Epilogue:終章

「おーい!この後ドンキで適当な仮装でもかって、どっか行かねぇ?」


「すまん、パスで。今夜は先約がある。」


「お?なんだ珍しいな。お前イベントとか好きだし…って、そういや昔はこんなんだったっけ?」


「うん?まあそんなだったか?」


「ああ!変わったよ、お前。なんだよ、女でもできたのか?」


「ちげーよ。まあ、今日の予定ができたからかな。」


「なにそれ?まあいいや、じゃあ次の週末にもイベントあるけど、そっちは行く?」


「ん!それなら行けるわ」


「おっしゃ!じゃ気合いいれて仮装の準備しなくちゃな…」


「はは、あんまり期待せずに楽しみにしとくよ。」


「なんだよそれ。お前も準備しとけよー」


「りょーかい、りょーかい。じゃお先に!」


「お疲れさん!」


気さくな同僚に別れを告げ会社を出ると、黒とオレンジの灯が街を彩っていた。日も暮れた帰り道、通りを練り歩く人混みを不思議な気分で見つめる。去年のそれはその楽しさが不愉快にも感じられた別世界のそれで、そしていつの間にか自分はそこにいる人になっていた。人間って変われるものだな。一人感慨に耽りながらアパートの階段を登ると、家の前の手摺に吸血鬼のマントに牙を生やした少女がもたれかかっていた。そしてこちらに気付くと晴れやかな顔になる。


「トリック・オア・トリ〜トぉ!」

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A trick of the night 赤田 沙奈 @akasatan1204

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