第5話 ブリーフィング

 中に入るともうだいたいの生徒が揃っていた。辺りを見渡すと葉月が俺の方を見て手招きしているのを見つけた。俺はその場所まで向かいなんとか俺たちの席についた。


「遅い」


「すまん、オッサンで手間取っちゃって」


 葉月に鋭い目をつけられたが、シン先生で手間取っていたことを話すと溜め息をつきながらまあいいわ、と納得してくれた。


「それにしても、今回の調査する場所なんか変と思わねえか?」


「変って……まあ確かに急に場所が変更するのはなんかおかしいよな」


 陽介の言葉に同情する。

 それにこれを変だと思ってる奴は陽介だけじゃない、今回出るチーム全員が思っているだろうな。


「別にどうってことないだろ、例え強いのが現れたら倒すだけ、ただそれだけだ」


「お前今回の調査場所があれの近くだってこと知ってんのか?」


「それぐらい分かってる、でもなぁ、そういう経験ってのは必要だ。今こういうのを経験しないと後々後悔するぞ」


 確かに、こういう経験も必要だし俺たちが考えすぎただけか?

 それに例えこれが仕組まれたとしてもこの調査から降りることは出来ない、怪しまれる可能性大だからな。


「そうだな……ま、今ここで言ったってどうしようもないけどな」


 そう言うと竜也はチッ!と舌打ちし、スマホをいじりだした。

 まったく竜也は…それにしても今回集められたチームは自分的に複雑なんだが。

 ライバル関係の第1小隊、色々とめんどくさい第7小隊、そして俺たち第5小隊、こりゃ無事に終わるかわからないな。


「……(ギロッ)」


 やべっ、すぐさま俺は顔をそらす。

 さすがにチラチラ周りを見ていたら誰か気づくと思ったがまさかアイツが気づくとか最悪だ。

 さっき睨んだ奴は天道赤碕てんどうあかさき、第1小隊の隊長であり俺のライバルでもある。ちなみにアイツだけがライバルであって他のメンバーとは友達感覚でよく話したりしている。


「たくっ、アイツだけはどうも慣れねえな」


「いや、お前一切慣れようとしないだろ」


 失敬な!、と言おうとしたが陽介の言ったことは当たっているため反論できなかった。



 それから時間がたち誰一人かけることなくブリーフィングが始まった。司会役をやっているシン先生はなにもふざけることなく真面目に今回の調査について話していた。


「今回の調査する場所だがみんなも聞いたとおり変更となった。本来行く場所はトラブルがあったらしく代わりに行く場所はここになった」


 シン先生はモニターを起動し、今回行く場所の詳細を表示した。

 

「…まじかよ」


 思わず呟いてしまう。事前に知らされていたとしてもこれは口に出てしまう。

 それは俺だけではなくここにいる人全員がざわめいている。

 

「静かにしてくれ。みなの気持ちはわかる、なにせ今回行く島は警戒範囲に入っている場所だからな、だから我々教師は安全を保障するため対策とチームの選別を行った。そしてその選別で決まったのが君たちということだ」


 対策とチームの選別ねぇ…そんなことしても絶対安全ってわけでも行かないんだよな。警戒範囲に入っているってこともあるけど本当にやばいのはその警戒範囲の原点でもある地獄島じごくとうなんだよな。


 地獄島じごくとう、呼び方は人それぞれで死の島、悪魔の島と呼ばれていたりもする。太平洋のど真ん中にあり島の外から見てもとてつもない大きさで浜辺にいくと島がくっきりと見えてしまう。でも島は霧で覆われているため島の姿は一切遮断されている。

 あの島が存在していたのははるか大昔、地球が生まれたと同時に存在していると教師に教わったが俺はただの仮設だと思っているが本当のことは誰も知らない。ただ、あれは人類の敵だということはわかっている。


「んっ?」


 急にどこからか視線を感じる。この感じ、俺を敵視するかのような…いやこれアイツだ、赤崎の視線だこれ。

 席の配置から第一は廊下側、俺たち第五は窓側、そして第七はその後ろ、視線が横から感じたことから第一だとわかる。そしてだいたい俺たちを敵視するのは赤崎しかいない。


 シン先生の説明はまだ続いているが赤崎の視線のせいでまったく頭に入らず、かといってにらみ返すのも面倒なため俺は早く終わることを願いながらブリーフィングの時間を過ごした。



 ブリーフィングが終わり、俺たちは今回の調査の整理をするため食堂にあつまったが――


「たくっ、赤崎の野郎俺たちをバカにしやがって…!」


「落ち着けタツヤ、あんな煽りいつものことだろ、いちいち気にしてたら身がもたないぞ」


「んだとおい?じゃあなんだ、シュウはあんなのを受けてなにも感じないのかよ?」


「はっはっは、俺をなめるなよ、あんな煽り…なにも感じないわけないじゃないか!!」


 まったく話が進まなかった。

 こうなったのはついさっき、食堂に向かおうと教室から出ようとした時、赤崎が俺たちの目の前に立って一言。


『貴様ら凡人の集まりは役立たずだ、せいぜい俺たちの足を引っ張らないようにな』


「チクショー!煽りだけ煽りやがって!!」

 

「はいはい、そんなことで怒ってたらきりがないわよ。ほら、さっさとやりましょう」


 まだまだ言い足りないが流石にこのまま埒が明かないため本題に入ることにした。


「で、どうするんだ?行くことは確実としてどう行動する?」


 最初に切り出したのは陽介だ。


「うーん、面倒事を避けるために目立たないようにするか、それともいつも通りにやるか……」


 俺はそう言いながらみんなに視線を流す。

 みんなも察したのか俺の問いに応えた。


「俺はどっちでもいいぜ」

「私もそれに同感」

「私もー」

「わ…私もです」

「俺もどっちでもいい、てか早く赤崎の野郎をぶっ潰してえ」

「おっさんは――「あんたには聞いてない」 ひどくない!?」


 さて、陽介、葉月、真由美、鈴、竜也、あとついでにシン先生、全員どちらでもいいときたか(シン先生は強制)…まったく第五小隊俺たちらしいや。


「んじゃ、決まりだな!俺たち第五小隊はいつも通りにやる、それでいいな?」


 隊長である俺の言葉にみんな頷く、いや~やっぱ頼れる隊長は違うな~いっつもみんな俺にゆだねるんだもん、やっぱそれって俺が優秀だからかな、いや~こまったこまった。


「あいつ…未だに気づいてないのか?時間をかけたくないから全部シュウに押し付けていることに(ヒソヒソ)」

「まあいいんじゃないの、本人が望んでいるなら?知らぬが仏ってやつよ(ヒソヒソ)」


 ん?なんか陽介と葉月がなんかひそひそ話してたような…まあいっか!

 

 こうして結局隊長の修は気づかないまま解散したのだった。

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この当たり前の世界に救いをください シドー @shimao

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