第15話 武器の作製は何かとワクワクする 5 4
ここから現実でも異世界でも数日をかけて移動が続いた。
そして、いよいよホーミルムに戻ってきた。とても久しぶり感が満載だ。
この間に現実では笑美が再び家に来て俺を外へ連れ出した。
改めて思うがほんとに俺犬だな。
相変わらずじりじりと照った太陽の元を歩く間、俺はまたそんなことを考えていた。いっそ笑美のペットですと名乗った方がいいのではないか?
いや、さすがにそれは笑美が引くし、何より俺自身が引いているから辞めよう。
何はともあれいよいよ武器作製だ。
とは言ってもフェイルが作業に入るのは明日からだけど。
作業は丸一日かかるようで今日は夕方に帰ってきたこともあり明日の作業に向けて準備をするのみとなった。
武器の完成待ちとなった俺は少なからずワクワクしながら新たに教えて貰った寝室に連れていってもらった。
けが人だったがゆえにあの部屋で過ごしていたがもう元気なので移動ということになったのだ。
部屋の方は狭いことを条件に1人部屋にしてもらったので(結果としてベッドで部屋の半分が取られてしまった)また夜をスキップできるだろう。
こちらの世界の夜も更けてきたので俺はそろそろログアウトすることにした。
「ラミア、よろしく頼む」
『はい』
相変わらず直ぐに返事が返ってきた。
本当に早い。電話で例えるなら3コールも経っていないぐらいの速さだ。
というかほとんど間髪挟まずに返ってくるので1コールも経っていないかもしれない。
そんなこんなで遠征?的なものは終了した。
翌日もこれまでと何ら変わらず俺はお昼すぎにログインした。最近これぐらいの習慣にログインするのが習慣となりつつある。
異世界での時間は7時頃だ。動けるようになるまでにラミアに聞いたから間違いないと思う。
ログインするやいなや俺はそうそうに俺の中で本日2度目となる朝食を取った。
その後、俺は昨日フェイルが作業すると紹介された部屋に向かった。
理由は簡単。お手伝いだ。特にやれることは無いと言われたが部屋で待っているよりマシだろう。
ワクワクして待ち遠しい時は他のことをして気を紛らわすのが1番なのだ。
騎士達とともに見回りに出てもいいが俺的には自分の武器作りに少しでも関与したかったということもあって今回はパスをした。
白龍物語では武器の作製は鍛治職の人がぱぱっとものの数秒で完成させてしまっていたので興味があったと言うのも理由の1つだ。
「お邪魔しまぁす」
そんなこんなで部屋の前まで来た俺は念の為おそるおそる扉を開けた。
だって、すごい重厚で圧迫感のある扉だったから…。少し
「おう。来たか坊主」
そんな思いは一瞬で杞憂となった。
「今日はよろしくお願いします」
俺はそう言いながら部屋を見回す。
部屋は 真っ赤な
フェイルは既に準備を始めているらしく魔鉱石が置かれていた。
「そういや坊主。ついでに防具も作りたいんだがご所望はあるか?」
準備を続けながらもフェイルは俺にそう言った。
「え?」
「もう1回聞くぞ、坊主。防具も作りたいんだがどんなのがいい?」
「あ、えーと、そうですね。で、出来れば軽装でお願いします。機動性というか俊敏さを損なわないようにしてもらいたいです」
フェイルがもう一度質問してくれたので俺はなんとか答えることが出来た。
元々、剣だけだったのに防具も作ってもらえるとか普通の男の子なら絶句すること間違いなしだろう。
まぁ、確かにそういった類に興味が無いやつとかは例外だろうけど自分だけの防具は男のロマンのひとつだと思う。
ちなみに他には『英雄になる』とか『どこかの国を征服する』とかだろう。あとは『スポーツカーに乗る』とかかな。
「まぁ、片手剣なら妥当か。分かった。動きやすさ重視だな」
フェイルはそう言うと早速作業に取り掛かった。
その後、途中、何度か休憩は挟んだが基本的にぶっとうしで作業が続けられた。
俺も雑用として少しは手伝ったが元々手伝えることが少なかったこともあり大半はフェイルの作業している姿を見ている感じだった。
それでもこういうところはあまり見ることが出来ないので全然退屈はしなかった。
そして、夕方。いよいよ俺の武器ができた。
「どうだ、いい剣だろ?」
フェイルはそう言いながら出来たての武器を俺に渡した。
出来たてだから熱いかなと思ったがそこまで熱くなくどちらかというと暖かいという感じだった。
「ありがとうございます」
正直俺には剣の善し悪しはわからなかったが(ゲーム内はステータスで見てました)お礼を言って受け取った。
どのくらい凄いかはまたラミアに教えてもらおう。
「もうそろそろ夕食か」
フェイルがそう言いながらこの部屋に設置されている時計を見た。
俺もつられてそれを見るともうそろそろ7時といったところで確かにもう少しで夕食だ。
「いくぞ」
そのまま時計を眺めているとフェイルは簡単に道具を片付け、部屋を出ていこうとしていた。
俺は遅れながらもそれについて行く。
俺が部屋から出たところでフェイルは部屋の鍵をかけた。
「後片付けは後でやるんですか?」
夕食へ向かう途中、俺はそんなことを
あまりにも簡単な片付けなのでつい気になってしまったのだ。
俺が部屋に入った時にはもうフェイルは準備をしていたからどんな感じで道具が整理されているかはわからないがフェイルは道具の管理をしっかりとやっていると思う。
なんかそんな雰囲気をフェイルから感じていた。
いや、だってほらアニメとかもそういうキャラって
「ああ、夕食の後すぐ防具作りに取り掛かろうと思ってな」
「ありがとうございます」
どうやらその通りでこのあとも作業するらしい。
しかも、俺の防具ときた。俺は条件反射的にお礼を言ってしまった。この場合はむしろそっちの方がいい気がするからいいけどね。
「でも、今からだと徹夜になるんじゃ…」
それと同時にそんな懸念を浮かんできた。
別に焦らず明日やってくれてもいいのに…。
「フランシェスからもうそろそろ攻勢にでたいと言われたもんでな。防具や武器を慣らす為にも早めがいいだろ?お前は寝てていいんだから気にすんな」
俺はそれと同時に頭を小突かれた。
フェイル的には「若造が生意気だぞ!」みたいな意味合いを含んでいるんだと思う。
「お願いします」
とりあえず、ここはお願いすることにした。なんかほんとにテンプレだなと感じるフェイルの性格なのであった。
そんなこんなでこちらでの一日が終わった。
俺はいつも通りラミアにお願いしてログアウトをする。
こちらにいた時間はざっと12時間と言ったところか。現実で言うなら4時間やそこらだ。
今日は1時頃にログインできたので長くいられたようだ。
次の日もいつもと変わらずお昼頃にログインした。
今日に関してはお昼頃に起床したおかげで昼食兼朝食が早めにすみ、昨日よりもさらに早い12時半頃にこちらに来れた。
たかが30分と思うかもしれないが向こうでは1時間半になるのでバカにはできない。
これからこのぐらいの時間に起きた方がいいのではないか?とも思ったが笑美にこっぴどく怒られそうだからやめておくことにした。
いつ来るかわかんないし。笑美なら俺の親から「いつでも来てちょうだい」みたいな感じからうちの鍵もってそうだしな。
ほんと、うちの両親はそういったところ寛容だから困る。これまで空き巣とか、詐欺に合わなかったのは奇跡だろう。まぁ、両親ともに
親から聞いた話だと家の鍵を見た事ないとかと言ったものもあるしね。
俺の方ははその影響を受けてかそういうのに用心するようになった。
閑話休題
ログインした俺はその足でフェイルの作業している鍛錬場みたいなところに向かった。
時刻は朝の8時でもうすぐ朝ごはんだ。
こちらの料理にもだいぶ慣れてきて美味しく感じるようになってきた(そもそもこのアバターの味覚はそういうふうなんだと思う)。
なので、2度目でもご飯の時間は俺の中で結構楽しみだ。
そんなことを考えているうちに目的の部屋の前まで来た。
俺は相変わらず威圧感のある扉を開けて中に入る。
「おお、坊主か」
扉を開ける時の重厚な音でフェイルも誰かはいってくるのがわかったらしい。
「おはようございます」
「防具なら出来てるぞ」
俺が来た理由は当然ながらフェイルにも直ぐに分かったらしく、そう言って部屋の端を指さした。
そこには1つ箱が置いてあり中には防具一式が入っていた。
「この防具も聖域のモンスターから作ってるから上物だ。これを持たせるなんざリーダーは相当お前の実力を買ってるな」
さも珍しそうにフェイルは言った。
俺が見た感じリーダーはそこまで厳しそうな人ではないように見えるがどうやらそうじゃないらしい。
この場合は長い付き合いのあるフェイルの言っていることの方が正しいだろう。
でも、それって神の使いとしてかなりの期待をされているか、一応よそ者だから優しく対応しているかのどちらかなのでは?
そんな疑問が浮かんでしまった。
優しいは優しいでも怒らないことが真の優しさではないと思う。むしろ厳しく指導すること事が真の優しさというものだ。
という感じに一瞬「ハブられている、もしくはとんでもなく期待されてのいるでは?」と思った俺だったがこれはリーダーの
世の中、いいように捉えた方が得だからね。ボジティブシンキング!
「とりあえず着てみてくれよ。細かな調整もしたいしな」
「あ、はい」
フェイルから言われたこともあって俺は早速防具をつけることにした。
俺は着たいと思っていたからたぶん言われなくても着ていた。
この衝動は新しいものを手に入れた時の早く使ってみたいというアレと同じものだ
防具は俺のお願い通り軽装なので比較的直ぐに着終わった。重さもそれほど重くなくあくまで体感だが2、3キロぐらいだと思う。
これなら俊敏性も損なうことは無いし俺の要望にかなったものだと感じた。
「どうだ?緩いところとか気になる所があったら言ってくれ」
フェイルはそう言っているが防具は俺の体にフィットしている。
いろいろ測ったわけではないのにこうもぴったりの大きさにできるのはフェイルの技術を悠然と語っていると思う。
むしろ少し不気味だ。
「ちょうどいいサイズです。動きにくいところも特にないですし………特に問題ないですね」
一応軽く動いて動きやすさの確認をしてから俺は問題ないと応えた。
「そうか。ならそのまま持って行ってくれ。あと、剣も忘れるなよ!リーダーには俺から伝えとくから外に出る準備はしとけよ」
「え、なんのことですか?」
俺がそういった時には扉が閉まっていた。
フェイルが「持って行ってくれ」と言ったので部屋をあとにしようとし始めたのが裏目に出たのかもしれない。
いや、これを裏目とは言わないか。
なんにせよ、俺は外に出る準備はしとけよ!の意味を考えることにした。
と言ってもこの時点でなんとなく
現実にフラグとかないからあってる自信ないけど一応異世界だからこれでいいはずだ。
適当な理論で納得した俺は朝食へ向かうことにした。
朝食取れないとか超ショックだもんな。うわぁ、寒過ぎ。
誰 も突っ込む人がいないので俺は自分でつっこんだ。なんかとても
その後、朝食を取り終えた俺は部屋に戻って荷物の準備を始めた。が、救急グッズと食料少ししか準備するものがないので一瞬で終わってしまった。
遠征するわけじゃないし 、身軽な方がいいからなすぐ終わってしまうのは当たり前だけど。
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