第6話 異世界で出会うヒロインは基本可愛い 2

 とりあえず安全は確保されたっぽいからさっきので浮かんだ疑問を含め全て聞いていこう。

「まずなんだが仮想空間ってなんだ?」

「あ、それは神がいる場所です。正確には下界を見守る神が生活しているところですね」

「ふむ」

 これでここがどこなのかはわかった。

 正直言って女神とかの時点いや、そもそも仮想空間とかと言われたところからゲームで使われていること以外理解などできていないがもうこの際そういうことで片付けた方がいいだろう。

 死後という可能性はアイコンとか出てくる時点でない。仮に現実の方が死んで意識だけがなんとか残ってみたいな場合はまぁ、まずありえないな。死んだら脳の機能が停止していくからここにはいられない。

 だから少なくとも生きてはいるのだろう。

 気を取り直して次の質問にいく。

「で、さっき俺がここにきたのがラミアのせいとかいってたけどそれどういう事?」

「これはお願いごとの件と重なるのでよく聞いていて欲しいんですけど」

 ラミアは再び居心地悪そうにしながらもそう答えた。

「わかった」

「まず私は輝人さんのいる世界とは別の世界いわゆる異世界を見守る女神なんですよね」

「異世界云々はよく分からんが続けてくれ」

 この時点で俺が理解できたかを気にしてラミアはこちらを見た。

 当然理解出来てないが俺は続きを促す。

 ここまでの俺の感想は現実にも異世界は存在するんだ!だ。もう、スケールでかくてそんな単純な感想しか出てこない。

「それでその世界は私がいろんな種族を生み出してできた世界なんですけど。魔界 、輝人さんの世界で言う地獄の人達が私の見守る地上を侵略しはじめてですね。いや、でもこれがはじめてじゃなくてかなり前にも同じことがあってその時は地上の種族達が団結して何とかなったんですけど今回は魔界が戦力を強化してきた上に地上の1部の種族を引き込んでしまいまして軽く壊滅状態にあるんですね。それで輝人さんに救援を頼みたいという訳です」

 少し長かったが要約するとラミアの見守る世界が魔界の侵攻で壊滅しそうだから助けとくれと言うことだろう。

「うん。そこに関しては何となくわかった」

 俺はこれを現実ではありえないという前提を無くすことで理解した。まぁ、ラノベの世界に入り込んだ!みたいなノリだ。

 ラミアも理解したという俺を見て安心したようだ。

「その上で質問する。ラミアが何とかする。じゃダメなのか?」

 女神という事は要は神様だろ。それなら神様権限みたいな感じでどうとでも出来るはずだ。

「それは無理です。神は基本傍観を主としていまして神様同士のルールで直接手を加えるのは禁止されているんです。多分それは輝人さんの世界と同じだと思いますが」

「ああ。納得した」

 確かに神様が直接手をくだすなんて現実ではありえない。

 そも神様現実にいるの?という疑問はこの際、無視しよう。

「神様にもいざという時は自分の作った種族に対して行動を強制などといったことは認められるんですけど魔界は私の管轄外でしてどうにも出来ないんですよね」

「ああ」

 要は身内内みうちないならなんとかできるが部外者に対してはどうすることも出来ないという事だ。

「神様のルールで何とかならないのか?」

「はい。魔界を作ったコラープスは病気がちでして今の状態ではどうにも出来ないんですよね。あはははは」

 ラミアはもう笑うしかないみたいな感じだった。でも、目は全く笑っていなかった。

「それでそれと俺がここにいるのがどう関係するんだ? 」

 神様も神様で色々大変らしいがここはひとまず話を進めよう。

 俺は後でラミアの愚痴ぐちを聞いてやろうと思った。

「それで神様として面目ないんですが八方塞がりなんですよね。そこで私は輝人さんのいる世界から誰か選んで助けてもらおうと思ったんです」

「それが俺なのか?」

「そうです」

 希望あふれるというか期待に満ちた目でラミアはこちらを見てきた。

 どうやら俺はいわゆる勇者というものに選ばれたらしい。

 うわぁー嬉しいな(棒)

「それでどうして俺になったんだ?」

「それは輝人さんの世界と私の見守る世界は違うんですよね」

「いや、俺それわからないんだけど」

「魔法がこちらにしかなかったりして色々違うんですね」

 どうやらこの世界、正確にはラミアが治める世界には魔法があるらしい。一体どういう原理なんだろうか?いや、気になるけどラミアに聞くと根本のところから難しい説明をしそうだし、話を完全に脱線させるからいいや。

「うん。そうなんだな」

「なので1番この世界に近いものを探していた時にMMOを見つけたんです。これなら行けるって私、張り切ってしまいまして1番大きいゲームですごく難しいクエスト貼ってクリアした人をここに召喚することにしたんです。ただ難くしすぎたことに少しあとに気付きまして・・・誰も一向にクリアできなさそうだったんですよね」

 通りでいくつかチート級の攻撃があったわけだ。まぁ、絶対無理までの難易度ではなかったからいいけど。

「それが俺なんだな」

 つまり、それをクリアした俺は期待の星という訳だ。

「はい。もう誰も来ないだろうと諦めきっていたので最初は驚きましたが今は嬉しいです」

 そう言うと共にラミアは報われたと言わんばかりの笑顔を浮かべた。

 まだ、ラミアの世界(めんどくさいからそう認識する)が救われたわけじゃないからその表情はいささか早いと思うがここで言うのは野暮だろう。

「あ、でもさ。こちらの世界のゲームに干渉するのって神様のルールでありなの?」

 手を出せない云々といった。俺の中でめんどくさいイメージの神様のルールに則っているんだろうか?こちらだとサイバー系の罪に問われるのは確実だ。

 ラミアに現実を改めて認識してもらうためにも俺はそんな質問をぶつける。

 そう考えると神様も意外と大変らしい。

「それは大丈夫です。そちらの世界の神様に事情話して許可もらいましたから」

「運営側には許可とるとかしてないんだな」

 どうりで無理矢理なはずだ。魔法とゲームではそもが違うからそのしわ寄せがあれなんだろう。

「あと、それって手をくだすことにならないの?」

「私はあくまで助っ人を送り込むだけですので大丈夫です」

 かなりグレーな気もするがラミアも相当追い詰められているんだろう。

 まぁ、それよりもその世界にいる人たちの方が追い詰められてるだろうけど。

「まぁ、事情はだいたいわかった」

 俺は話の内容はわかったという意味でそう答えた。そう、あくまで話の内容だ。所々思っている事だがこれに対して現実味を一切感じていない。なぜなら根本的なところが現実と違うからだ。

 ラノベとかアニメの異世界転移だと主人公こういうのをすんなり受け入れているが実際なると何言ってるの?どういうこと?以前に思考自体が停止する。

 俺がなぜ話を理解するだけの思考力があったというとたまたまだ。なんか夢だとこういう有り得ないことに納得してしまうことがあるだろう。そんな感じだ。

「あのぉ、それでなんですけど」

 俺は長いこと考え事をしているらしくそれを心配したのかラミアが大きめの声で話しかけてきた。

 俺は意識を現実に戻す。

「ああ、すまん。それでなんだ」

「ここまでの話の流れで何となく分かったかもしれませんがここからが本題です」

 何お願いされるかはもうほとんど分かっているのだが俺は何故か固唾かたずを飲んだ。

「今さっき話した異世界を救ってもらえませんか?」

「うん。助けたいのは山々なんだけどコレ流れでOKに出来ないんだよな」

 お願いの内容は予想通りだった。さすが俺の推理力。いや、ここまで情報あったらそのまま言ってるのと変わらないかぁ。

 1人でボケて突っ込むのはここまでにしておいて、さっきの願いは簡単には承諾できない。細かいことの説明が足りてないから怪しい宗教の勧誘とさして変わらない信用度だ。

「あ、そうでしたよね。転送だと輝人さんの世界で色々と不備がありますよね。でも、大丈夫です。そこは考えてありますから」

「なら、ひとまず聞かせてくれ」

 どうやらそこら辺はラミアに考えがあるらしい。自分の世界がピンチにも関わらず手厚い対応をするのはここ数日が暇だった故だからか。

「はい。現実の方で姿を消すのが1番の問題点なのでこちらでアバターを創りましてそちらに中身の方つまり、精神とかを入れるといった感じを考えています。これで現実との両立も可能ですからある程度の障害は取り除かれるはずです。それにそれならもし輝人さんがこちらの世界で死亡しても現実には影響を及ぼしません」

 なんか言い方が大手電機メーカーにいる店員みたいだった。

 それにしても人を創ると言えるあたり神様だなと感じる。精神を入れるとかっていう発言も神様ならではといったものだろう。

 こうやって色々考えてみると異世界転移なんていうのは現実に混乱を産むものだということが分かる。

 転生ならまだいくらか何とかなる(あると考えた前提でだ)がリ○ロなんて主人公のお母さんはパニックを起こしていることだろう。

 それとなんだがやっぱり死ぬといったことは有り得るようだ。でも、ラミアは現実には影響を及ぼさないと言っているし大丈夫だな。でも、こう思う時点で俺は怪しい勧誘を引き受けてるんだよなぁ。

「どうですか?」

 思考に割いていた意識を現実の方に戻すとラミアが不安げにこちらを見ていた。

 こちらが返答を返さないから了承してもらえるか不安になったんだろう。

「まぁ、現実的ではあるな。それなら何とかなるかもしれない」

 この調子だと他のところの対策もしっかりこうじられているのだろう。

 実際引き受けるかどうかは別として俺はそこを聞いてみることにした。

「そのうえでなんだけど、細かいところ色々聞いて構わないか?」

「はい。全然いいですよ」

 ラミアはそれを快くOKしてくれた。

 頑張って考えた対策が現実的ではあると俺が認めたのが嬉しかったのかもしれない。

「まず、これは確認なんだが了承したら俺はゲームにダイブしようとすると代わりにここに来るってことでいいのか?」

「正確には私の見守っている世界の輝人さんが一旦抜けた場所ですね。ここへはたぶん来ないと思います」

 これで俺はゲームをやろうとすると異世界の方へ転移されるということがわかった。

「で、そこで何だが俺が抜けるつまり、コンティニューしたりとかしてもラミアの世界は動き続けるだろ。それはどうするんだ?」

「あ、それは神様権限で時間止めますからお構いなく」

 そこそこぶっ飛んだ答えが帰ってきた。まぁ、でもそれで一応問題の解決にはなっているからいいんだけど。

「それが出来るなら魔界の人たちだけ停めれば良くない?それに魔界の人たちまで時間停めれるの?」

「時間停止に関しては世界全体の時間停止の許可が議会で認められたので大丈夫です。魔界の人達だけ時間停止することに関してはそこまで細かいことは出来ないんです。そもそも時間を止めること自体が世界の法則をねじまげてますし、空気だけとか一部の種族だけとかといった指定は難しすぎて無理なんですよ。例えるなら50メートルほど離れたご飯粒に吹き矢を当てる感じでしょうか?」

「なんで吹き矢?」

「私、吹き矢をするのが趣味のひとつなので…」

 とりあえずとても難しいということは伝わったから問題ないか。

 強大すぎる力もそこまで便利ではないようだ。それにそれが出来るならもうラミアはやっているだろう。

「最後になんだけどさ。異世界行ってる間俺は死なないの?」

「はい。死にません」

 最後の質問にラミアは自信を持って答えた。

「あくまで魂とか精神とかいった非物質の類を移し替えるだけですので心臓などといった臓器、脳を含めまして活動はそのまま継続して行われます。それでも万が一の可能性はぬぐえませんから私が一応監視もします。なので大丈夫です」

 どうやらそこも完璧に詰めているようだ。ラノベとかといった本での異世界転移に比べ随分現実的だなと感じていた。

 現実にはありえない事だとしてももう実際に有り得てしまっているからそこら辺はもう諦めている。

「まぁ、詳しいことはよくわかんないけどとりあえず大丈夫ってことだな」

「はい」

 ラミアは再び自信のこもった返事を返した。詳しい原理どうこうは一切わからないけどここまで自信のこもる返事をされると何となくで納得していまう。

「それで可能ですか?」

 今度は一転ラミアは不安げな表情でこちらを見る。

 感情が顔に出るタイプらしい。表情が次から次へとコロコロ変わっていく。

「少し考えさせてくれ」

 お願いに関して俺はひとまず保留にしてもらうことにした。

 とりあえずここまでの情報を精査してその上で判断したい。世界が危ういのなら立ち上がるべきなのだろうが実感をもてていない俺には自分の安全や興味などといったものの次に位置する重要度だった。

「そうですよね。輝人さんにも色々と事情があるでしょうし・・・簡単には決められませんよね」

 ラミアはそれに声では快く了解してくれた。表情には不安も混じっているがそれでも笑おうとしてくれている。

 こんな表情をされると断りづらい。ただでさえ友達がおらず頼られることがない俺にとってはお願いされた時点から二つ返事で了解したかった。ラミア普通に可愛いし。

 内容がぶっ飛んでいるのは分かっているがそれでもどうにかしてあげたい。性格にはかっこつけたいのだ。

 ちなみにだが俺が友達いないから話すのが苦手かというと決してそんなことはない。ゲーム内だからという理由もあるが普通の会話ならできる。現実だと可愛い子に話しかけられたら緊張するんだがここゲーム内だからそれは通用しない。

「まぁ、立って考えるのもなんでしょうしイス持ってきますね。飲み物は紅茶しかないですが大丈夫ですか?」

「うん。全然構わないよ」

 俺がそう返事をするとラミアは建物の中へ入っていった。

 少しするとラミアはイスを持ってきてそれを自分が座っていたイスとテーブルを挟んで反対側に置いた。とその後すぐにテーブルの上のティーポットをもって再び建物のなかえ戻っていく。

 俺はありがたくイスに座らせてもらい現状を整理するために意識を考え事の方に割いて行った。


「どうですか?」

 どのくらいたったかは分からないがラミアに声をかけられて俺は意識を現実に戻す。

 目の前には湯気がたっている紅茶がラミアの使っているカップとは違う形の白いカップに注がれて俺の前に置いてあった。

 テーブルの中央にはこれまた白いお皿にクッキーがのせられていた。もうこれはティータイムだ。

「まぁ、何とかなりそうかな」

 俺はラミアの問いに現状での考えを言った。

「本当ですか!あ、紅茶の方今回は結構自信があるので飲んでみてください」

 それに伴いラミアの表情はパッと明るくなる。

 俺はとりあえずラミアの入れてくれた紅茶を一口飲んだ。

 うん、確かに美味しい。自分で自信があると言うだけあって結構美味しかった。

 紅茶の善し悪しがわかる舌は持ち合わせていないがそれでも美味しいと思えるものだった。

 もう一口頂いたあと俺は現状の説明を始めた。

「まぁ、なんだ。色々な問題点とかはラミアの考えでどうにかなるだろうとは思えたからあとは俺の力量の問題だな。俺はニートだし、世界を救うにしては色々足りないと思う」

 まぁ、実際言うと問題点はそこぐらいなので思考の八割は現状を把握するために使った感じだ。こちらの方も色々常識と折り合いをつけることで大体はどうにかなった。現実感はわいてないんだけどな。

 と言った感じで目下の問題は俺の力量だ。魔界の奴らがどれほど強いかは分からないが単騎たんきで突っ込んで勝てることはまずありえない。残っている種族を率いて戦うにしても俺にはその統率をとれる力がない。いや、そもそもどこから来たのかよくわからないやつに従おうなんて奴はほぼいないだろう。

「あのぉー、その点に関して1つ説明し忘れていたことがあるんですけど…」

「なんだ?」

「こちらの世界用に創る肉体に関してなんですが輝人さんのアバターのステータスを元にして創るので運動能力とかはあまり考える必要がないと思います」

「あ、そうなの!」

 それなら力量の問題も少しはどうにかできるだろう。ステがゲームと同じならそれと同じ要領で動けるし。

 問題は俺のコミュ力と統率力か。

「あと、地上にはついていけませんが輝人さんの脳内に話しかけることでの意思疎通は可能ですので多少のアドバイスなら出来ますよ」

「異世界転移(正確には違うけど)も意外とやりやすくなるんだな」

 俺はここまでオプションがしっかりしているのかと感嘆した。

 ラノベとかだとそういう前置きって無いのが多いからより感じる。それにすぐ適応する主人公もどうかと思うけど。生存本能が高い人が異世界転生もしくは転移の主人公と言っても過言では無いと思う。

「それでどうですか?」

「これなら多分いけると思う。あ、あくまで行けるということであって救えるという保証はないからな」

 俺が行けると思うと言ったあたりで救われたといった感じの笑顔にラミアがなったので俺は一応念を押す。

 そう。あくまで挑戦ができるだけだ。

 正直できる気しないがこんな可愛い女神様を再び落胆させたくはないので異世界の人達が有利な形勢になれるようにはしたい。

「出来るだけのことをしてくれればそれで十分です。万が一の時は私がどうにかしますのでそこまで気にしないでください」

「ああ。わかったよ」

 とりあえず俺はできる限りの力を注ぐことにした。現実との両立は正直どうなるか分からないが大丈夫だろう。

「そう言えばですが輝人さんの世界とこちらとでは時間の流れが少し違うんですよ。視界の隅に輝人さんの世界での時間を表示しますがそちらの1時間がこちらの3時間であるということは一応覚えておいてください」

「うん」

 これはありがたいかもしれない。1日5時間やれば向こうでは15時間進むのだ。これなら戦闘が長時間になってもある程度ならやっていける。

 これが逆だったら何年かかるだろうか?来年は大学受験をまじかにしていて流石の俺もゲームは出来ないだろうからリミットは1年だ。

 一応言っとくが俺は勉強はそこそこ出来る方だ。家では基本ゲームばかりだけど試験前ぐらいはちゃんと勉強するし点数もほぼ平均点+10点と意外と高い方なはずだ。

 話を戻すが時間の進み具合に違いがあってくれるお陰でやりやすくなったというのは嬉しいことである。

「あの、クッキーもぜひ食べてください。自分で作ったものではありませんが神様の界隈かいわいでそれなりの評価があるものなので美味しいと思います」

「じゃあ、有難くいただくよ」

 そう言って俺はテーブル中央のクッキーに手を伸ばして1つクッキーをとる。

 サクッ

 1口食べると同時にそう子気味良い音が鳴った。神様の間で好評だけあって味もかなりのものだった。

 普段からとても美味しいものは食べていないので細かい味は分からないがそんな庶民な俺でも高い値段のものと思えるものだった。

 こんな美味しいものを貰っていいのか?という疑問がそれと共に浮上してくるがラミアがお願いしてきたのだからここは食べるべきなんだろう。

 少し気は引けたものの俺はそう思って次のクッキーに手を伸ばした。

 それを見てラミアも安心したらしく自分の分を手に取る。

 そこからしばし緩やかな時間が流れた。周りに森とかは当然ないが美味しい紅茶とクッキーで俺の心は安らいでいた。

 これから異世界を救わないといけないのにそんな風でいられるとは俺もなかなか肝が据わっている。

「それではこちらの世界に行くにあたりまして現状などといった情報を詳しく説明していこうと思うんですがいいですか?」

 自分のカップに入っていた紅茶を飲み干してラミアはそう切り出してきた。

「ああ。ほんとに助かる」

 俺もそれをお願いする。

 異世界の現状を知ることはこれから重要だろう。どんなことを知っていればいいかはわからないが情報が多いに越したことはない。

 ラミアには一応質問できるがある程度の知識があった方がスムーズに進めれるのは当然だろう。

 こんなに色々してもらえるなんてほんとに踏んだり蹴ったりである。おっと、致せり尽くせりだった。

「それでは準備しますね」

 ラミアはそういうとティーポットをもって家の中に入っていった。

ついさっき紅茶を入れ直しに行った気がするが俺の考え事の時間が長かったのだろうか?まぁ、ここは予想より会話が長引きあえて少なめにしたのが裏目に出たとかそんな理由にしておこう。

 

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