ゲームで異世界救済
神ノ木
第1話 ゲームにバグはつきもの 1
高校2年の夏休み。俺こと
ただし、テレビゲームではない。
文明の進化により今はバーチャルゲームが主流になっている。
ゲームの中に意識を飛ばすというとても画期的なものだ。
正式に運用されるようになったのは5年前だがいまだ人気は衰えていない。
俺はそんなバーチャルゲームの1つ白龍物語というRPGをplayしていた。
設定としては白龍が治める世界をクエストを使って冒険していくといった感じだ。一貫したストーリーはないものの定期的にクエストが更新されていてユーザーが300万人いる人気作品だ。
俺はやり込みのかいあってユーザーランキングが1位になっているトッププレイヤーだ。
順位はクエストのクリア率や装備、ステータスなどを含めて決めていて月ごとに更新されるが俺はずっと1位のままだ。
1位を守るために平日も学校から帰ってきたら勉強そっちのけでやっている。
そのかいあってか友達の方は皆無と言っていいけど。
今もダイブ中だ。夏休みとあってか結構ボリュームがある新しいクエストが更新されたのでクリアをするためである。
基本的な拠点となる街はクエストのエリアごとにあり、中心には大きな街がある。いわゆる王都だ。
今はクエストのために高山エリアに近い街に来ている。このゲームの建物は基本的に石を基調として造られているので基本町並みは変わらない。
ただ、街ごとに色の基調が違うので印象は少し違う。ここは高山が近いからか灰色を基調としている。他にも草原に近い街は緑を基調としていたりするから人目でどこか分かる。
クエストの受注といったものや物資、武器の作製は基本この王都で行われるので各地の拠点では食事による体力回復などを行ったりしかしない。
あと出来ることは宿屋でゲームをセーブさせることぐらいだろう。
ちなみに今回受注したクエストの名前は『天候を操りし雷龍』というものだ。
高山を進んで最後に頂上で雷龍と戦うと言ったところだろう。
今はほかのプレイヤーがやっているらしく、終わるのを待っている状況だ。
ヒュワン
もう少し待っていると4人ほどのプレイヤーがボロボロの状態で戻ってきた。
このゲームはHPがゼロになるかクリアすることで自動的ワープして街に戻ってくる仕様になっている。
ボスの素材に関してはクリア時に自動的に持ち物の中に転送されるでなんの問題もない。
パーティーに関しては1チーム4人までになっている。
ちなみに俺はソロだ。上位のやつだとソロは意外と多いのであんまり珍しいことではない。
さっきのパーティーは見た感じどうやら失敗したようだ。このクエストが出てはや2日未だクリアした人がいないということはかなり難しいんだろう。
俺はそんなことを考えながら出発口へと向かった。
クエストを選ぶと入口まで自然とワープされる。これは間違ってほかのクエストに入らないようにするための運営側の措置だ。
クエストを選んだ後自分のIDを入力することで受注しているかの判断もするから万が一にも別のクエストへ行くことは無い。
IDを入力し終えると転送がはじまった。
ヒューン、ヒュワン
次に目を開けると岩だらけの山道の前に立っていた。
ここがクエストのスタート地点らしい。
周りの岩は全部灰色だ。
後ろを振り返るとさっきまで見えた街を見下ろすことが出来た。
マップで現在位置を確認すると頂上まで2000メートルある山の1000メートル付近。だいたい中間地点らへんにいることが分かった。
もちろん、ゲーム内だから酸欠といった症状は起こらないけれど少し霧がかかっていて視界は良好とはいえないだろう。
ボスがいるところまでのマップを大まかに確認して俺は歩き出した。
霧のせいで遠くまで見渡せないので気配を察知するスキルを(スキルはステータスをあげることで獲得できる)発動させた。
ちなみに、スキルには属性スキルと攻撃スキル、移動スキルの3種類がある。
設定上、属性スキルのみ声を出す必要がある。
ソードスキルも属性スキルのひとつだ。
さっき確認したところこのクエストはボスまでの道のりが普通より長いのでMP(スキルの発動で消費される)のある程度の消費はやむを得ないだろう。
仮に全部使い果たしても持ち物の上限いっぱいまで持ってきたアイテムで半分ほどは回復出来るし。
とここで気配察知のスキルに4体のモンスターが引っ掛かった。残念ながら気配察知スキルではモンスターの詳細まではわからない。
位置から見て陸上のみのタイプのようだ。
俺は武器を取り出して(俺の得物は片手剣でこの前倒した氷雪龍から作ったものだ)
前方180度からくるモンスターに備えた。
数秒後、少しずつタイムラグを開けながら4体のモンスターが飛びかかって来た。
4体もいるので俺は攻撃を受け止めず後ろに飛んだ。
どうやらラプトルらしい。基本的には雑魚だがこいつらは体が普通の茶色と違い赤色なのでその群れをまとめるボスラプトルのようだ。
ソードスキルで蹴散らすことも考えたがスキル消費は極力抑えたいのでやめることにした。多少めんどくさくはなるがスキルなしでも勝てる相手だし問題は無い。
ラプトル達は着地後直ぐに地面を走って突進の要領で突撃してきた。
俺はそれを横に動いてかわしながら、かわし際に一撃ずつ攻撃を与えていく。
4体がほぼ同時ということもあって傷もあまり深くならなかったが俺のステータスならこの程度のことは出来る。
俺はすぐさま後ろを向いてラプトル達が斬られて少し怯んでいるところに向かって踏み込む。距離は2メートルほどだから余裕で一体の懐に入れる。
1番手前の1体の懐に入ったところでラプトル達が再起する。
しかし、俺は懐に入っているラプトルが攻撃態勢に入る前に首を斬りトドメを指す。
そのあとは、怒りに任せてさっきよりも動きとチームワークが単調になったラプトル達を1体ずつ確実に処理して行った。
気配察知スキルで周りにモンスターがいないことを確認して俺は剣をしまう。
普通のラプトル達ならもう少し楽に行けたんだがどうやらこのクエストは思ったよりも高難易度らしい。
改めてマップを確認してみるとまだ1200メートル付近のようだ。
この調子だとステータスのスタミナの方が枯渇しそうだがこちらの方はゼロになっても満タンになれる量のアイテムを持っているのでまだマシだろう。
最悪、貯めておいたスキルを使いまくってボスをごり押すことも可能だろうからな。
今後の方針に修正を加えながら俺はさらにダンジョンを進んでいく。
これ以上霧が濃くなるということは無いが逆に薄くなるということもなさそうなのでMPの消費を抑える為にもボス部屋まではやく着きたいところだ。
よってスキルは使わないが他の面での出し惜しみはしていられないだろう。もう既に気配察知スキルを使っているが勿論それを除いた上でだ。
その後、あまり時間が経たずして気配察知スキルが3体のモンスターを捉えた。
気配のする位置から見て今度は空を飛ぶタイプのものらしい。
この世界のモンスターは基本空か陸のどちらかを生息場所としていて、空と陸の両方で移動可能なのはボスとなるドラゴンだけだ。
空からの敵は剣では少しめんどくさいが倒せないことはないのでスキルの使用は控えることにした。
直後、モンスターの1体が上から突撃してきた。
まあまあな速度だったが上に意識を向けていて3メートル付近から姿をハッキリと認識できていたので剣を使って防ぐ。
敵も足の爪を使っての攻撃だったので剣で斬ることは出来なかった。それを示すようにキンと接触時に音が鳴る。
続けて2回その攻撃が続いたが剣で確実に防いだ。
今回襲ってきたモンスターはプテラというティラノサウルスみたいな顔にプテラノドンのような体がついたやつだ。
続けて2回目の攻撃が来る。
さっきと同じ上からの攻撃だがラプトルを倒した時と同じ要領で横に1歩動くことでかわし、今度は剣の軌道を上にあげてカウンターを決めていく。
ほかの2体からの攻撃も同じようにカウンターを決める。
斬られたことで体勢を崩して低空になったところにトドメをさして終わりだ。
周りを警戒しつつ俺は剣を収めた。
この2回の戦闘で霧があることで一撃でさっきのような下級モンスターを倒せないということがわかった。
それも3メートルほどまで近づかないと何のモンスターか分からないので仕方がない。
この2回でスタミナは通常の環境で同じモンスターと戦う時よりも初撃で決められないのだから当然消費が多い。
1度姿を確認してしまえばスキルのおかけでどこから攻撃が来るかは分かるのでなんとなくの予測は立てれるので大きな差はないけど。
この先の戦闘回数によっては本格的にスタミナがきれることもありえるだろう。
再び進んでいくと今度は少し広い広場に出た。霧のおかげで広場全体を把握することは出来ないが10メートルほどはあるだろう。
あくまで、俺の予測ではあるがこの広場は中ボスと戦ういわば中間ポイントみたいなものだからそれぐらいないと正直せまい。
気配察知スキルでまだ、モンスターがこちらに向かって来ないことを確認してマップで現在位置を確認する。
ちょくちょくマップを確認することでボスまでの距離が分かりそれはこれからどの程度の力で戦っていいのかも決めるれるのでとても重要だ。
位置的には1500メートル付近で予想通り中間だった。
位置を確認し終えて、広場をもう少し進んでいくと左から来るモンスターの気配をスキルにより察知した。
即座に体を左に向けるがモンスターの全容が分からないので避けようがない。
3メートルまで近づいてきたところで敵が低空でこちらに来るのを確認し即座に両足に力を入れて斜め上に飛んだ。
少し下を通過していくモンスターに合わせて体を動かして剣を上から下に振り切る。
剣はモンスターの背中を切り裂き俺はそのまま一回転して着地した。
一瞬しか見れなかったが中ボスは全長5mほどのドラゴンだった。
色は赤なので属性は火だろう。
属性もそれなりに種類があるが俺の剣は氷属性だ。それもソードスキルを解放した時だけだが。
着地後すぐに次の攻撃に備えて俺は後ろを向く。
さすがに中ボスなのでここは最高でも半分ほどのMPを消費覚悟で戦わないといけないだろう。
このクエストでの今までのモンスターとの戦いとスタミナの消費量から俺はそう判断した。
目の前から赤色っぽいものが迫ってくるのが確認できた。
霧で見えずらいがそれぐらいは分かる。
「ウォーター・シールド、オン」
俺はすぐさまシールドスキルの一つを発動した。
直後、火がウォーター・シールドにあたり水蒸気を発して白く曇ったがもともと霧があるのであまり変わらなかった。
続けて俺の後ろに回った気配が(スキルで位置はなんとなくだが掴める)したので俺も後ろへ向く。
今度は右側から左側に向けて尻尾が振り回された。
霧のせいで反応が遅れていて飛んで回避は無理そうなので俺は剣を地面に刺して正面から受けた。
ギャリギャリがりがりがり
さすがに止めることは出来なかったが吹っ飛ばされはしず地面を滑るだけにとどまった。それにしても素早い動きに反して、一撃が重い。やはり、中ボスと言うだけのことはある。
尻尾の方はかなり硬度があるので軽く斬られる程度になっていた。
スキル無しで決着をつけたいなら硬度が低い顔、首もしくは胴体のお腹の方を集中的に攻撃しないとダメだろう。
尻尾を振り回した勢いで俺の方へ体を向けたらしいドラゴンからの追撃が来た。
「ソードスキル、オン」
再び突進の要領で突撃してくるのが気配でわかっていたので俺はあらかじめソードスキルを解放させる。
氷属性に合わせて剣が青白く光る。
ソードスキルを解放することで攻撃に属性がつくだけでなく斬れ味も高くなるので基本的には斬ることができるだろう。
ドラゴンは今度は牙をむけて突進してきた。正確には飛んできたと言っほうがいいか。
かなり低空で飛んできてくることは気配察知スキルで分かっていたのでサイドステップで左側に避けドラゴンの突撃と合わせて剣を横にし胴体を斬っていく。
属性をつけたおかけで切り口から氷が突き出す。
手応えもあったからそれなりなダメージが入っただろう。
ドラゴンもそれに応じて大きく体をうごめかした。
こうして怯んでいる間に俺はさらに攻撃を与えていく。もちろんソードスキルは解放したままだ。
その後、10秒ほどでドラゴンは倒れた。
どうやら倒したようだ。それを示すように数秒後細かい光の粒子となって消えた。
残りのMPはまだ3分の2と半分まではいかなかったのでもう少しならソードスキルが使えそうだ。
気配察知スキルでの消費もあるから秒数でいうと約10秒程だろう。
周りの安全を確認して俺は一息ついた。
ここまでで約半分だがいつも以上に疲れる。
正確には体の疲れではなく、仮想世界なので精神的なものだ。
こうしている間にも気配察知スキルによりMPは少しずつ削られているので気合を入れ直して俺は再び進み始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます