第4話 ゲームにバグはつきもの 4
ヴオオオオオ
再び雷龍の鳴き声が広場に轟いた。それに合わせてさっきと同じように黒雲が活発になっていく。
少したっていくつかの場所が青白く光る。
俺の周りにも何ヶ所か同じところがあった。というか俺の足元から青白い光がでる。
俺は咄嗟に範囲の外に出た。そのすぐ後にさっきいた場所に雷が落ちる。
次々光っていく地面を頼りに俺は雷をどんどん避けていった。
雷が降り注ぐようになって少し経つと雷龍は再び攻撃の準備をはじめる。
俺は雷に気を使いながらも前足に電気を集めた雷竜の突撃を横に跳んで回避する。
最初は距離があったからいいものの次はどうしようかと着地して、そのまま距離をとるように跳び続けながら俺は頭をフル回転させた。
外したとわかった雷龍はすぐに俺に標準を合わせ直すと再び突撃してくる。
雷龍が地面を砕いたところで雷竜の方を向きながら距離をとっていた 俺は突撃してくる瞬間、移動する方向を後ろから斜め前に変えた。
ドゴォン、バリバリバリバリ
直後、雷龍の攻撃が不発に終わる。
放電の範囲をギリギリ抜けれていた俺は次に備えてまた距離をとる。
走る方向をほぼ真逆にすればかなりの速さで突撃してくる雷龍は方向転換しても止まれずラグがあくから逃げれるとの判断は当たったようだ。
同じ攻撃が何回も続く。
雷にも気をつけなければならず思うように動けていない俺は仕方なく神速でその場を防ぐ。
今ので覚醒の最大出力を放てるギリギリのMPになっただろう。
実際に距離をとって神速を解除してから確認するともうほかのスキルを使える程のMPは残っていなかった。
今度は 雷の咆哮が襲いかかってきた。
俺は体のバネをめいっぱい使って、発射にタイミングを合わせて斜め上に跳んだ。
横に薙ぎ払う感じで放たれた咆哮が俺のギリギリ下を通っていく。
放電の威力が体から近かったぶん強くなったがHPは半分は確実に残っているので大丈夫だ。
と着地する予定の手前の場所の地面が青白く光った。
光ってから雷が落ちるまで少し時間があるが光りはじめてから飛び込んだら確実に当たるだろう。
バチバチバチバチ
俺はなんとか身をよじらせて掠める程度にしたのだが、かみなり攻撃の威力が上昇する状態異常になっていたので放電が起こった。
そのまま重力に従い地面に叩きつけられるところだったが俺は体勢を立て直してなんとか着地した。
服が軽く焦げている。いくらゲームの中とはいえこういったオプションはある。
実際失敗したやつらの服ボロボロだったし。それを見ればその事実は明白だ。
体の方はさすがに焦げはしていなかったがすすが付いていた。
ドゴォン
そんな俺の隙を雷龍が見逃してくれるはずもなく、今度は全身に雷を纏わせて突撃してきた。
あいにくこのゲームに痛覚はないので(ダメージの大きさでその後、体が動きづらくなったりはするが)少し重い体を精一杯動かして回避する。
バゴォーン
素早く反応したこともあり回避出来たが突撃時の風圧で飛ばされた。
放電はくらう覚悟だったが とばされたおかげで当たらなかった。
が体勢をどうにかする時間もなかった俺はゴロゴロと地面を転がった。運のいいことに転がっていることに雷が落ちなかったのでダメージはほぼない。
転がる勢いで立ち上がった俺は放電を終えた雷龍の方を向く。
雷は今も落ちているので動きながらだが。
ドゴォン
また俺の方へ雷龍が突撃してくる。雷は溜めていないが放電の余韻で充分な電気量があるのでさしてさっきと変わらない。
俺はくると思った瞬間、回避行動に出る。
体はまだ重いので再び風圧で飛ばされそのまま地面を転がった。
起き上がったところで視界に溜め完了のアイコンがでた。
どうやら耐久戦はここまでのようだ。最大出力で放てばMPが無くなるという
実際、外したら負け確定なので緊張はするがゲームだから生死には直結しない。他のプレイヤーがクリアしてしまうかもしれないがクエストが出来なくなるわけじゃない。
俺はそう思おうとした。ゲームをやったことがある人にはわかるだろうクリアしたことないものがクリアできそうな時のアレである。心臓(実際アバターにはないが)の鼓動が早くなるやつの事だ。
一流のゲーマーが緊張を楽しまなくてどうするんだと思う奴もいるだろうが俺は一流のゲーマーじゃないし、なる予定もないから関係ない。ゲームが楽しければそれでいいのだ。なので雷龍が想像以上にめんどくて、難しかったからクリア出来そうな時はそれだけ緊張する。
さっき以上に慎重に雷を避けながらそう考えていた俺は雷龍が次の行動に移るところでそれらの思考を意識の外においやった。
当然、雷龍の一挙手一投足に集中するためだ。
隙を見つけたら多少のダメージ覚悟で決めに行くつもりなので雷に多少の意識は割かれているもののさっき以上に集中力を高めた。
雷龍の方もラストスパート(?)を掛けているらしく雷の槍を形成しながら、体にも雷を集めていっている。
俺は雷の槍を避け、続けてくるであろう突撃に付随している放電のタイミングで決めることにした。
状態異常は治っているので問題ないだろう。
槍の射出までのタイミングは把握しているので来ると思った数秒前に回避に移る。
実際これもかなりの賭けなんだがこれ以外避けようがないから割り切るしかない。
ドゴォン、バリバリ、ドゴォン、ドゴォン、バリバリ
回避の直後、雷の槍が放たれる。
そもがチート攻撃なのでタイミングずらすとかいったことは行われないのだろう。
雷の槍を全て放ったあとすぐ雷龍が突撃してくる。
さっきの考え通り俺は直撃を避けるためひとまず回避に移る。だが、さっきよりも距離は取らず5メートルほど離れたところに着地した。
ドゴオオオオオオン バリバリバリバリ
直後、雷龍の攻撃が俺のいた場所に当たる。
それに伴う風圧と放電に耐えるため俺は地面に剣を刺した。
地面はさっきの攻撃で表面が砕けているのでより多くの破片がとんできた。
風は直ぐに動けるほどにまで弱くなってきたので(そもそもそれをメインとした技ではないから当然のことだが)放電は続いているが俺は目の前の雷龍に向かって走り出した。
「フルアウェイク」
俺は走ると共にそう叫んだ。
覚醒発動の時は溜めだけでなく発動時にも言葉で言う必要がある。普通なら『アウェイク』でいいんだが今回のように最大出力にする場合は『フルアウェイク』と少し付け加えなければならない。
叫ぶと共にさっきまでも青白く光っていた俺の剣がより一層その光を強めた。最大出力にしているので通常の覚醒時よりも輝いている。
雷龍との距離は1歩で踏み込める距離だ。放電の影響でHPは今も減少しているがこの覚醒状態を保てるのは5秒が限界なので迷わず踏み込んでいく。
両足に力を入れて一気に雷龍のそばまで詰めた。
「うおおおおあああ!!」
そして、胴体を斬りながら横に剣を一振した。
パリン
直後、ガラスが割れるようにして剣の青白い光が舞った。それに伴い俺の剣は元に戻る。
パキ、パキパキパキパキ、パキバキ、バキバキバキバキ
雷龍の方は鳴き声(正確には叫び声だろう)と共に切り口から氷が雷龍を多い尽くしていく。
雷龍も必死に抵抗を試みるが氷の侵食速度は早く5秒ほどで雷龍を完全に凍らせた。
ビキビキ、ビキビキビキビキ、バリン
そして、瞬く間に亀裂が広がっていき粉々に砕け散った。
倒されたモンスターがたくさんの小さな緑の光となって消えていくのだがその緑の光と細かく砕けた氷が光を反射するのが合わさり一種の幻想感を漂わせていた。
あいにく正面から見ていたが去り際にこれが背景だったらかっこいいと思う。
まぁ、俺以外誰もいないから見てくれる人いないけど。
それにしても最大出力の威力には驚いた。どのぐらい使えるかや発動方法などはわかっていたが実際使うことは無かったからだ。
普通のアウェイクなら何回か発動したことがあるがフルアウェイクはあまりに大博打すぎて使えなかった。というか俺にそんな勇気がなかった。
なんにせよ今回はいい結果に終わったのだから良かった。これからはフルアウェイクも最終手段として使っていけるだろう。あくまでも最終手段だ。
広場の真ん中らへんにいた俺は端のほうへ移動しながら何の素材をもらえたか確認するために持ち物のアイコンを出した。
クリア
雷龍の鱗から始まり牙や爪、
レパートリーが多い分それぞれの個数が少ないがまぁ悪くはない。ただ、雷龍の武器を作るためには最低でももう一度来なければならないだろう。
剣を作るのにに使うのは爪や牙と電気袋などといったものが主だ。どのくらいの量が必要かは鍛冶屋で確認しないことには分からないが熱で爪や牙を溶かしてまぜ、そこに電気袋の中にある電気の生成器官に属性スキル発動のための刻印を施さなければならないという大まかな作り方は知っている。
ほかの龍でも電気袋が火炎袋か氷結袋といったものに変わるだけなので基本的な作り方はほぼ一緒だ。
端までたどり着いた俺はそこら辺の
素材確認も一通り終わったので俺は雷龍がやられたことで来た時と同じように晴れ渡った空を眺めてボーッとしていた。
何分たっただろうか?
未だにワープは執り行われない。普通なら長くても3分あれば戻れるんだがもう5分は経っているだろう。(さっきも述べた通り何分たったかはわからないからあくまで俺の勘だが)
多分、運営側の不具合だろう。
ゲームだから普通にありえることだし数時間も待たされているわけではないので気長に待つことにした。
ゲーム以外の予定は夏休みだからという訳では無いが特にないし、なんら問題はない。
そう思っていた時期が俺にもありました。まぁ、まだ最初のうちはよかった。雷龍でかなりの集中力を使ったので空を仰ぎながら時間を過ごしても暇はしなかった。
だが、段々と暇になってくるのは人として仕方が無いことだと思う。
風景に見飽きてきた俺はやることが無さすぎるあまり広場にある瓦礫や破片などを1箇所に集めていくという俺自身何をやっているのかよくわからない事をやっていた。
この行動からして俺がどのくらい暇だったかわかるだろう。
一切の生産性がないことをしてしまうほどにという事だ。
ジジ・・・ジジジ
そんな状態になっている俺が瓦礫拾いのために広場を歩いていると目の前の景色が一部だがノイズとともに歪んだ。
仮想空間のゲームになってからこういうアナログなバグはほぼ、いや一切起こらなくなった。
たぶんそもそもの構造が違うからだろう。あくまでたぶんだ。このゲームを作ったことがないから詳しいことは知らない。
ジジジ・・・ジジジジ
再び目の前の景色がノイズとともに歪む。
いや、これは景色が歪んでいるのではなく、目の前の空間が
果たしてこれはバグだろうか?
ヒント一切無しで手掛かりも皆無だから答えはどう
でも、絶賛ひまです!な俺にとってはいい暇潰しだった。
ジジジ・・ジジ
暇潰しとして考えをめぐらせていた俺の前に再度、歪みが生じた。
今度は俺の目と鼻の先だ。
と今度はそのまま黒いものが一気に目の前の空間を埋めつくした。
いや、正確には空間に穴が空いた感じだ。
穴は1度大きくなったやいなや一瞬で俺の周りをおおっていく。
近くにいる俺は吸い込まれていくような感覚を味わっていた。そして、視界がくるくると回り出し始めた。一体俺はどうなっているんだろうか。
次の瞬間目の前がいや、周り全体が真っ黒になった。
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