第4話 人生の半分が酒だという教師

 

「ちーす、誰かいるかー?」


 昨日の戦闘を終えて今日、俺は学校の武具製造室に来ていた。

 

「はいはーい、こっちですよー」


 色々な物が山ずみになっている陰から手招きされ、俺はそこに向かった。


「よ、マユミ、朝っぱらからご苦労だな」


「別に好きでやっているので平気ですよ、シュウさん」


 こいつは里中真由美さとなかまゆみ、俺たちのチームの一員で武器の点検や作成などをしてもらっている。

 本人は気にしているが身長……いや小柄な見た目をしているので知らない人から見ると小学生だと確実に思われる。

 後彼女は大の鍛冶好きで武器製造に入ったが、鍛冶は男の仕事とみんなから印象付けられているため鍛冶をやっている女性はまだこいつしかいない。

 

「で、今日は何のようですか?」


「あぁ、先週預けた俺の武器と借りてたこの剣の返却をな」


「そうですか、じゃあ今取ってきますので借りてた物は机に置いといてください」


 そう言い真由美は預けた物を取りに行くため隣の武器庫に入っていった。

 その間俺は借りてた剣を机に置き、ただ待つのも暇だから室内を見回した。

 やはり鍛冶なだけあって設備も凄いな、やり方は知らないが生徒に支給される武器は量産型でコストはいいが性能はダメダメだ。

 だがそれを鍛冶師がここの設備を使って強化、または武器の製造を行っている、まあ俺たちの命を預かる武器を作ったりしてるんだ、それ相応の設備も必要だ。


「持ってきましたよシュウさん」


「ん?あぁ、意外と早かったな」


 武器庫から戻ってきたマユミは持ってきた物を机に置いた。


「シュウさんの要望通り、少し重くして壊れにくくしました」


「なるほど…」


 真由美が持ってきた剣を手に取ると少しズシッと来る感覚、そして引き抜いて刃を確認すると前よりも少し厚くなっていて耐久力を上げたいることが分かる。

 

「うん、実に俺好みの剣だ。流石だな、マユミ」


「それほどでもないですよ、流石に何回も修理やら調整やらしていると慣れますよ。現に修理が多いのはシュウさんなんですから」


「そうか?まぁ俺が雑に扱いすぎたせいでもあるからな」


「はぁ、武器にだって限度があるのでそこらへんしっかりしてくださいね」


「あいよ、それじゃ俺はこれで」


 目的を達成したため出ようとすると。


「あ、そういえばシュウさん、今日って打ち合わせの日でしたよね?」


「あぁ、そうだが」


「担当、ですよ」

 

「は?」


 俺は思わず唖然としてしまう。

 真由美が言うあの人はアイツしかいない。あーあ、まじで一回禁酒させないとダメだな。


「そういうことで、後お願いします」


「あぁうん、流石にこれは俺がやっとくよ」


 朝早く来て武器を作ってる真由美に更にアイツの面倒を見てもらうのは罪悪感がありすぎるため、俺がやることにした。



「たくっ、アイツどこ行ったんだよまじで、いつもの酒の飲み過ぎで寝てると思って部屋まで行ったらいないとかどうなってんだよ」


 せっかくわざわざ遠い教師専用の寮まで行ったのに、俺の苦労をどうしてくれるんだまったく。

 なら、一体アイツはどこに……?


「あーちくしょう、今日は面倒事には巻き込まれたくないんだよ、昨日の葉月のせいで筋肉痛にもなるし、散々すぎるだろ」


 そんな愚痴を溢しながら探すこと数分後、やっと見つけた。


「やっと見つけた。おいオッサン!なにこんなところでほっつき歩いて……ん?」


 色々と文句を言ってやろうかと思ったが、いつもとは違い校門の近くにある桜を珍しそうに見ていた。


「……ん?なんだシュウか、俺に何か用か?」


「何か用?じゃねえよ!今日の打ち合わせの担当がオッサンだってこと忘れてんのか!」


「あー、すまんすっかり忘れてたわ、いやー俺も年取ったもんだから忘れっぽくて。いやー俺ってオチャメちゃん♪」

 


 ぶん殴るぞオッサン



 はぁー、こいつは霧崎きりざきシン、一応先生であるが色々と問題があって俺たちのチームに所属している。まあその問題の原因はだいたい酒関連だけどな。


「いい加減にしないと禁酒させんぞ」


「なっ!?それはだめだ!酒は俺の人生の楽しみであって血でもあるんだぞ!禁酒なんてされたストレスで白髪が増えるぞ!」


「てめーは元から白髪だろうがぁ!!」


「ぐぇ!」


 俺のくり出した拳は見事にオッサンの腹へと当たった。


「たく、いいから行くぞオッサン、急がねえと流石に間に合わねえ」


「イテテテ……分かってるよっと」


 さっきの拳で倒れていたがすぐに体を起こす。そして集合場所まで共に歩きだした。


「そういえばオッサン、なんでさっきあんなに桜を珍しそうに見てたんだ?」


 ふと、歩いている途中で気になっていたことを聞いてみる。


「うーん、別に珍しいとかじゃなくて、なんかこう…とても懐かしいと感じたんだよ、まるで何百年をまたいだ感じで」


「何百年も?そんなわけないだろ、確かにオッサンは去年の二学期らへんに来たけど、ここに来る前に一回は見たんじゃねえの?まあ、オッサンがどっから来たかは知らないとして」


「なるほど……まあいっか!どうせ思い出したとしてもまた忘れるんだし、『過去を捨てて今を生きろ!』この言葉に限るよ」


「はいはい、つまり酒さえあれば後はどうでもいいってことだろ」


「そゆことー」


 そんな話をしながら歩いているともう集合場所の教室に着いた。

 

「時間はっと…ギリギリセーフってとこかな、俺は先に入ってるから、後は頼んだぞオッサン」


「はいはいおっちゃんに任せなさいっての」


 そう言いオッサンことシン先生は資料を取りに行くためここで別れ、俺は視聴覚室の中へと入った。

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