初めてのギルド任務と変わり者の地方貴族

第7話 褐色女性戦士に精神力を消費する

「ソージさん、私達三人のギルド登録出来ましたよ! 人数によっても、受ける事ができる依頼とそうでないものがありますので。人数が増えるのは、喜ばしいです!」


 珍しく年相応に、はしゃぐサーヤさん。


 女性を年齢で見るのは大変失礼だけど。

 

 真面目さが板についている彼女が。


 こんな様子を見せるのは意外だ。


「後先考えずメンバーに入って良かったのかな? う、胃の調子が……」

『メンタルが脆弱ぜいじゃくじゃな。パソコンみたいにアップデートしろwwwwアップデートに失敗しましたwwww』


 アップデートしたことによって、新たなバグだって出るかもしれないじゃん!


 と突っ込みたいが……。


 エトセの言うことも一理あるからな。


 せぬ。


 本日は、様々な依頼を請け負っているギルドへ。


 依頼の掲示板には、多数の張り紙が。


 また、冒険者達が、所狭ところせましと掲示板に群がっていた。


 おうおう、こんなにも!? 


 モンスター退治や村人のお使い。多種多様。


「クリスティーナ嬢は、今までどんな依頼を?」

「………」

「もしもし? おーい?」

「………」


 呼びかけに反応しねえー。


 だだの、等身大クリスティーナの人形のようだ。


 ……等身大って、値段が高価になりがちだよね。


 秋葉原が懐かしい。


「ソージを夫にし、病める時もすこやか時もえっちな時も、ともに支えると誓うならば、沈黙で答えよ!」

「………」

「ひゃっほーい、夫婦だから、お尻をまさぐっちゃうぞ!」

「ふ、夫婦!? こ、こら、抱きついてお尻を触らないでくださいませ!? はん!?」


 僕たちもう、愛を誓い合った仲じゃないか。


 はあ、はあ、クリスティーナサンのオシリ!


 ボクタチノ、コドモガ、アンンゼンニ、ウマレテクルトイイネ!


『完全にサイコパスじゃな。ちょっくら、FBIに連絡してくる!』


 ちい、FBIが嗅ぎつける前に更なる犯行をしなければ。


 視聴者の為に。


『お主も好きなの? 海外ドラマ? 脚本家目線じゃぞ?』

「クリスティーナさん、まだ昨日の事を気にしてるのですか?」

「べ、別に、わたくしの最大魔法のサンダーランスを防がれ。なおかつ、不埒者ふらちものに助けられたことなんて、ぜ、全然気にしてませんわ!?」


 口をとがらせ。


 ツンデレ風に心境を吐露するクリスティーナ。


「ソージさんが先程から問いかけてましたよ? クリスティーナ夫人?」

「き、既成事実ですの!? と、取り消しになられて!?」

「初夜が楽しみだね、クリスティーナ。一歩ずつ、互いをいつくしめば、何も不安はないだろう?」


 ふふふ。恥ずかしがり屋のクリスティーナ。


 トゥナイト! パーリタイムだぜ!


「こ、こいつ、殴りたくなる笑顔ですわ!【電撃よ! 手のひらに帯電せよ! サンダービンタですわ!】

「ぐげぇ!?」


 電撃による平手打ち!? 


 し、しびれるー、ぎょぎょぎょ。


 ハードなプレイが……好みなんだ……ね。


「やりましたわ! 新しい技を習得出来ましたわ! おーほほほ! お疲れちゃんですわー!」


 この俺を、新技開発に利用したの…か? 


 く、く、クリスティーナァー!


『愛が憎しみに変わっとるぞ。短い新婚生活じゃったな』

「ソージさん? 平気ですか? もう、クリスティーナさんは……。誰のお陰で、本調子に戻ったと思っているのですかね? 私はちゃんと知ってますからね、ソージさん」


 サーヤさんがクスリと笑いながら膝枕ひざまくらを!? 


 か、回復しちゃうよ!? 


 慈愛の天使様。浄化されるー。ごろごろ。



「以前に受けたギルドの依頼ですの? 低級のモンスターの駆除に、商人の荷物を届けたり、あまり危険を冒さない依頼ですわね。わたくしだって、命が惜しいですから!? わたくしたちの戦いは、これからですわ!」

「まだ、駆け出しですからね。危険を冒すような依頼は避けているんですよ。その分、報酬が少なめですけどね」


 妥当な判断だ。


 この世界では、一歩間違えれば容易よういに命が失われるだろう。


 ゲームの様にセーブからやり直しなんて。


 甘くないか。


『万が一、お主が死ぬような事があれば。わらわはこの世界を供物くもつにしてでも、救ってみせるぞ?』


 重いよ、エトセの愛が。


 世界をブロークンしないで!? 


 ラスボスだよ、コイツ!?


 ……お気持ちだけで結構です。はい。


「黒髪の男? あはっ! みいつけた!」

「のわぁー!? 谷間が迫ってくる!? い、息があ!?」


 超ダッシュで接近してきてからの、抱え込み!? 


 胸で圧死する……でも幸福感も。


「おい、アイ。強引すぎるぞ。すまない、こいつが粗相そそうを」

「ぬあーん、メジスト姉さん、引きはがさないで」


 ふう、苦しかったぜ。


 ……褐色かっしょくポニーテール。


 赤い水着のような鎧に。


 大きな剣を背負っている。


 もう一人は、バトルアックスだと!? 


 巨大なおのを!? 


 こちらは紫色の鎧か。


 髪型は、ナチュラルロングな黒髪!?


 そういえば、二人とも黒髪だ。


 俺以外の黒髪は、珍しいな。


「何ですの!? 野蛮な方ですわね!」

「戦闘専門の傭兵ですね。ソージさんに何か?」


 二人が威嚇いかくをする。


 えっ!? バトルスタンバーイなの?


「酒場で噂の人物だろ? 強いのか? 強いのか?」

「強さにも色々あるから、なんとも。アイさん? でしたか? 大きな剣! かっこいい! 見せて、見せて!」

「あたしの武器を褒めてくれるのかい? 気に入ったよ!」


 どうやら酒場での騒ぎが耳に入り。


 興味本位に近づいてきたのだろう。


 ぬおおおお。重いぞこの剣。あこがれるー。


「メジスト姉さんの斧も。良い感じで」

見所みどころがある坊やだね。良いよ、触ってご覧」

「やったー! 失礼しまーす!」

「クリスティーナさん。ソージさんの対女性スキルが恐ろしいと感じるのですが」

「本人が自覚していない所が厄介ですわね……し、嫉妬ではなくてよ!?」





「で、ソージは依頼を受けるのか?」

「うーん、どうしようか。サーヤさん、クリスティーナ嬢?」

「そうですね、試しに受けてみましょうか?」

「報酬が、お疲れちゃんの奴がいいですわね!」


 お疲れちゃんの奴って何? 


 お前の性格が、お疲れちゃんだよ!


「坊やたちは、この依頼なんかどうだい?『貴族専用物資運搬の護衛。人数最低5人以上。報酬は金貨5枚。詳しくは受付まで』あたしらを合わせれば5人だろ?」

「確かに、そうですが……まだ、私達駆け出しで」

「なーに、戦闘はメジスト姉さんとあたしが全部やってやるよ。 後方でサポートしてれば?」

「おほほほ! サポート要員ですって、サーヤ。わたくしが!? ひひひひ!」


 妖怪クリスティーナ!? 


 アイさん、それ以上クリスティーナ嬢を侮辱しないであげて!?


 彼女の自尊心は限界よ!


「気を悪くしないで、坊や達。あたしらを利用して場数ばかずを踏めばいいのさ」

「メジスト姉さんの配慮に感激。抱きついてもよろしいですか?」

「あたしなんかに抱きつくのかい?……変わった坊やだね。怖くないのかい、あたしらの事」


 むぎゅーとメジスト姉さんをハグした。


 こ、これが、大人の女性の体!?


 ムチムチなのに、包み込む弾力がありまする。精神力補充。


「全然。むぎゅーすれば分かります」

「あははは! そうかい、そうかい。……まるで、弟ができたみたいだよ。ソー坊」

『その特殊スキルはなんじゃ? フリーハグ活動を広めるの!?』

「では、ソージさん、クリスティーナさん、アイさん、メジストさん。この依頼を一緒に受けましょう!」


 異議なし。初の依頼か、ドキドキするぜ!


「けけけけ! やってさしあげますわ! ってやりますわよ! ひひひひ!」


 ……どきどき、するぜ!? 


 クリスティーナにもな。


 俺が、ターゲットじゃない無い事を祈る。


 

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