第18話 エリアのボスとの勝負はやはり燃える 2
海に行った日からさらに数日がすぎた。
そのあとも練習という名の実践を重ねスキルもだいぶものに出来るようになった。
ちなみにあの後だが笑美の修正が予想外に時間がかかり帰りの道中で夕食を食べていくことになった。おかげで帰りが遅くなりゲームへのログインは断念した。
そもそも、俺の体力が尽きかけていたから早く帰ってきてもバタンキューで即寝落ちだっただろう。なので結局変わりは無かった。
8月も残りわずかとなってきたが俺は今日も今日とてゲームである。
お昼ご飯を適当に済ませた俺は早速ログインした。
コンコン
ログインして少しすると扉がノックされた。
ちなみにこちらの世界では今は5時頃だ。この前はオークとの戦闘から帰ってきてすぐログアウトしたのでこんな時間になっている。
「どうぞ」
「このあと6時から会議があるんだが輝人君にもそれに出て欲しい」
断るいわれは当然ないので俺は入室の許可の意味を含め返事をしたが用件は扉越しに伝えられた。
声からして多分リーダーだ。
「分かりました」
「じゃあ、6時に会議室に来てくれ」
俺が了解の意思を示すと集合場所を伝えられた。足音が遠ざかっているからもうどこかへ歩いていってしまったのだろう。
「ラミア、俺も出なきゃ行けない会議ってなんだろうな?」
魔法を教えてもらうにはいささか疲れていたし(アバターが)、今日もスキルを使って魔力がそれなりに減っているので俺にやることは無かった。
なので、ラミアとお話とかして暇を潰すことにした。
『フランシェスたちの会話を傍受していないので正確なことはわからないですけどおおよそオーク関連のことだと思います』
妥当な見解だと俺は思った。
俺も他に携わっているものがないので呼び出されるとしたらそれぐらいだと思う。
それにしても、ラミアはサラッと怖いことを口にした気がする。会話の傍受とかもうそれ盗聴だよね。
せめてもう少し言い方を気をつけて欲しい。まぁ、これまでの事から考えると本人はあまり意識してないんだろうけど。
待てよ。それって俺の会話は聞かれてたってことじゃん!まぁ、うすうす勘づいてたけどね。
「そんな所が妥当だな。なら内容は支部に乗り込んで…みたいなのか?」
これが一番妥当だと思う。いくつか支部を潰していくらか数を減らしてからの方が俺たちの勝率は高くなる。
見回りをするのもそのためなんだろうし。
『それかもしくは本部を叩きに行くかのどちらかでしょうね。会話は聞いていませんが見てる限りでは武器などの物資が
「うーん」
正直、選択肢が多くて推測が難しい。
少し前に支部の中でも小さめのところを落としに行った時のことを踏まえるとまだ本部への乗り込みはないと思うけどそれ以外はどれも有り得そうなものばかりだ。
その後もラミアとの会話では結論が出ず、いよいよ会議室へと向かわなければならない時間になった。
「失礼します」
さすがに中の構造を覚えてきて、地図なしでも行動できるようになった俺は一声かけた後、会議室の扉を開けた。
「来たか」
中にはもうほとんど人が集まっているようで残りは俺だけみたいな感じだった。
5分前行動を心がけたつもりだが他の方々は10分前行動でも心がけているのだろう。
中に入った俺はリーダーに誘導されるまま指示された場所に座った。
「それではオーク対策会議を始めます」
フランシェスの一言の後、俺達は起立、一礼した。
当然これまで俺は会議に参加しなかったので見よう見まねでやったのだが。
他の参加者は作戦考える人と騎士数人、それにフェイルだ。あまり広くない会議室だがこの人数ならそれほど
「それでは今日の議題を発表します。一部のものは事前に伝えているので知っていると思いますが今日の議題はオークの本拠地をどのように攻略するかです!」
みんなが席に着くと軽い咳払いをしたあと、フランシェスは今日の議題を発表した。
「……え?」
俺はというと予想の段階で完全に候補から外していたものが正解だったので呆気にとられていた。
一方の騎士達はおぉーという声が上がっている。どうやら騎士達の方はリーダー以外知らなかったらしい。
「それでは私が考えた現状でのプランを発表する。今回はこれをより完璧にしていくための会議だから意見があるやつはどんどん言ってもらって構わない」
作戦を立てる人、確か名前はセイラさんだ。がここから仕切るようだ。
初対面の時は話していないし、マントで覆われていたのだが意外と男らしい話し方だ。見た目はメガネにくせっ毛気味の長い黒髪で目はキリッとしていて、体やその他もそれにあったようにスラッとキリッとしていた。
これがスレンダーということなんだろう。
この後、現状のプランが説明された。
簡単に要約するとまず、もう少しで完成する大砲で壁を壊し突入。混乱に乗じてある程度の戦力を削った後、今回のラスボス、オークキング(正式名称は知らないけれどそう呼ばれているようだ)を討伐するといったものだ。
「どうだ?」
俺はストラテジーゲームをも一応やった事があるが現実とは訳が違うから実質、初心者と大差ないだろう。そもそも敵陣地の構造、知らないし。それでも呼ばれたのはこの作戦に俺も参加するからなのだろう。
そこまで強いの?とか思われそうだが鍛錬の成果もあって今ではスキルを使えばリーダーと互角もしくはそれ以上で戦える技量に達したのだ。もう少しすれば余裕で勝てるようになる…………と思う。
まぁ、ラミアの作ってくれたアバターがすごい素質を持っているってだけだけど。
話を戻すが、そういうわけで戦略とは無縁そうだがラミアに意見を求めることにした。
『そうですね。作戦については私の専門は人を導いていくことですからあまり助言出来なさそうですけど。時期的に勝負に出るのもありかもしれませんね』
女神だし、戦略知らなくても問題なから仕方ないか。
それにしてもラミアが人を導いていく神だったのは初耳だ。
でも、神って基本、人々を導く立場だよな?
そこら辺、疑問に思ったが要は統率力に優れているということなんだろう。
統率力とかなくても問題ない強さがありそうだがそこは突っ込まない方がいいと俺は判断した。
「もう少し数減らしてからでも良くないか?」
逆に俺はまだいくらか支部が残っている状態で攻めることに疑問を感じた。
確実性を期すのならできるだけ優位にしておくに越したことはないはずだ。
『それもそうですがこれ以上は向こうから攻められかる可能性が上がりますし、何より、ここで暮らしている市民の精神的にこれ以上長期戦になるのは避けなければいけないと思います』
「はぁ」
完璧というかすごいまともな考えに驚いた俺は気の抜けた返事をしてしまった。
軍事には
セイラさんの立てたプランに反対するものはいなかったのでここからは細かいところを詰めていくことになった。
「まず、大砲でどの程度の規模の破壊を行うかだが、かなり壊すつもりでいる。球数にすると5発ぐらいだ。一応言っておくが大砲は大きいためそう何台も運べない、基本的には1から2台ほどを想定している感じだ」
はじめに突入時の説明がなされた。
俺は実物の大砲を見たことがないので重さや破壊の規模もわからない。よって正直なところ俺にはよくわからなかった。そもそも俺はこの国というか世界にどのような兵器があるかも知らない。
唯一わかったのはそれなりな数の砲弾を撃ち込むということぐらいだ。
「ラミアはどう思う?」
『そうですね……そこら辺はあまりわからりませんね。そもそも大砲使ったことないですし』
確かに言われてみればそうだ。
神様に兵器とかは必要ないだろう。それも俺の知っている限りではあまり威力は高くない大砲なら
まだ、ミサイルとかの方が役に立つだろう。まぁ、それでもダメージを与えれないと思うけど。
なんにせよこれに対して俺の言える意見はないのでこれについては
俺が傍観を心に決めてからも議論は活発に行われていた。
会話の端々に「いっそ、国家級兵器で壊しても…」とか「国に保管されている魔導書を使って大規模術式を…」とかいう意見も上がったが規模がでかすぎるのと色々と制限があることから却下された。
なんでも国家級兵器には最初に使うまでとそこからのインターバルで数週間とか必要らしい。
一方の大規模術式にしても範囲が広すぎる(国のほとんどが範囲になるぐらいの広さ)のとかなりの魔力が消費されるとの事。
確かに敵はオークのみではないから簡単には使えない代物だ。
結局、不意打ちのために敵に気づかれないことを考慮して、持ち運びしやすい手榴弾などの爆発物と大砲を併用していく形に決まった。
当然、硬い外壁は壊せるかは不明なので改良してできるだけ威力が高くなったものだ。
俺はこちらにも手榴弾とかあるんだなぁと思っていた。
この調子ならもう少しで戦車とかも登場しそうだ。
「よし、それでは高威力の爆弾と大砲で決定になるが、いいか?」
最後にセイラさんが確認を取る。
皆、賛成の意を示すべく頷いた。俺も特に反対する訳では無いので同じく頷いた。
手榴弾の改良が今から間に合うか不安だがたぶん問題ない……うん、そのはずだ。
「それではここからは突入してからの段取りだ。これに関しては騎士長の管轄だからここからは騎士長主導で進める」
ここからバトンタッチして、リーダーが前に立って進めることになった。
リーダーは前に行くと壁に見取り図を貼った。たぶん、これはオークの本拠地のものだ。
「必ずしも正確というわけではないがこれが偵察によって判明した敵地の内部構造だ。
奴らが使っているのはこの都市有数の大きさを誇るとある貴族の館で入ってすぐに大広間となっている。さすがにオークキングの居場所までは特定出来ていないが爆破ののち広間へ突撃し、不意打ち気味で敵を倒していく方向で検討している」
どうやら、敵の本拠地は豪邸らしい。そこら辺、ファンタジー感を守って教会とか要塞とかそういった所にして欲しい気もするが仕方がないだろう。
作戦の方は普通にいいと思う。不意打ちでできるだけ数を減らせればその後の戦いでの負担が減る。
どっちにしろ口出しできる身ではない俺はとりあえずわかんないところを色々聞いてこの作戦への理解を深めることにした。
「もし不意打ちが上手くいかなかったらどうするんですか?」
最初にして最後の質問はズバリこれだ。
そう、失敗した時の対処法である。
物事に100%なんて存在せず、何においてもある程度のリスクがあるのだ。逃げ道が明確でこそ本来の力が発揮できる。
と力説している訳だが俺にそこら辺の危機感とかは今の体がアバターゆえにないからどっちかと言うと作戦の細かいところを詰めていく意味合いの方が強い。
「そういった場合には囲まれて各個撃破される可能性があるから一旦退避だな。追ってくる場合は最悪スキルを使用してでも振り切って、支援組からの大砲等による援護をしてもらうつもりだ」
リーダーもそこら辺は考慮しているらしくちゃんとした答えが返ってきた。
大まかなのはその場の状況次第で臨機応変に対応していくからなんだろう。
「ラミアはどう思う?」
俺的には納得したが一応ラミアの意見を聞いてみた。
もちろん周りに気づかれないよう小声でだ。
『そういった戦術はアルテースさんの専門なんですけど私個人としては問題ないと思います』
ということは多分、問題ないんだろう。
ラミアの言ってたアルテースさんは多分、オーディーンみたいな戦の神なんだろう。
その後もどのようにしてオークキングの場所を探すか?とか、複数のハイオークと同時に戦う場合はどのような対処をするか?とかと言った所について話し合われた。
そして、最後には俺ともう1人の騎士でオークキングを探し、リーダー達は建物内のオークを倒すことに専念し終わり次第合流ということになった。
「色々新しい意見もでたため日程については後日、順を追って伝えます。それではこれで会議を終わります」
最後に、フランシェスから締めの一言があったあと最初と同じように起立、一礼をして会議が終わった。
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