第22話 エリアボスとの勝負はやはり燃える 6
リーダーは距離をとると共に俺の隣に移動した。
そして、少しアイコンタクトをとるとすぐに行動に移る。
正直、アイコンタクトでどんな内容を伝えられたか分からないけれどそこら辺は向こうが察してくれるから俺のできる範囲で精一杯やれば問題ないだろう。
ならなぜアイコンタクトのみにしたかだって?
それは単に俺がやってみたかっただけだ。この状況においては言葉で作戦立てようがその場の判断で全然変わってしまうので実際問題ない。
そんな中リーダーがオークキングへ急接近していた。俺はそれに遅れないように少し距離を縮める。そして、オークキングの後ろへと回り込む。
リーダーはスキルを使いながらオークキングが攻撃しづらい位置を上手く活用してオークキングの攻撃を全て避けている。
常にリーダーが近距離にいるためかオークキングは近距離では大きな隙ができる飛ぶ斬撃を出せない状況だ。
俺は背後に回り込むと足に力を込め一気にオークキングに接近。
オークキングはそれに気づき真上に跳躍した。そして、そのまま着地し周囲に衝撃が走る。
俺とリーダーはそれを予見して予め距離をとっているので少し風が来る程度だ。
そして、俺は着地の瞬間に出来る隙を狙い一気に接近。
ワンテンポ遅れてではあるがそれでも僅かながらオークキングの反応は遅れるはずだ。
しかし、それでもオークキングは対応してきた。
膝ら辺の防具の隙間を狙った低い軌道の剣を剣を地面に刺して止める。
おかげで衝撃は来なかったが攻撃は入らずじまいだった。
そこへリーダーが急接近、地面に剣をさしていたためにオークキングの反応が少し遅くなる。
とは言ってもさっきと変わらずほとんどそのままの時と変わらない反応速度だ。
だからか、リーダーは距離を完全に詰め切る前に風の刃を放った。
オークキングも急なその行動に反応していくが追いつかず防具に直撃。
そして、そのまま後ろへと衝撃で押された。
俺はそれを見逃すはずはなく、すぐ追撃に入る。フェイントを入れつつ攻撃を放つが、これはコテの部分に止められてしまう。
目立った傷は無いものの衝撃は入ったはずなのだがオークキングは相変わらずのすばやさで攻勢へと転じて来た。
なので俺はこれ以上の攻撃を一旦中断し、距離を取ろうと動く。
オークキングはそんな俺めがけ接近してくるが、リーダーが風の刃を放ってくれたおかげでオークキングがそれを避けている間になんとか距離を取れた。
そして、再びリーダーと隣合わせになった。
「ちょっとキツくないですか?」
これは俺の素直な感想だ。リーダーが来たからなんとか互角には戦えているがこのままでは確実に負けてしまう。
「そうだな。2人ならもう少し楽と思っていたんだが…」
リーダーの方もなかなかに苦戦しているようだ。
『残り10分です』
そこへラミアからアナウンスが来た。
まだ10分あると思うかもしれないが5分近くを割いてあの程度のダメージしか与えられていない。
そして、向こうも同じだとは思うが俺とリーダーの体力も少しずつ消耗されている。
今回なんてスキルを使っているとはいえ、速さ重視で相手を翻弄させながら攻撃をしているのだ当然体力の減りは通常より早い。
オークキングの飛ぶ斬撃を避けつつ、接近してくるオークキングからスキルを駆使して一定の距離をとりつつ話し合った。
「もう少し速ければ行けると思うんだがなぁ」
「速さ…ですか…」
話し合ってなお、俺には打開策は浮かばなかった。しかし、リーダーは違ったようでもう少し素早く動ければ勝てると考えているらしい。
「そうだ。こちらの攻撃にオークキングは反応しているがおそらくはギリギリ、これ以上の速度で攻められたらあいつの反応速度では足りないと俺は踏んでいる」
ふむ、つまり、もっと速くなれば勝てるかもしれない。最悪でもそれなりなダメージを入れれるかもしれないということか。
そうと分かれば簡単なものである。
その問題は簡単に解決する。ノーリスクとまで行くものでは無いが比較的簡単により素早くなる方法はある。
あとはそれが可能かどうか、それだけの問題となった。
というわけで、思いついたら即実行だ。
俺はまず可能かどうかをラミアに聞き、そして、『可能だ』という返事をもらった。
そしたら、あとはリーダーに伝えるだけだ。
案の定リーダーもその作戦に乗ってくれあとは実行のみとなった。
リーダーに対してのリスクが比較的大きい作戦なのだがそこら辺はさすがだ。
俺もいつかはそうなりたい(多分なれない)と思えるほどにはかっこよかった。
ここからがいよいよ正念場だ。
改めて気合いを入れると俺はオークキングの気を引くべく、オークキングに向かって走り出した。
当然、そのまま直進はせず、ある程度近づいたところでかわしたり、スキをついて攻撃をしたりというふうにしている。
俺がそんなことをしている理由は簡単だ。
今回行う試みはリーダーでも初めてやることなので1発で成功できないと思われるからだ。
リーダーなら1発でやり遂げる可能性もあるが様子というか状況を見るからしてそうはいかなかったようだ。
なんにせよ、この間、リーダーは無防備なので俺がしっかりとオークキングの気を引かなければならない。
俺はわざと隙を見せたりして、オークキングの気を引き続ける。
途中、何度かリーダーの方へオークキングが行きかけたがそこは俺が責め立てることで防ぐ。
そのまま攻撃が通れば文句なしなのだが、当然全て防がれた。
今もオークキングの気をこちらへ戻すために攻撃している。
しかし、またしても剣で受け止められた。
オークキングの方はそのまま力技で剣を押し返し、こちらへ剣を振り下ろしてくる。
俺は押し返されたことで少しバランスを崩したがすぐに剣の回避にうつる。
そして、すれすれを通った剣は地面に当たり、スキルによって地面に衝撃が入った。
今回はそれをまじかで受けたのでかなりの風圧をくらいそうになりやむなく後ろへ飛んで少し距離を置いた。と共に風圧の衝撃を抑える。
と、その時俺の体がさらに軽くなった。
まるで風に包まれたような感じだ。いや、実際に風に包まれているから当然か。
俺はそれを契機に攻撃を開始させるべく、足に力を込めた。
そして、そのまま跳躍、これまでよりも速い速度で移動し瞬時にオークキングとの距離を詰める。
そのまましゃがみながらオークキングの横へまわると、これまた先程より速い剣速で肩へ向けて剣を振り上げる。
オークキングは剣で受け止めようと試みるがリーダーの予想通り反応が追いつかず、俺の剣によって弾かれる。
俺はそのまま勢いを殺さずに今度は大腿部へと剣を振り下ろした。
今度の攻撃は当たり、オークキングからかすかに呻き声が聞こえた。
その後、慌てて距離をとる。
「貴様、何をした?」
距離をとったオークキングから疑問が発せられたが俺は無視した。
答えろよと思うかもしれないがそんな余裕が無いので仕方が無い。
ちなみに俺の動く速度があがった原因は当然のことながら主人公の力に目覚める的なものでは無い。ただ単純にリーダーのスキルを俺に発動してもらっているのだ。
さすがに風の刃を放つとかは出来ないが、風のスキルで自分の速度をあげることは出来たからこれは成功と言っていいだろう。
初めからそういうことが出来たのも、身体強化を練習したことによるという面が強い。
というわけで、俺は一気に勝負を決めるべくオークキングの方へ再び接近した。
オークキングも速くなった俺を警戒し、攻撃してくる姿勢は見られない。
そっちの方が少し大変なのだが俺は構わず突っ込む。そして、攻撃が消極的なのをいいことに正面めがけて走った。
距離を詰めたところで剣を横に薙ぐ。当然、それは止められた。しかし、そんなことはもはや想定内だ。俺は剣に攻撃が当たる瞬間少し力を緩め、次の行動へと移る。
そのままステップを踏んでオークキングの横にまわった後、方に向けて攻撃。と見せ掛けさらに背後に周りしゃがみ込む。
そして、フェイクにきずき、脚への攻撃を阻止すべく動いているスキをついてガラ空きの肩に上体を起こして踏み込みながら攻撃をした。
それに気づいたオークキングは咄嗟に防御しようとするが素早さで劣っている上に反応が遅れたので防ぎきれず俺の剣はオークキングの肩を斬り裂いた。
再び、呻き声をあげるオークキング。そのまま距離を取ろうと動くが俺は踏み込んだ足を回転させて振り向きざまに大腿部へ追撃を与えた。
こちらは浅かったが攻撃のおかげでオークキングの着地が乱れる。
俺はそのままさらに1歩踏み出し首へのへの突きを繰り出す。それはオークキングの剣によって逸らされたがそのまま剣を持ち替えて振り下ろした。
オークキングは足を退けてそれを躱すが片足で立った瞬間を狙って俺は風の力を利用し、地面に突き立てた剣を利用して足を掛けた。
それによってオークキングは転倒。すぐに体勢を立て直そうとするが俺は即座に地面から剣を引き抜くと全力で斬りかかった。
オークキングは体勢を立て直すのを中断。すぐに両腕の防具で剣の直撃を防ぐ。
が、オークキングの体は吹っ飛んだ。そのまま壁に激突。オークキングのスキルも相まって壁には無数のヒビをが入る。
俺は激突による粉塵が冷めやらぬうちにさらに追撃を開始する。
オークキングは既に体勢を立て直していたがかなりの勢いで壁に激突したためか少し足がふらついていた。
その隙をつくように俺は素早い動きでオークキングの反応をおくらせつつ、何度も攻撃をした。
オークキングの動きが先程よりも鈍くなったため、攻撃は当たるが上手く防具で受けられているので衝撃でしかダメージが入っていない。加えて、上手く重心を動かしているために再び吹っ飛ぶようなことは起こらなかった。
それでも俺は攻撃を続ける。衝撃とはいえダメージは蓄積されるのだ。いつ終わるか分からないこの状態の間に少しでもダメージを入れておきたい。
『焦ってはダメです!』
そんな俺の焦燥を見抜いたラミアがここで一喝。そのおかげで俺は雑になりかけていた攻撃を修正しはじめた。
「助かった」
あまり話せる余裕はないので俺は一言で感謝を述べる。ちゃんとした感謝はこれが終わったら伝えるつもりだ。
もちろん、これは決してフラグではない。
『これぐらいのサポートは当然です』
ラミアはさも当たり前の事と言わんばかりの言葉を返したが声がどことなく嬉しそうだった。
俺は再び全意識、集中力をオークキングへと向けた。
猛攻を続ける中、突然、オークキングの片足の力が抜けた。それによって少し体勢を崩したオークキングは全て動きが一瞬停止。すぐに気合を入れて建て直してきたが今の俺には十分な隙となった。
俺は体勢が揺らいだ瞬間、即座に懐に入り込む、そして、目一杯の力を使ってオークキングの肩(剣を持っている方)へ剣をくい込ませた。
そこで、オークキングは体勢体勢を建て直し終えるがそのまま踏み込みながら剣を押しつけた。そして、そのまま切り裂く。
「ぐわぁああああああ」
今までよりも数段大きな呻き声が部屋を駆け巡った。
オークキングは即座に斬られた腕を抑えながら、後退。依然、肩からは大量の血がドクドクと肌を伝って流れているのだがオークキングは剣を手放さなかった。
その精神力を俺は心の中で感心しつつ、今が好機だとさらなる追撃を開始。
右足の大腿部へ突きをする。オークキングはさらに反応が鈍くなっており、防がれることなく攻撃は直撃した。
直後、血が吹きでることを無視して、オークキングが剣で攻撃をしてきたが回避。剣先が防具をかすめ、スキルによって増幅された衝撃をくらったが両足を使いなんとか踏ん張る。
生憎とヒビは入った様子は無いので俺は攻撃を続行した。
俺は踏ん張った勢いで再び前進。オークキングがそれに反応して剣を斜めに斬りおろしてくるのを体を傾けることで回避し、倒れる体を足で踏ん張って我慢。そこから体を回転させそれに合わせて剣を振った。
オークキングはそれを剣で防ぎ押し返そうとする。俺はそれを剣で逸らし、風の力を使いオークキングの背後へまわる。そこからうなじ目掛けて攻撃。オークキングはしゃがんで避けたが俺は素早く剣を持ち変えると突き刺すような形で剣をつく。
ここからはもう詰将棋の様相をしてた。
俺の攻撃を体を転がして回避したあとその勢いを使いオークキングは立ち上がった。
俺はその瞬間をついた。
そう、その隙をついて俺はオークキングの首を剣で突き刺したのだ。
俺が剣を抜いた刹那の後、大量の血がオークキングから吹きでる。それに合わせてオークキングは膝から崩れ落ちるようにして俺の隣に倒れる。
血は当然それでも止まらずにどんどん床に広がっていた。
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