 人工知能搭載なのか?


「ソージ?……よろしければ、わたくしの背中を流しても……よいかは、貴方次第ですわ!」


「ほう。どんな魂胆こんたんか知らないが。……意趣返いしゅがえしととらえていいんだな? クリスティーナサン?(仮想)」


 まんして登場か。


 おや? 通常運転の設定か? 


 おてんば娘のクリスティーナ嬢だ。


「わたくしの美貌びぼうで取り込み、籠絡ろうらくして差し上げますわ!……精神が壊れるまで利用し尽くす作戦ですわね。わたくしは、傾国けいこくのクリスティーナ! おーほほほ! お疲れちゃんですわー!」


 結構、結構。


 まろは、威勢のいい女性は好物でおじゃるー。


 多少の無礼は、許す、許す。


 と、思ってんのかな?


「なにが、籠絡ろうらくだよ! 逆に手籠てごめにされちゃう運命だろ? それに、クリスティーナが一番、敏感そうだし。ほら?」

「あん!? そ、そのようなことは、あ、ありませんわ!? 平気の、へっちゃら、です、ものお!?」


 軽く背中を洗うだけで、このあり様だよ! 


 ビクンビクンしないの!


「ふう。手早くしてあげるから、我慢しててよ?」

「わたくしを、おざなりな扱いを!? ら、らめですわ、く、屈辱で、く、くっころですの!」


 プライドだけは一番高い。


 まあ、そこがクリスティーナらしいと言えば、らしいか。


 ……くっころ文化浸透してるの!?


「ほい、おしまい。湯をかけまーす! お疲れちゃんでした」

「お、おわりですの? ああん!? 温かいですわ……はあ、はあ」


 旅館で雇ってくれるかな? 


 背中流し名人で。


 ……無理か。どんな名人だよ!?


「湯舟で、くつろいでいますわー。礼は言いませんわよ? むしろ、わたくしの体を……きゃん!?」

「あ、ごめん。手が横乳に触れちゃった。事故だからね。てへ!」


 御託ごたくはいいから。


 さっさと去れ! 風邪を引きますわよ?


「……これはこれで、色仕掛け成功中ですわね! 貴方の力はわたくしのもの! 黒幕ちゃんですわー!」


 こいつ、フィクサー気取りなの!? 


 ベラベラしゃべる黒幕だな!


「ソ、ソージ君?……やっぱり、む、無理、です!? 男の人と一緒に、体を洗うなんて!?」

「今度は、サーヤ(仮想)なのね。バスタオルでがっちりガードしているとは……85点!……無理強むりじいしません」


 小鹿の様に震えているサーヤが……イイネ。


 背徳感がすさまじい。


 でゅへが襲来しちゃいますね。


「ひ、ひどいです。皆さんにはやって、私にはやらないなんて……そこはかとなく、距離を感じますよ!?」

「えー? サーヤに不快な思いさせたくないと配慮したんだけどな?……じゃあ、サーヤの口から言って欲しいかな? どうして欲しいの?」


 言質げんちを取るようで、気が引けるけど。


 無論、俺だって、サーヤの背中を流したい!


 けどね、無理矢理して関係が壊れるのは嫌なんですうー! 


 小心者なんですうー!


「ううー。いじわるです。直接、私の口から言わせるなんて……ソ、ソージ君に、背中を、流して……も、も、もらいたいです!……はずかしい!」

「おーほほほ! サーヤ、情けなくてよ? ソージごときに異性を感じるなんて、あり得ませんわね! 堂々としなさい! わたくしの様に!」


 うるせー! 敏感肌のくせしやがって! 


 どうでもいい男にもだえてた奴が!


「ほら、サーヤを治療した時と同じさ。目を閉じて、洗ってあげるからね?」

「は、はい。初体験……なので、どうしたらいいか……お、おまかせです!」


 ゆっくり、じわじわと馴染なじませる感じか。


 恐怖心を植え付けてはダメだからね。


 初体験のトラウマは回避しないと。


 後の人生に影響が。


「サーヤ、一緒に乗馬させてもらって、サンキュー。面倒見が良すぎるぜ。……真面目過ぎるのは、心配だな。肩の力を抜いた方が良いかも」

「い、いえ、どういたしまして!?……ふふ、昔から良く言われます。なにぶん、性分なので、変わり様がないですけど。……つまらない人間ですよね?……私は」


 地雷を踏んでしまったのか!? 


 声のトーンがしょんぼりサーヤ!?


「こらこら、自分を卑下ひげしない! あれ? 考えてみたら、真面目な人は、異性とお風呂を共にしないか? ほらほら、サーヤも変わってきてるじゃん!」

「そ、それを言われたら元も子もないですよ!? あれ? 私はどうしちゃったの!? ああん、ソージ君に、背中を自由にされちゃってる!?」


 サーヤ(仮想)が戸惑っている。


 考えすぎるのもね。


 嫌な事は忘れるのが一番さ。


「よし、こんな感じで終わり。初体験、頑張りました。流しまーす」

「お、終わりですか? あっという間でしたよ。……いい気持ち」


 よし、これで皆の背中を流したぞ。


 これで、自分の背中を洗うだけか。

 


 

 

 



 

 


 

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