第8話 乙女のサーヤの下半身をまさぐって精神力を消費する

「おーほほほ! 無様ですわね! よもや、馬に乗れないとは。愉悦ゆえつ愉悦ゆえつ、ご満悦!」


 今回の依頼内容はざっくり言うと。


 地方の貴族が街の装飾品や食べ物を補充。


 ネットショッピングの配達業者の真似事だ。


 荷馬車を無事に目的地へ届ければ。


 報酬がギルドから支払われるらしい。


「人の不得手ふえてを笑うとは。最低なネジネジ女だぞ!」

「ソー坊、こんなパンみたいな髪をした女、ぶっ飛ばしていいかい?」

「どいつもこいつも、わたくしの第一印象は髪型ですの!?」


 荷馬車を囲む様に。


 各自、馬を走らせるのだが。


 馬術の経験など縁遠い自分は。


 こうしてサーヤさんの世話になっている。


「ソージさん、しっかりつかまっていて、く、くださいね!?」

「はーい。サーヤさんの体、あったかーい! 腰ほそーい!」

「そ、それは、きょ、恐縮きょうしゅくです!?」


 戸惑いながらも返答する彼女の反応に。


 抱きつく力が少々強くなった。


『コアラみたいじゃの。あれ? 意外とカワイイなお主?』

「サーヤのボディで満足する稀有けうな存在もいらっしゃるのね。お似合いちゃんですわよ! そのまま結婚したらいかがです? おーほほほ!」


 ボディの発音にイラつく! 


 お、お前、サーヤさんの胸だって。


 手の平から、ちょっとこぼれる程度だけど。


 需要ありますから!


「ど、どうゆう意味!? ですか!? クリスティーナさん!?」

「ぬわ!? 馬が揺れるよ、サーヤさん!?」


 顔を真っ赤にしてクリスティーナに遺憾の意を表明。


 その為、馬の操縦に狂いが生じ。


 あやうく落馬する所であった。


「きゃあん!? ソ、ソージさん!? 手が、む、胸にきてます!?」

「ぬあ!? ご、ごめん。馬が急に揺れるから!? おい! クリスティーナ! サーヤさんの胸は最高だぜ! 馬鹿にすんなよ! それから、お前、今夜……今夜!」

「こ、今夜なんですの!? こ、答えなさい!?」


 ふははは! 


 気にするがいい! クリスティーナサン!


「大声で、私の胸の感想言わないで!? そ、その、お気持ちはうれしいです……けど。は、はずかしい……」


 だって、あのドリル娘が。


 サーヤさんの尊厳を侮辱したんだもん。


 教育委員会に通報だ!


『学級委員長に絡む生徒がいたのー。真面目さがしゃくさわるのじゃろう』

「サーヤ、もう妊娠したのですか? 初心うぶ生娘きむすめだと思っていたのですが。やることは、やっちゃいましたの? おーほほほ!」

「ま、まだ、そんな経験、し、してません! まだ、と言うか、予定もありませんから!」


 クリスティーナ! 


 セクハラ、マタハラだからな! 


 訴えるぞ!


『自分の事を言えるのか? お主も訴えられたら負けるぞ?』


 そ、訴状そじょうが確認できないため。


 コメント出来ません。


 言いたくないセリフだな。


「ソー坊の器がでかいのかね。こんな、おほほほ娘、うるさくて相手にしたくないよ」

「ソージの恩情に感謝しな!」


 メジスト姉さんとアイさんの。


 クリスティーナ嬢に対する評価が下がり続けている。


 お前、裏切られる可能性大だよ? 


 おほほほ笑ってる場合じゃないからな。


「ま、まさか。わ、わたくしの体目当だけですの!? ち、違いますわよね!? な、なぐさみ者ですの、わたくし!?」

「……信じるか、信じないかは。クリスティーナ次第です」


 言動に気を付けるんだな。


 その可能性も否定できぬぞ? 


 ムチムチボデエー!


『いや、決定しとるじゃろ。お主の発音もイラっと来るわい』





 街を出発して、二時間。


 小休止のため、途中に存在する小さな村に立ち寄る。


 無論、荷馬車の警戒は怠らない。


「この依頼、金貨5枚の報酬の割には。人気なかったね、サーヤさん」

「はい。おそらく、リスクが高いためでしょうか。荷物を奪われた損害は、私達が払う事になっていますし、盗賊とうぞくの動きも活発だとか」

「ば、賠償責任ですの!? き、聞いていませんわ!?」


 驚きでわなわなと震えながら。


 今頃になって依頼内容の確認かよ?

 

 任務中、緊張感も無く。


 おーほほほ! と挑発的に話していた理由を垣間かいま見た気がする。


「ま、まあ、責任は、コイツに。なすりつけの策ですわね! 役目、ご苦労。ねぎらって差しあげますわよ!」

「クズティーナだよ!? お前!?」

「あーん、馬に乗りっぱなしだと、体がなまるー。ストレッチでもしよう。ソージ、背中押してくれる?……パン娘は荷馬車の商人さんと一緒に警戒しておいて」

「パン娘!? ぐぎぎぎ、任務遂行してきますわよ! ふん!」


 アイさんが地面に座り開脚。


 体操選手が体をほぐす仕草。


 でも、なぜかセクシーさを感じてしまう。魅惑的。


「ゆっくり押すよ、アイさん」

「お願い、う、うん、はあー」


 体が軟らかいな。女性特有だよね。柔軟体操。


 俺は、体硬すぎるからなー。


 下手をすると、関節を痛めかねないし。


「手伝ってくれて、ありがと。戦闘が無いと、どうも調子がね。いち、に、さん、し」


 立ち上がり、準備体操を始めるアイさん。


 ちらちらと観察する、俺。


 ……べ、べつに、やましい事をしているわけではないんだよ!? 


 み、見守ってるだけ!


「ソージ? どした?」

「……健康的な女性だ」


 素直すぎる感想を述べてますよ!?


 変な意味はないよな!?


「あはっ! あははは! あたしに感じてくれるんだ、ソージは。ふーん。素直な男は好きだぞ」

「ソー坊、疲れてないかい? ほら、あたしが椅子いすの代わりに抱き寄せてあげるよ?」


 アイさんとメジスト姉さんのアプローチにたじろぐばかり。


 メジスト姉さん、背中に大きな乳房が!?


 サーヤさんと逆パターン。


 メジスト姉さんが、後ろからホールド!?


 でゅへへ。姉さーん!


「も、目的知まで、どの位かな!? サーヤさん?」

「……あ、はい!? これまでの距離の半分程でしょうか?」


 サーヤさんの目線が。


 自身のふとももの付け根あたりに?……もしかしたら。


「サーヤさん、ちょっとこっちの茂みの奥へ」

「へ!? ソ、ソージさん!? な、な、なにを!?」


 腕を組んで、サーヤさんを連れ出す。


 速くしなければ、しなければ!


『おお!! やるのか!! ついに、肉食化か?』





「サーヤさん、下脱いでもらえるかな? 下着は着けたままで」

「ちょ、ちょ、ソージさん!? い、いきなり、こ、こんな、ばしょで!?」


 村の中心から少し外れるだけで。


 木々が生い茂る場所を簡単に発見した。


 密会にも使えそうな雰囲気をかもし出すここなら。


 問題無いだろう。


『ほう、パンツだけを眺めようとするのか、上級者じゃな』


 違うからね!? 


 そ、そんな、サーヤさんの下着じっくり見れないよ!?


「俺の責任だから。サーヤさんは気にしないで!」

「ふぇ!? あ、あの、わたし、男の人に、下着をさらすなんて!?」


 もじもじしつつ。


 視点をあちらこちらに動かして答えた。


「無理にサーヤさんにしがみついていたせいだよね……その、ふとももの付け根と言いますか、乗馬で股ずれさせちゃったのかな?」

「き、き、き、気づいていたのですか!? い、いえ、じ、自分が姿勢を保てなかったので!?」


 乗馬すると衝撃といいますか、摩擦といいますか。


 乗っていて、初めて分かる事もあるんだな。


 皆、普通に乗りこなしているものだと。


 勘違いしていた。


「だから、俺の能力で炎症を治療させて。目をつぶっているし、その、俺の、手を、患部付近に置くだけで良いから!」

「い、いえ、我慢できますし、ソージさんが能力を使ってしまうと、負担が」


 かたくなに、遠慮の意思を表明している。


 説得は難しい様だ。


「あれ? あそこに、サーヤさん? なにか、サーヤさん!」

「どうしました? ソージさん? え!?……きゃああ!?」


 サーヤさんの注意をそらしつつ。


 短パンを勢いよく引きずりおろし。


 奪う。


『見事な手際よな、仕事人か? アサシンレベルじゃぞwwww』

「サーヤさんの為なんだ! 任務に集中しないと危険なのー!」

「か、かえして、くだ、さい。こんな姿、見られたら、はずかしくて、おかしくなっちゃいます!?」


 心を鬼にしないと。


 サーヤさん、問題を抱え込んでしまいそうだから。


 辛くても、平気な顔をされるのは……嫌だな。


「はい、サーヤ、患部はどこですか? 目をつぶってるからね。早くしないと、誰かのぞききに来ちゃうかも?」

「ううう。い、いじわるです、ソージさん。……ですけど、ず、ずるい人、です。怒ること、できないじゃない……ですか」


 ようやく白旗をげた。


 そして、俺の手をサーヤさんがつかむ。


「め、目を、閉じて、いて、くださいね。もし、開けたら、うっかり、しちゃいますからね!……こ、ここの、周辺、少し腫れているのわ、わかりますか?」


 手を患部へと誘導する。


 ふとももの上部、少しだが熱を帯びて、腫れている。


「うん、感じる。じゃ、やるよ」

「は、はい、お、おねがいします」


 【スキル発動 炎症している患部を治療 手で触れている患部周辺の炎症を治癒】


 【スキル発動 乗馬の際の股ずれ防止 乗馬の際、股ずれを防ぐ】


「サーヤさん? 終わりましたよ?」

「あっという間に、腫れが? ソージさんは大丈夫ですか?」


 問題ないかな。うん。


 サーヤさんを治した満足感を味わっているぜ! やたー!


「まったく、人使いが荒い方々ですのね! サーヤ? そろそろ休息は、終了ですわよ? こんな、茂みで一体なにを!?」


 ぶつぶつと文句を垂れ流しながら。


 俺達を捜索しに来たクリスティーナが。


 戸惑いの声を上げた。


「く、く、くりしゅてぃーなさん? あの、これは、その、違いますからね!? ソージさんが」


 あらぬ姿の弁明を必死にしようとするのサーヤさんだが。


 言葉が思うように出てこない。


「な、な、な、や、野外でプレイですの!? 下着姿で、下半身をまさぐって!? しゅ、祝杯のワインを購入してあげますわ!? サーヤが、男を知った記念日ですわー!」

「ご、誤解です!? ソ、ソージさん、短パンを返してくださいよ!?」


 通常のサーヤさんに戻ってしまった。


 ……ギャップがあっていいのにな。


「はい、どうぞ。乙女のサーヤ」

「ソ、ソージ……さんの……ば、ばか」


 

 

 

 



 

 

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