漆。 目覚めよ!魔法少女ロリポップ!

漆。 目覚めよ!魔法少女ロリポップ!


前回のキミきせは――


 私はお金を稼ぐために身を売ることになりました!

 具体的に言うと、魔法少女アイドル?になるそうです!

 アイドルの先輩にレッスンを受けていたら、何故だかどこかで見覚えのありそうなカードゲームをやることに!?

 本当になんでこんなことになったんでしょう!?


 キミといた季節、はじまります……




2005年 10月 1日


 アイドル魔法少女ユウの初めての仕事は小さなカードショップの司会だった。カードゲームの大会でのアイドル活動。歌は歌わない。

 大会優勝者とのエキシビションマッチで優勝者を完膚なきまでに叩きのめし、その界隈では有名になる。

 その後、数々の仕事をこなしていき――


2005年 10月 23日


 アイドル魔法少女ユウのデビュー曲『恋は魔法少女』がオリコン1位となる。

「って、えぇえぇえぇえぇえぇえぇ!?」

「まあ、放送中のアニメの主題歌になったことも大きいドリルけど……」

 イスカはなんとなく見えざる力が働いているのを感じた。

 ユウの活躍により、人々の間に魔法少女のことが認知され、経済的な力を強めて行くことになる――



2005年 10月30日 午後2時


 この日はユウの曲を使っているアニメのイベントがあった。

 ユウはステージに上がり、歌を歌っている。

「初めの頃とは見違えてしまったな」

 イスカはふとユウがあっという間に遠い存在になったように思えてそう呟いた。

 どんなことにも自信が無そうにし、人の顔色を上目遣いに眺めていた少女。だが、ステージの上の少女はまさにアイドルという感じの色を身に纏っていた。

「くぅう!!」

 そんなユウの姿を城ケ崎はハンカチを噛みしめて見ていた。

「わたしが声優として主役を演じているというのに、どうしてわたしの人気が上がらず、あんな小娘にぃ!」

 そんな時であった。イスカは異様な量子振動を観測する。

「まさか、ワーム……」

 そこに丁度、歌い終わったユウが現れた。

「お疲れ様です」

 ユウは笑顔でスタッフに挨拶する。

「ユウ……」

 ユウはイスカの表情から事情を読み取った。

「どこ?行きましょう!」

 ユウはステージ衣装のまま楽屋口から出て行く。その後をイスカは追った。


「あれドリル!」

 ユウは見つけたワームに向かって行く。

「イスカは会場で言い訳をしておくドリル!ここは頼んだドリル!」

「わかった!」

 ユウはイスカが戻っていったのを見送ると、箒で地面に優しく着地する。

「私はあなたのためなら戦えるから……」

 ユウは右手のスナップを利かせ、マジカル・バトンを右手に出現させる。そして、流れるような手つきでバトンをワームに向ける。

「早く終わらせましょうか!」

 ユウはバトンを向けながら呪文を唱え始めた。

「影は光の下へと忍び寄る。音も立てず、声も出さず。光ある故に形あることを噛みしめつつ、その形の定まらぬことを首をひねって考える。影の動きに身を委ね、人々は震える声を上げる。歓声か。それとも怒号か。それは影には分かりえぬ。影はただひたすら踊るのみ。踊る光の真似をして。望まれるままに踊り出す。そこに感情など存在しない。伝えたい者などありはしない。人々の思いが影の心。人々の思いによって影は形を変える。さて。今宵のショーはどんな影?」

 バトンから淡い光が放出される。その光は空からユウとワームをいる周辺に降り注ぎ、ユウとワームの周辺とその外とを別の世界で塗りつぶす。

揺らめく影の少女歌劇はしれこうそくのていこくかげきだん

 暗い空間にライトの光が差す。

 観客席には誰もいない。

 ステージに相対するのは二つの存在。

 心の花を食べるもの。

 それを倒す正義の魔法少女。

「さあ!我らが友よ!海の藻屑となるがいい!」

 ユウの手には一本のレイピアが握られている。そして、傍らには古い、ユウの体ほどの高さを誇る大砲が一つ。

 ユウはレイピアをワームに突き刺すように振るう。ユウとワームは離れているのでレイピアは届かない。

 その代りに、ユウの思いを遂げるようにユウの傍らの大砲は炎を吹いた。


 ユウは早々にワームを倒すと急いで会場に戻る。

 曲を披露した後も度々ステージに上がる予定だったのだ。まだユウには一曲しかないので、もう歌は歌わない。アイドル魔法少女としてトークや企画に参加する。

 今回のイベントに参加している観客のほとんどはユウを目当てにお金を払って来ていたのだ。

 ユウは嬉しい表情をする。しかし、その手は気を抜くと簡単に震え出し、その震えを隠すように拳を強く握る。

「イスカ!状況はどう?」

 そういって舞台袖に立ったユウは見る。

 白いシャツを無造作に着崩すイスカ。

 その胸に体を預ける城ケ崎。

 二人の唇は密着していた。

 城ケ崎はイスカの唇から自分の唇を離す。そして、横目にユウの方を見て、小さくニヤリと笑った。

「じゃあ、また今度ね」

 城ケ崎はそう言い残してステージへと登って行った。

 ユウは体一つ動かなくなり、ただ茫然とイスカの姿を見ている。

「どうかしたのかい?ユウ」

 その何もなかったかのような言葉がユウの耳に何度も何度も響き渡った。



次回予告!?


次回はユウがアイドル魔法少女になりはじめたころのお話。

 ちょっとだけ時間が遡るかな。

 だんだんと深まる秋。もう七話ということは、クリスマスごろの投稿になるのでしょうか。もう上着にマフラーの時代かな?寒さには気をつけてね!

 クリスマスだから、恋人が欲しいって?

 サンタさんにでも頼んだらいいんじゃないかな。

 でも、クリスマスだから恋人を見つけるっていうのも違う気がするよね!


 次回、『ドタバタ!アイドル魔法少女は大変です!』


 そして罪はより深く――

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