10
「ひとつ思ったんだけどさ」
まだ鼻声であったけれど、しょうちゃんは元気に部活へ来ていた。
朝、顔を見るなりこちらへ駆け寄ってくれた友人は、まずは昨日の欠席を律儀に謝った後、自身の調査について述べた。
結果は白紙。喜ばしいことだけど、クラスメイトたちが事件や事故に巻き込まれたことはなかった。
圭司も告げた。家族には変わりはない。引っ越した先のサニーハイムにも、何も手がかりはなかったこと。
それから、お化けからなにも返事がないと言ったところで、「ひとつ思ったんだけどさ」と、しょうちゃんが眉間にシワを寄せながら提案したのだ。
「お化けから返事は無いんだよね? 」
「う、うん」
「なんて質問をしたの? どうやって?」
「え?」
「返事がない」と言うのは、質問ありきの言い方だ。しょうちゃんはそこを見落とさなかった。圭司は、どうしてか自分が怒られたような気持ちになった。バツが悪い。
「誰に殺されなんだ? って……」
「どうやって質問をしたの?」
――どうやって?
ここで、圭司にもしょうちゃんの言いたいことが分かってきた。そうなると少しの恥ずかしさが沸いてくる。どうしてそれに気がつかなかったんだろう、と。
「ごめんね。責めてる訳じゃなくて……その」
「声に出して聞いたよ。それだけしかやってない」
しょうちゃんの声を遮って、圭司はスパッと言い切った。
自分に対する怒りだ。しょうちゃんはそんな圭司を見て、ニコリと笑ってくれた。
「こっくりさんに10円玉が必要みたいに、きっとそのお化けにもなにかを使わないと通信できないと思うんだよね」
「それが数学のノートか」
「たぶん。数学のノートじゃなくてもイケる気はするけどね」
盲点だった。どうして気がつかなかった。お化けへの質問を、お化けと同じようにノートに書くことを。
目的地は実は目の前にあったのだ。険しい旅路に仕立てあげたのは、圭司自身であった。
◯
部活が再開し、いよいよ大会本番が近づいてきた今日。
練習の最後にはオフェンスとディフェンスに別れて紅白戦を行った。
戦術を確認しつつ、気に入らないことがあれば顧問の西山が笛を吹いて、いちいちゲームを止めてしまうのだけれど、圭司はイキイキとプレーができた。
積極的にボールを要求し、走り、シュートを打つ。しかし、その威勢だけは良いものの、大事なチャンスで空振りをしてしまい、チームメイトはおろか、西山にも笑われてしまったのだが……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます