第5話 クリスティーナのふとももに精神力を消費する

「では、私達が共同生活できる拠点を探しに行きましょう!」

「話しが進みすぎではなくて!? おかしいですわ!?」

「どうも、メンバーのソージです。これから一緒に活動する訳ですから、別々に暮らすのも効率悪いですし。全然おかしくないよ。クリスティーナサン!」


 魔法騎士団に所属している者には、宿舎があり、居住スペースがそれぞれ与えられている。


 二人で一室。かなりの狭さらしい。


 そこに俺とメイドさんとスライムのスペースは確保できない為。


 こうして物件を探す事に。


「コイツだけ別に住まわせた方が安全ですわ!」


 ゲンキガイイノハ、ヨロコバシイ。


 えへへへ! こいつ呼ばわりですう~。


「ご主人さまにひどい事言わないで! ねじねじクリス!」

「な、なんですの、タメ口!? ねじねじ!?」


 精一杯の威嚇いかく表現をする可愛い伏兵。


 性格もねじれているクリスティーナがたじろいだ。


「いけませんよ、カナ。性格もねじれてる、お色気担当の人を相手にしては」

「それは一体誰ですの!? そんな扱いですの!? わたくし!?」


 この調子なら、リナさんとカナさんも大丈夫だ。


 クリスティーナ嬢にも言い負ける事はないだろう。


『気を遣うのは程々ほどほどにしておくがいい。メイド二人は意外と芯が強そうじゃ。安心せい』


 エトセトラ、サンキュー。


 お前にも、ハグしたい気分だぜ。


『いや、薄い本が厚くなる展開を希望したいのじゃ。エロ同人誌みたいに!』


 人気サークルの総集編同人誌希望!? 


 入荷の予定はございません。


「おう! 旦那! 体調はどうでぇ?」


 声の主は酒場のマスター。


 丸坊主で体格がまるでラガーマン。


 人当たりの良さで、威圧感を相殺している。


「おかげさまで、バッチリです。差し入れの品々、ありがとうございました」

「ガハハハ! 気にするな! 他の客が狙われないように、あのクソ野郎の注意を引いてくれたんだろ? 客の代わりに、せめてもの礼みたいなもんだ! ま、そんなに、かしこまるのはよせよ。旦那!」


 バシバシと背中を叩かれる。


 豪快なオヤジさんさんだ。


「魔法騎士の嬢ちゃん達も災難だったなあ。日々の任務に俺達も感謝してるぜ!」

「いえ、そんな。まだまだ見習いで。精進します!」

「……ぐぬぬぬ。スライム狩りに行きましょうか。スライムスレイヤーの称号を得てさしあげますわー!」


 ヒエッ!? 全力で逃げてぇー、普通のスライムさん!?


 きっと行くよ!? 


 スライム君も、恐怖のあまり、ぷるぷる震えてるからね!?


「これからどこかに行くのか?」

「俺達の拠点と言いますか、住む場所を探しに」

「あん? ツテはあるのかい?」

「いや、その、ありませんけど」

「そいつは、いけねーな。だったら、この俺がその手の人間を紹介してやるぜ! 酒場の人脈なめんなよ! ガハハハッ!!」


 マスター、あんた最高だな。


 これは、勝ったな! ガハハハ!






「こちらの屋敷は以前に下級貴族が住んでおりました。今はご覧の通り、空き屋敷となっております。なかなか買い手がつかない所でもあります」


 酒場のマスターに紹介された男性不動産屋さん? に説明を受ける。

 

 見た所、屋敷はひっそりと静まり返っており、少々不気味である。


 無人なのだから、当たり前の事ではあるが。


「特に問題なさそうな屋敷ですわよ?……怪しいですわ。以前住んでいた貴族は、どこへ?」


 クリスティーナの指摘通り、問題無い屋敷ならば。


 不動屋さんの評価は、おかしい訳で。


「不正を働いた為に誰かに殺されたとか、失踪したとか。行方不明なのは確かですけど」


 いわくつき物件じゃねーか!? 


 でも、気にしない人は、気にしないか。


 そもそも、人が住んでいた所に住むんだ。


 何もない方が、おかしいのか。


「どうか、どうか、買ってくださーい! 正直、維持管理が大変なのです! 元値は金貨70枚の屋敷です! 今なら金貨10枚で結構ですから!」


 不動産屋は悲鳴にも似た内情を暴露し始めた。


 ……セールストークだと思いたい。


「サーヤさん、予算的にはどうなのかな?」

「そうですね……確かに魅力的な屋敷なのですが……私とクリスティーナさんが用意できるのは金貨2枚ぐらいですね」

「こ、これからどんどん稼ぐ予定ですわよ。はい、終了~。短いパーティーメンバーでしたね! お疲れちゃんですわー! 宿屋暮らしに戻って、ハーフエルフに慰めてもらいなさい。愉悦ゆえつ愉悦ゆえつ、ご満悦~」


 完全に馬鹿にしてるぜ、クリスティー嬢。


 うん、分かってる、分かってるよ? 


 彼女の性格ぐらい。


 こんなので怒っていたら、身がもたないもん。


「ソージさん、この屋敷は難しいですけど、まだ他にも見て回らないと分かりませんから? クリスティーナさん~? うっかり、剣で叩き潰しそうですよ~?」

「きっかけは、俺がパーティーに加わるせいでしたもんね。だから、その金貨10枚は、自分が全て払います。それなら、文句はないですね、クリスティーさん?」

「ありませんわ~。借金返済生活、お疲れちゃんですわー!」

「では、業者さん金貨10枚どうぞ。いい買い物でした。権利書の用意も、お願いします」


 ククク、良い表情になったじゃねーか。クリスティーナサン! 


 間抜けな顔をしてやがるぜえええ!


「ふははは! お疲れちゃんでーす! クリスティーナちゃん、ねえねえ? 今、どんな気持ちですの? 聞かせて下さいよ、クリスティーナ様!」

『やれやれ。同じ土俵に乗ってしまってどうするのじゃ? 子供のケンカよりもウザいぞ?』






「この広さなら十分すぎる程に皆さんが暮らせますね。良かったですね、クリスティーナさん、個室ですよ!」

「……本当に得体が知れない人ですわ。金貨10枚をあっさり!? 奴隷商人でもやっているのではなくて?……潜入捜査も悪くないですわね。泳がせて、一網打尽いちもうだじんにする。この作戦でいきますわ!」


 作戦内容が駄々洩だだもれ。


 すでに、作戦とし意味を失っている。


 あえて放置しておこう。


「お姉さま、夢じゃないよね? こんな、お屋敷に住めるなんて……」

「カナ、あくまで私達は旦那様のお世話の為です。……ですが、私達がまともに仕事に就く事を誰が想像できたでしょうか」


 金貨10枚は元々魔石を換金しただけなのだが。


 その魔石の入手先が、イノセントなんだよね。

 

 クリスティーナ嬢、詰んでるだよ!? 


 あの御方なの! 狩られる側なの!


 不憫ふびんなクリスティーナ。うううう。


「クリスティーナ嬢、さっきはごめんなさい。出来心だっだんです。許して下さい!」

「な、なんですの!? いきなり!? やあん、ふとももにしがみつかないでぇ!? わ、わかりましたわ、許しますわ!? だから、離れて下さいませ!?」


 もっちりとしたふとももを抱きかかえ。


 懇願する。


 まだまだ誠意が伝わりませんか!?


「あん、そ、そんなところ、キスしないで!? らめですわ!?」


 ふとももにキスすれば、忠誠の証になりますか!?


 んん~、程よい弾力、ご満悦~。


『チューせいの証wwww。ワロタwwww』

「もじもじクリス。はしたない声出さないでよ」

「はいはい。見てはいけませんよ、カナ。私達は各部屋の確認と、お掃除をしなければ。スライムさんも汚れ等を綺麗にしてくれますか?……はい、ご協力感謝いたします」


 リナさんがメイドとしてテキパキと指示を発令。


 スライム君も、ぴょんぴょん跳びはねて。


 役立つ存在である事をアピールした。


「では、皆さん各自で掃除等の時間にしましょう。ほら、クリスティーナさん?」

「わ、わかり、ましたわ。はぁ、はぁ。少し休ませてぇ、下さいませぇ」


 完全に事後のセリフにも聞こえなくもない。


 ご馳走様でした。精神力が高まる~。

 

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