第14話 武器の作製は何かとワクワクする 3

 翌日は笑美とのお勉強会が朝早くから俺の部屋で開催された。

 笑美は「私の部屋でもいいよ?」と言われたが辞めておくことにした。いくら幼馴染みと言えど女子の部屋に行くのはさすがに気が引けた。

 そういうのは彼氏が出来たりするまで取っておくべきだろう。たぶん…。

 という訳で約半日勉強漬けだった。

 もちろん俺が一方的に教えてもらうだけだから笑美の宿題はほとんど進まなかった。

 進行状況はかなり頑張ったかいもあって3分の1はできたと思う。

 基本問題ならなんとかなるのだが宿題は何かとひねった問題が多くそこで時間がかかった。さすが進学校だ。

 なんにせよ笑美には感謝である母親もそう思ったらしく笑美に手土産を渡していた。

確かこのあと部活とか言っていたからほんとに迷惑をかけた気しかしない

 その後は少し異世界にログインした。

 息抜きも兼ねて夜になるまで時間を潰した。

 一見やることがなく暇だっただろと思われそうだが久しぶりに長時間頭をフル稼働させた俺はいくらでもぼーっとしていられたので特に退屈はしなかった。

 普段からゲームをしている俺は1日2時間が頭をフル稼働できる限界なのだ。

 なので4時間以上フル稼働させていた今日は余裕で俺の許容量を超えていた。

 これで明日は朝から始められるだろう。


 翌朝、眩しい日差しが窓から射し込む。

 どうやら昨夜はカーテンを閉め忘れたようだ。それでも俺の睡魔が勝ったらしくお昼頃まで寝ていた。

 たぶん、昨日の影響だろう。

 やっぱり急に無理をするのはあまり良くない。無理をしていいのは長期休業の最終日とテスト週間だけだと思いました。

 それはさておき俺はいつもより長く寝たことで少しだるいからだを動かしながらリビングに行った。

 当然、親はもう仕事だ。

 俺は冷蔵庫に作り置きされているもので朝食兼昼食をとった。

 その後はすぐにログインだ。


「今日から移動かぁー」

 ログイン後はラミアに魔法を解いてもらっている間、俺はそんなことを考えていた。

 確かに新しい武器を手に入れるのはワクワクするよ。でもね、移動が2、3日って言うのはさすがに萎えてしまう。

『動かしますね』

 その一言ともに世界は再び動き始めた。

 時刻は朝の7時だ。昨日より少し進めてくれているのは昨日の暇していた時間を考慮に入れてくれたからだろう。

ナイス気配りである。

 この後は念のために荷物の中身を再確認したあと朝食を取って拠点の入口まで来た。

 旅のメンバーは俺、リーダー、フランシェスの少数精鋭だ。

 オークのことを考えたらこの要塞?の守備をするのには妥当と言えるだろう。

 それよりも俺はフランシェスが来ていいのかと感じていたがそっちの方は自ら危険に立ち向かえる人というか立ち向かう人なので大丈夫なのだそうだ。

 それに1度行くと言ったら変えない人だとリーダーが言っていた。

 そんな少し頑固なフランシェスである。

 とにかく午前のうちに俺達は馬車に乗って数人の騎士に見送られながら出発した。


 ここから数日間は異世界へログインしては本を読むなり、景色を見るなり、小さな声でラミアと話すなり、魔法についてラミアから教えてもらうなりして過ごしていた。

 フランシェスやリーダーとは話さないのか?とお思いだろうが移動中はフランシェスは少しでも早く目的地に着くために馬をぎょするのに集中していたし、リーダーも周囲の見張りで話しかけれそうな雰囲気ではなかったのだ。

 もちろん、馬を休めるために休憩する時や、寝る前などは談笑していたが基本喋らなかった。というか俺が喋りかけれなかった。

 そんなこんなで今日が4日目当たりであろうか、この世界で見ると3日目と言ったところなので今日到着予定だ。

 明日1日かけてモンスターを倒し、翌日に帰還すると初日にフランシェスから聞いた。

 風景はただ森があるのみでほかには何も無い。

 最初の方は荒らされていたが進むにつれそんな形跡はほとんど見られなくなった。

 この付近には街がないとラミアが言っていたから侵略もここまではおよんでいないのだろう。


「もうすぐ着きますよ」

 太陽が真上に届きそうな頃フランシェスがそう言った。

「どこら辺なんだ?」

 ただ、特に変わった景色は前方には見受けられなかったので俺にはわからなかった。

「景色はここら辺とあんまり変わらないからな。でも、目的の場所に入れば輝人君でも分かるはずだ」

 リーダーがそう補足を入れてくれる。

 どうやら入ってみないとわからないらしい。

「フランシェスはなんで分かるんですか?」

ならばなぜフランシェスは分かるのだろう?という疑問が俺の頭に浮かんできた。

そういったところまで気になる俺の精神年齢はたぶん3歳だ。

「全ての国の王族は神聖な力を見る魔法適性があり、それを使えるよう訓練されているんだ」

 俺の質問にはリーダーが答えてくれた。

つまりは王族達が持つスキルみたいなものなんだと思う。

ならフランシェスが来るのも納得だ。でも、リーダーはあまり来て欲しくなさそうだったからリーダーも使えるのだろう。

 そんなことを考えている間に馬車が止まった。

「ここからは歩いて入りましょう」

 フランシェスはそう言った。

「ラミア、なんで馬車から降りるんだ?」

『この世界ではこういった神聖な地域に足を踏み入れる時は歩いてはいるという作法が存在しています。わたし的にはそんな事しなくてもいいんですけどね』

 それなりな理由がありそうだったからラミアに聞いてみると意外な答えが返ってきた。

 なんか、崇められている神様がそんなこと言っちゃいけない気がする。

 そんなことを思いながらも俺とリーダーはフランシェスの後に続いて道を進んだ。

「うぉ!」

 少し進むと俺はそんな声を出してしまった。

 理由はさっきリーダーに言われた通り雰囲気が変わったからだ。

 風景は何一つ変わっていないが俺には別世界のように感じられた。



「ここら辺が宜しいのではないでしょうか?」

「そうですね」

 森の中に入って少しスペースがあるところで俺達は立ち止まった。

 どうやらここが今日の寝床になるらしい。

「テントを出してくれ」

「分かりました」

 リーダーにそう指示されテントを含め道具一式が入れられているバックを開けた。

 これは馬車を森の入口に待たせておくときに渡されたものだ。

 この後は手馴れた感じでリーダーとフランシェスがテントを立てていった。俺の方はと言うとキャンプ経験がないので(そもそもテントの形が違うからどっちにしろ無理だけど)ふちで見守ることに徹していた。ちなみにこの旅では毎回こんな感じである

 そして、ひとしきり準備が終わった頃には日が傾き始めていた。

 時計がなかったから分からなかったが結構な時間がたっていたようだ。

 その後は明日に備えて夕食を作ってすぐ寝ることになった。

 もちろん、リーダーは見張りとしておきている。

 何もやらない。正確には何も出来ない。のはさすがにきつかったので見張りは途中から俺に代わってもらえることになった。

 見張りまで寝てもよかったがログアウトしなければいけない時間になってきたので一旦中断してラミアにログアウトをお願いした。



 翌日、お昼後に俺は再びログインをした。

 現実ではさっきまで寝ていたはずなのだがアバターの方も疲れがあるらしく俺は直ぐに眠りにつけた。

 数時間後、すっかり朝になった。なんかとても変な気分だ。それとは関係なく体の方は快調だった。

 いよいよ今日はモンスターを倒しに行く日だ。

 と言っても今回戦うのは主にリーダーなんだけどね。

 それはさておき昨夜は当然、自分では起きれずにリーダーに起こしてもらって眠い中見張りをしていた。

 テントを張ったりする際にフランシェスが周囲に魔物避けの結界を張っていたからそれでも特に問題はなかい。

 むしろ、その分、眠かった。当然やることもないから結局朝までラミアから魔法に関する知識について教えて貰っていた。

 まぁ、一気に言われたのと眠かったのとであんまり頭に残ってないんだけどね。

 そんなこんなでいよいよ出発の時間となった。俺たちは荷物をまとめると早速探索に出かけた。

 なお、ここにはもう戻らないので荷物一式は武器がないために戦えない俺が持っている。今更かもしれないが荷物をしまうのに便利な異空間収納とかが欲しい。

前にもそんなことを思ったが上級魔法なのでエルフとかじゃないと使えないらしいので諦めた。

今回もそれは理解しているので俺はそうそうに諦めた。

 モンスターの方はというと案外すぐに見つかった。

 というかいろんなモンスターが各地をうろついていた。

 あいにく先程見つけたモンスターは目的のモンスターじゃないので今はしげみに隠れてやりすごしている。

 もちろん、戦ってもいいんだがそれだと日が暮れてしまうらしい。

 今日一日で終わらせる予定なので体力の温存も兼ねてできるだけやり過ごすとリーダーから聞いた。

 この後も何回かそんな感じでモンスターをやり過ごした。

「あれだな」

 そして、とうとう目的のモンスターを見つけたようだ。

「援護に回りますね」

「お願いします」

 リーダーはフランシェスと少し言葉を交わしたあと目的のモンスターの方へ向かった。

 ちなみに、そのモンスターは言ってしまえばドラゴンだった。正確にはセル○ギオスみたいな感じだと思う。

 俺は特にやることがないのでとりあえず荷物を置いた。

 もしこちらに別のモンスターが来たらすぐ相手できるようにという理由からだ。

 まぁ、実際のところ荷物が少し重いからおろして休憩したいだけなんだけど…。

 それからは周りを注視しながらもリーダーの戦う姿を見ていた。

 俺とフランシェスのいる所は周りからは見えずらいのでリーダーの戦いを見ていても問題なかい。

 リーダーはというとそのモンスターの攻撃を上手く避けながらダメージを与えていた。

 この前言っていたスピード強化のスキルを使っているのだろう。動きがとても機敏だ。少し残像も見える。

 ただ、モンスターの鱗も硬いらしく一撃一撃が致命傷とはなっていない。

 これは時間がかかるだろう。

 フランシェスの援護はダメージを負った際に回復してくれるものだし…。

 見ているだけで申し訳ないがどうか頑張って欲しい。

 パキパキパキ

 そんな悠長なことを考えていると後ろから枝の折れる音がした。

 念の為フランシェスの方を見てみるが足元には木の枝はないので違うようだ。

 そのまま後ろを見るとリーダーと戦っているモンスターとはまた別のモンスターがいた。それもかなり近い距離にだ。

 見た目はトカゲみたいで緑色をしている。

 大きさは全長が5mほどだろうか?高さも2mぐらいでモンスターの中では小さい方だ。

 まぁ、それでも俺達には十分に脅威となる大きさだけど…。

 そこまで考えてそんなことを考えている場合ではないと思い俺は走り出した。

 フランシェスの方も既に逃げ始めているので問題ないだろうと思ったがあいにくモンスターはフランシェスの方を追いかけてしまう。

 フランシェスは魔法を使えるがそれは治癒魔法専門だ。その他の魔法にしてもそれなりの準備がいるものだし、結界とかサポート的なものばかりだ。

 やばいと思った俺は足元の枝を拾いモンスターめがけて投げた。

 もちろんそのままでは聞かないので表面を魔粒子で固くする1番簡単な強化の魔法をかけている。

 おかげでモンスターはこちらを向いてくれた。

 あれ、待てよ。これ俺が狙われるんじゃね?

 モンスターが俺を追い始めてから俺はそのことに気づいた。

 よく考えると今の俺は武器を持っていないので戦う手段がない。

 よって取り得る行動は1つ、逃げるだけだ。

 なので俺は全力で走り出した。

 一応先程のように攻撃してもいいがあまり効いているようには見えないので無駄だろう。

 モンスターもこちらを追ってくるがそこまで速度がないのが救いだ。

 とは言ってもそれなりに頑張って走らなければならないのできつい。

 このまま何分か走り続けた。このアバターに体力があってくれたからよかったがさすがにきつい。

 途中何度か攻撃がかすったがフランシェスの治癒魔法で治っている。

 ドゴォン、俺の後ろでそう音がした。

 気になって振り返るとリーダーがモンスターに一撃食らわせていた。

 皮膚はそこまで硬くないのか血を流しながらモンスターは暴れていた。

 その隙を逃さずリーダーは攻撃を続け、ものの数分でモンスターを倒してしまった。

 一応、この世界を救いに来ているのだが面目がない。

 まぁ、気絶して足を引っ張った時点で面目も何も無くなってるんですけど…。

「大丈夫ですか?」

 リーダーがモンスターを倒して直ぐにフランシェスが来た。

「治癒魔法のおかげで傷はないよ」

「良かったです」

 俺が無事を告げるとフランシェスは安堵したようだ。

 俺がおとりをしたことに多少なりとも後ろめたさがあるのかもしれない。

「災難だったな」

 モンスターが完全にやられたことを確認してからリーダーも来た。

 リーダーの方はこちらをあまり心配していないらしい。

 正直そっちの方が立場としては少しありがたかった。

 この後は、目当てのモンスターの方を運べる大きさに切って馬車にのせた。

 帰る時になって知ったことだが目当てのモンスターはマジカエルドラゴと言うらしい。

 マジカエルとか「まじ帰る」みたいでどこぞのギャルみたいだ。

 俺が追いかけられた方はラケルタというのだそうだ。

 マジカエルドラゴの方がカッコイイのだが名前で言うならラケルタの方がかっこよかった。というかラケルタは完全に名前負けしていた。

 こうして、目的を終えた俺達は帰路についた。


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