第2話 ゲームにバグはつきもの 2

このあと、2回ほど雑魚と戦い。いよいよボス部屋手前まで来た。

 が鉄の扉があって先に進めない。

 この鉄扉は攻撃で破壊されない設定になっているようだ。

 周りも岩で囲まれていて触るとダメージを受ける仕様になっている。

 このパターンは門番を倒して進めということなんだろう。それを示すように俺の気配察知スキルが1体のモンスターを捉えた。

 これは陸上型だろうか。猛スピードでこちらに向かってくる。

 それもこの岩にそってだ。

 数秒後、ティラノサウルスの顔をした四足歩行の獣がの前に現れた。体長は8メートルと言ったところだろう。

 俺はこのモンスターを見たことがないので新種だろう。ボスの雷龍ならいくつか情報があったがこいつに関しては一切無しだ。下手したらボスよりも手強いかもしれない。

 見た目に関しては正直ちょっと不気味だ。というか顔と体のバランスがあっていない。頭でっかちだ。

 ただ、移動速度はかなり速いようだ。

 見た目はイマイチでも気は抜かずに俺は剣を構えた。

 相手の姿がはっきり見えているので距離は3メートル程。あの速さだと飛んで回避は難しいだろう。

 敵はこちらを確認すると突進してきた。

 横で避けるだけは厳しそうなので剣で受け流しつつ横に回避をとる。

 ガリガリガリガリ

 何とか受け流して俺は軽く後ろに飛んだ。

 敵のドラゴンも少し軌道が変わり俺から離れていく。

 皮膚は固く剣はあまり深くまで入らなかった。

 今回はそっちの方が避けやすかったので結果オーライだろう。

 ぎゃりぎゃりぎゃり、ドッ

 敵のモンスターは地面を少し滑りながらもこちらに方向を定め今度は大地を蹴って飛びかかってくる。

 当然ラプトルとは比にならない威力だろう。

 カウンターで攻撃をしたいところだが何処に攻撃すればいいかの目処がまだたっていないので姿が見えなくなるが8メートルほど後ろに跳んだ。

 再びモンスターが突進してくるのがわかった。

 あんまりモタモタしていられないので突進が来るまでのラグに俺はスキル行使を決めた。

 スタミナももうそろそろ限界になってきたので仕方がない。

 3メートルに入ってきたところで俺は移動スキルの神速を発動した。

 通常の5倍になった速度で突進を躱《かわ

》し、ブレーキをかけようとしているモンスターの首元まで移動する(一部の例外もあるが首の皮膚の硬度は基本低い)。

 そして、俺は重ねて攻撃スキルの飛斬を発動する。

 この場合だどソードスキルでは真っ二つに出来ないだろうし、あんまり硬くないだろうからこっちの方がいいと判断した。

 俺は剣を振り上げて斬撃を飛ばした。

 ザシュッ、

 予想通りあまり硬くなく、弾かれることは無かったがトドメには至らない。

 しかし、致命傷ではあるので攻撃をくらって怯んでいるモンスターに続けて攻撃を加えていく。

 ソードスキルを発動することなくモンスターが倒れた。

 見たこと無かったモンスターだったので少し面倒だったがなんとか倒せたようだ。

 数秒してモンスターが消えたあとガチャッという音がした。

 鉄扉の鍵が開いたのだろう。

 それにしても運営側も情報無しでの新種討伐はやめて欲しいものである。

 今回の場合はまだマシだったし、対応力を判断するという点ではランクのいい判断材料になるんだろうがやる側は大変でしかない。

 念のためわまりに他のモンスターがいないか(連戦という場合もあり得なくはない)確認して俺は武器をしまう。あと、ここまでずっと発動していた気配察知を解除した。

 今までは奇襲に備えてのものだったからボス戦に挑む今このスキルは不要だろう。

 MPはギリギリ半分残っていたのでアイテムで全快が出来る。

 俺はボスのところに行く前にスタミナ回復とMP回復、あと少し削られていたHP回復のアイテムを使った。

 これでフル回復だ。いよいよ俺はボスの部屋に続く鉄扉に手をかけた。


 

ボス部屋は 中ボスの時と同じような広場だった。霧は無くなっていて今までずっと見えずらかったからかとても視界が良くなったように感じだ。

 広さは中ボスの時よりもだいぶでかくて円形だった。

 直径約50メートルほどだろう。

 霧が晴れたということはモンスターの強さもそれなりに上がっていることは容易に想像できた。

 一応剣を抜いてあたりの警戒をする。

 と空から猛スピードでこちらに向かってくる黒い点があった。

 最初は黒い点に見えたが近づいてくるとそれがドラゴンだということが分かった。

 かなりの速度なので落ちる場所を変更させるのは難しいと判断した俺はドラゴンが落ちてくる場所を予想して、ある程度地上(正確には山頂だが)に近づいてきたところで回避のために落下点から遠くへ走り出した。

 落下地点は中心から端に10メートル程離れたところだろう。

 近づくまで待ったのは落下の進路を変更されるのを防ぐためだ。

 ドゴォン

 落下予測地点から30メートル程離れたところでドラゴンが地上に激突した。

 ビュオオオオオ

 それに伴いかなり強い風が広場一帯に吹き荒れる。

 俺は剣を地面に刺すことでなんとか耐え切った。

 破片がいくつか飛んできたがこれもかすり傷程度だったのでダメージはほとんど受けていない。

 風が吹きやんだ。

 俺は改めてモンスターの姿を見たこれが雷龍だろう。雷龍は基本黒色でそこにいくつか黄色の筋が通っている。

 体長は15メートルほどで正直言って結構かっこよかった。

 顔つきは凛々しく某有名ゲームのミラ○ルカンみたいな感じだ。

 ヴオオオオオッ

 雷龍の咆哮が広場に轟いた。

 俺は慌てて剣を構えなおす。

 とりあえず雷龍の攻撃がある程度割れるまでは回避に徹しようと俺は判断した。

 そして、その後にどんな攻撃で切り崩していくかを考えていく感じだろう。

 場合によっては臨機応変に対応するが新種というか戦ったことがないモンスターと戦う時は基本この戦法を取っている。

 ヴオオオオオッ

 再び雷龍の咆哮が轟いた。すると今度は空を黒い雲がおおっていく。

 黒雲が空を覆い尽くすと空から次々と雷が落ちてきた。

 雷が落ちる場所の地面が青白く光ってくれたので俺はそれを頼りに雷を避ける。

 今は手の内を探るために守りに入っているからいいものの、攻撃に転じた時にこの攻撃がきたらどうすればいいかを俺は避けながら考えていた。

 避けることに専念すればあまり難しくはないがこの攻撃の間に雷龍は全く動きを見せないのでどうにかして攻撃を当てたい。

 しかし、攻撃を挟むにしては雷の落ちる量が多く思うように動けない。

 タイミングをミスったら直撃するだろうし、あの雷がどんな効果を持っているかわからないから賭けにしてはリスクが高すぎる。

 俺は最終手段として取っておくことにした。

 数十秒後、雷がやんだ。

 俺は次の攻撃に備えて距離をとった。

 次に雷龍は口を開けた。すると、黄色い光が口の中に形成されていく。

 バチバチバチバチ

 次の瞬間、雷の咆哮と思わしきものが俺に迫ってきた。

「アース・シールド、オン」

 俺は咄嗟にスキルを発動してそれを防いだ。

 雷に相性のいいスキルをぶつけたのでダメージはほぼ皆無だ。

 続けて、こちらに近づいてきた雷龍が前足を振り下ろす。

 俺は左に大きく飛ぶことでそれを回避した。

 ドゴォン

 前足が地面にあたり表面が砕ける。

 その時に地面に雷が流れていたから雷竜の攻撃には全て雷属性が付随されるようだ。

 この調子だと身体の表面にも雷をまとっている可能性が出てくるので確認が必要だ。

 俺は着地と同時に持ち物から投げナイフを取り出し雷龍の胴体に向けて投げる。

 投げナイフは胴体にあたると放電し、皮膚に弾かれて地面に落ちた。

 俺の予想は当たったらしい。これで雷龍を倒すのがとても大変だということが分かった。

 上位プレイヤーもクリア出来ていないということはまだ何か隠し玉があるのは明らかだがひとまず俺は攻撃に転ずることにした。

 俺の方を向いた雷龍が再び前足を使って攻撃してくる。

 俺は上に跳ぶことでそれを回避する。

 直後雷龍の攻撃が地面にあたり電撃がはしった。

「耐雷性強化、オン」

 雷龍が次の攻撃に入る前に俺は雷に対する耐性を強化されるスキルを発動する。

「ソードスキル、オン」

 雷龍の頭上よりも高く跳んでいた俺は重ねてソードスキルを発動し雷龍の頭部めがけて落下する。

 そして、タイミングよく剣を振った。

 バリバリバリバリ

 剣が接触すると同時に剣を伝って雷龍の表面を流れている電流がきた。

 耐雷性を強化していたので麻痺などといった状態異常にはならなかったが中々の威力だったらしくそれでもダメージを受けた。

 致命傷になるほどではないが何度も攻撃していくことでダメージが蓄積されていくとなるとなにか対策をこうじなければならない。

 攻撃の方は攻撃したところから氷が突き出ていたのでダメージはちゃんといっているのだろう。

 手応えの方もそれなりにはあったので深くは斬れないだろうがソードスキルである程度の場所は一応斬ることができそうだ。

 そう判断したのはかなめとなるモンスターの頭部の皮膚は基本硬いからだ。

 電撃はくらったがなんとか体勢を崩さずに着地した俺は着地と同時に再び雷龍と距離をとるように跳んだ。

 雷龍はさっきの攻撃で少しは怯んだもののすぐ立て直して次の攻撃に移ろうとしている。

 持久戦ではこちらのスタミナが尽きる方が早いと判断したのでここからはとにかく攻撃しまくってゴリ推していくことに決めた。

 その分やられるリスクが高くなるが今は他に方法が思い浮かばないので仕方がない。

 雷龍の方は 口を開けたからさっきの咆哮が来るのだろう。

 俺は雷龍に標準を定められないよう円を書くようにして走りながら接近していく。

 この攻撃をギリギリで回避してそのまま攻撃に繋げていくのがベスト判断したのでここが正念場となるだろう。

 覚悟を決めた俺は円を書くようにして近づくのをやめ、一直線に雷龍に向かって走り出した。

 雷龍が俺の方に方向を定めて咆哮を放つ瞬間俺は神速を発動しいっきに雷龍へと接近する。

 下から上に放たれる咆哮を俺は雷龍の胴体のすぐ近くに入ることでなんとか回避した。

 賭けに勝った俺は体勢を直ぐに整える。

「ソードスキル、オン」

 そして、目の前にある胴体に何度も攻撃を加えていく。

 咆哮が途切れるまでの約4秒俺はひたすら剣を振るい続けた。

 さすがに全部は削りきれなかったが半分ほどは削れただろう。

 咆哮が終わると同時に俺は次の攻撃に備えて距離をとる。

 雷龍はさっきの猛攻によるダメージで怯んでいるのでソードスキルを解除して、遠距離から攻撃できる飛斬を数発放った。

 あまりダメージは入ってないだろうが視界の隅にボスの体力が3分の1をきったことを知らせるアイコンが出た。

 このゲームではモンスターの残り体力とかが分からないので最後のボスの時は3分の1をきると表示される仕様になっている。

 すると、雷龍の体が黄色く光り始めた。

 難しいクエストによくある体力の減少によるモンスターの覚醒だろう。

 通常時でさえ倒すのがとても大変な雷龍がこれ以上の強さになるのだからクリアした人がいないことに俺は納得した。

 雷龍の全身が黄色い光に包まれた。それに合わせて黒い鱗がボロボロと地面に落ちていくのがわかる。

 数秒後、全身黄色い光を放つ黄金の龍へと進化(?)を遂げた。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る