いまや異世界は子どもたちの遊び場です!

ちびまるフォイ

あなたは誰と一緒に攻略しますか?

世界は今「Eスポーツ」に熱狂していた。

Eスポーツの「E」は「異世界」のE。


特にその中でも人気の競技が「ドミネーション」と呼ばれるものだった。


学校で休み時間になると、すぐに友達に声をかける。


「なぁ、異世界ドミネーションやろうぜ」

「いいけど、負けないよ」


スマホを操作して異世界ロビーこと「女神の部屋」に転送された。


「異世界ドミネーションでは、

 この異世界にある様々な拠点へ先に到着し、

 その拠点数を競うスポーツです。あなたはどのチートにしますか?」


「やっぱり移動力系の能力が良いかなぁ……。

 いやしかし、戦闘は避けて通れないだろうし……」


「決まりましたか?」

「いえ、まだ」


「ご注文は?」

「もう少し……」


「どのチーt」


「うるさいな! 子供が今決めてる途中でしょうがぁ!!」


「悩むのは結構ですが、対戦相手のあなたの友達は

 すでに異世界の拠点に出発しちゃってますよ」


「そういうのは先に言えよ!!」


スタートダッシュでモタついていたせいで、異世界の拠点が奪われていた。

結局、資金チートを選択し、女神に大量のワイロを渡してから

すべての能力を手に入れて異世界に遅れて参戦した。


「ふふふ。ここから大逆転だ!!」


ウサギとカメでも、スタートこそ遅れたものの最終的な勝者はカメだった。

友達よりも大量のチート能力を手に入れた自分に死角はない。


破竹の勢いで拠点につながるダンジョンを攻略していく。


道中のボスなどなんのその。

もはや地の文で記述することも追いつかないほどの高速戦闘でやっつける。


「っしゃあ! 拠点ゲット! あっちはどうかな……」


ダンジョンから出て、青空に投影される拠点制圧マップを確認する。

自分が1拠点を攻略している間に、すでに友達はいくつもの拠点を手中に収めていた。


「はっや!! うそだろ!?」


これでも最高速度でクリアしたつもりだったが、

それを上回るほどの攻略スピードに言葉をなくした。

どんなチート使ってるんだ、卑怯者め。


「はっ! そうか! カラクリがわかったぞ!」


マップを見て気づいたのはいくつもの拠点がほぼ並行して攻略されている点。

つまり、友達は自分自身ではなく、他の人に攻略を任せている。


「思えば俺が1つ1つ攻略する必要なんてない。

 おのれーー。こざかしい手を使いやがって。しかしもう負けないぞ!!」


持ち前のチート能力でお尻からホムンクルスをいくつも生成した。


すぐに到着できるようにスピードを大きく上昇させ、

さらに雑魚モンスターに負けないように体力や攻撃力を大幅強化。


生成までに時間はかかるが数を揃え、ホムンクルス軍勢が出来上がった。


「さぁ、行け! 我が強化ホムンクルス団!!

 残りの拠点を相手より先に制覇して勝利を掴むのだ!!」


全員に命令を下すや、ものすごい勢いでホムンクルスたちは進軍していった。

道中にいるモンスターなど、小石がごとくにふっとばしていく。

その姿はもはや重機関車。


「ククク。さてさて、どうなっているかな?」


しばらくしてから空を見上げる。


空に投影される拠点マップは俺側の陣営の制圧具合が表示されて――


「う、うそだろ!?」



【 すべての拠点が制圧されました。異世界ドミネーション終了です 】



その瞬間、世界は真っ白に包まれて、元の学校の教室へと戻された。


「うそだろ……まさかホムンクルスを使って負けるなんて……」


「どうだまいったか」


友達はドヤ顔で胸を張った。

悔しい気持ちよりも納得できないほうに感情が動く。


「しかし、ホムンクルス軍よりもすばやく動いて、

 さらに道中のザコ敵をものともしない軍勢なんてよく用意できたな。完敗だよ。

 いったいどんな軍勢を使ったんだ?」


「軍勢だなんて、そんな立派なものじゃないよ」


友達は笑って答えた。



「拠点の場所でタイムセールを開いたんだ。

 そしたら、ものすごい勢いで人が集まって制圧してくれたよ」



今度はコミケ開始時の始発ダッシュ民を率いての再挑戦を約束した。

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