第3話 エッチなスライムに精神力を消費する
「お待ちなさい! そこの不審者!」
「クリスティーナさん! 深追いは禁物ですよ!」
「クソッ。 魔法騎士か!? 目をつけられていたとはなあ!」
異世界でも変わらない事はあるようだ。
現に、不審者と警察が互いに
違いがあるとすれば。
警察側の人間が。
貴族令嬢みたいな話し方をしている点だな。
「何だ!?」
「キャー!?」
「おい、俺の店で騒ぎは困るぜ!? さっさと、捕まえろよ!」
酒場のお客、店員からも様々な悲鳴や怒声を上げる。
「ご主人様。あの、スープのおかわりを、その……」
大変申し訳なさそうに、
ああ! カナさん! きゅんきゅんしちゃう!
「贅沢は禁止です! どれだけ、旦那様に負担を……」
カナさんの耳が悲しそうに下がってる!?
リナさん、まあまあ。
「店員さーん! おなじスープ一皿追加で。リナさんは? 食後のハーブティー飲む? いや、飲みなさい。命令だ! ふははは! ハーブティー、それぞれ三杯、お願いします!」
命令と言われれば、リナさんも素直に応じてくれるかな?
カナさんは……耳がぴんと上がっている。
嬉しさのあまり興奮しているのだろう。ふふふふ。
「ありがとうございます! ご主人さま!」
ぱあっと笑顔を見せつつ、謝意を表明するカナさん。
ご飯、何杯もいけちゃう!
「……かしこまりました、旦那様」
しぶしぶ、命令を受け入れる。
難しい顔も、美しい。
これはこれで、最高のご褒美です!
「もう、逃げられませんわ! 大人しく捕まりなさい!」
「クリスティーナさん、応援を呼ばなくて良いのですか?」
こうなってくると、食事をしながら舞台を
誠に勝手な立場で申し訳無い。
「大丈夫ですわ! あやしい商人もどきに敗れたりしませんわ。おーほほほ!」
『いや、それフラグじゃろ?』
「でも、何かの魔具でも所持していたら……」
「ぐへへへ! 忠告は素直に聞いた方が良かったな、勝気な嬢ちゃん!」
謎の不審者は笑みを浮かべながら。
自慢の商品を見せつける様に、ビンを取り出した。
気になる中身は……す、す、スライムだと!?
メジャーな魔物キター!
「ただのスライムに
「【火の玉よ、標的を燃やせ! ファイヤーボール!】」
おさげの女騎士が呪文を素早く
スライムが収納されているビン
バレーボールぐらいの大きさの炎が迫る。
「サーヤ、勝手な事を。手柄を横取りするつもりですの!」
いやいや、先制攻撃は大事だからね。
功績しか頭にないのかな?
「やったの!?」
『やってないじゃろ。そのセリフを言うと』
スライムが収納されてるビンは燃えて、溶けかかっているが!?
スライムは健在!
炎をビンの
「残念、やってませーん。このスライムは特別なんだよ。あらゆる魔法も吸収して力に変換してしまう。おまけに女の体が好物だぜ。絡みついて服を溶かし、
得意げに説明を始めたのは一種の余裕の表れか。
完全に場を支配している気になっっているな。
「【放つ電撃!
雷属性魔法をクリスティーナ嬢が唱える。
青白い閃光にも似た電撃がスライムを直撃したが。
「諦めの悪いお嬢ちゃんだな。吸収するって言っただろうが。むしろ、スライムは喜んでいるぜ。上質な魔法を吸収できて」
「そんな、嘘ですわ。わたくしの魔法がスライムごときに……」
「クリスティーナさん! 下がって!」
サーヤと呼ばれる騎士が。
呆然自失としている仲間の援護に、走り出す。
「そうら、スライムが接近しちゃうぞ。しちゃうぞ~」
女騎士二人に猪突猛進するスライム君。
意外と素早い。
もっと、ゆっくり前進するイメージだったけど。
そして、二人を包み込む程の大きさに!?
「い、いや、嫌ですわ……」
「危ない! クリスティーナさん!」
「はい、残念。二人とも絡まれちゃたねえ。じっくりスライムによがらせてもらいな」
スライム君が二人の体全体に癒着しうごめいている。
うわー、ドロドロゼリー。
「あん、や、やめな、さい、ですわ」
「だ、だめ、んんんあ」
二人の騎士は、スライムに飲み込まれ、
服装も徐々にであるが、溶けていく。
「ストリップショーの開演だ。楽しませてもらうぜ、ぐふふふ!」
残念だが、お前を楽しませるのは、気に入らん!
邪魔するぜ!
【スキル発動 謎の白い光 対象の淑女の体を光で見えなくなる】
【スキル発動 スライムとの意思疎通 スライムとの意思疎通を可能とする】
「な、何だ!? この白い光は!? 見えねえ!?」
『円盤を購入すると特典として、放送版とは違った、セクシーな部分が見えちゃうかも!?』
「すいませーん! スープのおかわりとハーブティーまだですか!? リナさんとカナさん、おこだよ! ぷんぷん!」
大きな声で注文内容を繰り返した。
酒場全体に声が響く。
今度こそちゃんと聞こえだろうか。
「ああ!? さっきから、うるせーぞ! 朝食なんか、のんきに食ってんじゃねーよ! ぶち殺されたいのか!」
朝飯食べるの重要じゃん。
騒ぎを起こしてる、てめえに言われたくねーよ!
「どこかの間抜けな人がさー。魔法騎士に追われて必死で酒場に来るんだもん。その人も余程、朝食を食べたかったのかな? ぷぷぷぷ」
周囲の人はポカンとしていたが。
次第に笑い声が漏れ始めた。
「た、たしかに、必死な様子だったな。ふふふ」
「朝食、食べ忘れたのかしら。ふふっつ」
どっと酒場が笑いの渦に包まれた。
この世界の人がジョークに寛容で良かった。
「コケにしやがったなあ。 許さねー! スライム、こいつを飲み込んで殺せ! どうした!? どこに行った!?」
「うんうん。無理矢理、使役されてるの? 女性から魔力や繊維を頂いてるから、お礼に気持ちよくなってもらってる? それよりも、体の汚れを綺麗にしてくれた方が喜ばれるよ? 労働条件がブラックですね。居場所がない? 大丈夫、俺が知っている人は優しい人達だから」
『ブラック企業対応の弁護士か!?』
「な、なにしてやがる!? いかれてんのか!? スライムと会話だと!?」
ふむふむ。賢いスライム君だな。
悪いモンスターでもない。
使役する者がしっかりしていたら善き相棒になるだろう。
「スライム君、仲間になってくれるかい? 悪い待遇には決してしないよ? そうだ! 魔石食べるかい? 特上な魔石らしいからきっと満足するよ。よしよし、そんな焦らない。はははは」
スライム君が仲間になった。
やったね! よしよし。良い子だ!
「お前の仕業なのか!? この謎の白い光も!?」
「さあ? どうかな?」
【スキル発動 気絶付加掌底 対象に手の
「どっせい! 大人しく寝てな!」
「がはっつ!?」
謎の商人は気絶した。
ふいー。やっと静かに、朝食にありつける。
……やばい、スキルを使い過ぎか? 立ちくらみが。
「そこの商人もどきは、しばらく気絶してるから逃がさないように。魔法騎士団に事情を説明しておいて。この女騎士二人は宿屋に連れて休ませておいて。リナさん、カナさん、俺も宿屋に運んでおいてね……くきゅー」
あらかたな指示は、こんなものだろう。
……体に……力が。……寒い。
「旦那様を急いで運びますよ、カナ!」
「は、はい。お姉さま!」
「手伝うぜ? メイドさん」
「俺は、魔法騎士団の所に」
「私たちは、女騎士さま達を運びますわ」
酒場の人々が慌ただしく動いたり、走ったりしている。
『お人好しな奴じゃ。せっかく、精神力を回復したのに。ゆっくり、眠るがよいぞ。わらわも手助けしよう』
エトセトラに抱きしめられてるようだ。
暖かい。ああ。安らだ……な。
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