第2話 効能


家に着いた私は、靴を脱いで自分の部屋を目指す。

「ただいまー」

とってつけたように遅れて声を出してみる。まあ、誰もいないんだけどさ。


学校から帰ったら、まず宿題を片付けて予習をしておくのが日課だ。着替えるのはそのあと。

ああ、そうそう。手洗いとうがいを済ませておかないと。

がらがらがら。


……よし、宿題終了。予習も完璧。

あとはこのあとのお楽しみのために、ぱぱっと食事とお風呂を済ませておかなければ。

早飯早んん、なんとやらってね。


……よし、食べた食べた。自分で作った食事って、やっぱりおいしいよね。

……ふうー、極楽極楽。自分で入れた湯も、また格別なり♪

さて、大体済ませたところで。今何時?


21時。結構いい時間だね。

もう社会人は家に帰ってくつろいでいる頃だろう。みんなインしているといいな。

んー、何か忘れているような……?


……ああ、そうだった。今日買ってきたあれを試しておかないと。

点眼薬。点眼薬。がさごそ。

高かったんだぜ、これ。キミ、疲れ目にどうか効いてくださいよっ、と。


ぎゅうぅぅん。

ふわわっ!!??

なになになに、これ!?


……ふう、おさまった。

今のなんなの、ゲームには支障なさそうだけど。

周りが青く光って、って、目薬どっかにすっ飛んでった。


大丈夫、だよね。実はへんな薬品だった、とかだったら嫌だなあ。

……うん、大丈夫っぽい。眼も見えてるけど、まだ片目にしか点してないんだよね。

このままで、いいかなあ。ちょっと心配だから、もう片方の目にいつもの目薬点しておこう。残り少ないけど、えいえい。


よし、完璧。あとは、目薬どこにすっ飛んでった?

ああ、あった。ベッドの下。一番端っこの隅の方に逃げてった。

取りづらいけどぉー、よし、捕まえた。


へへ、てこずらせやがって。キミのために、貴重な時間を無駄にするところだったじゃないか。

さて、さっそくだがゲームのヘッドセットを、っと。

しかし我ながら、あんなところに飛び込んでいたものをよくぞ見つけられたもんだ、えらいぞ、私。


「ゲーム開始、アップデート完了。アバターとの同期問題なし」

一番精神がリラックスした状態でないと、思考操作もおぼつかないのだ。

よって、今の私のメンタルバランスは最高潮。


今日は、いいゲームが期待できそうだ。

ふひひ。






いつもの見慣れた光が、私を包み込む。

この時はまだ、そのあとに起こることなど、まったくもって予想だにしていなかったのだった。






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