第6話 着替えてきました
「ほう、似合ってるじゃないか」
衣装室から戻ってきたサーシャは、ウエストにワンポイントで黒いリボンが巻かれた白いワンピースを着ていた。スレンダーな身体や腰まで伸びた銀髪と相まって清楚な雰囲気を醸し出している。
両手に持っている紙袋にはさっきまで着ていた服や、衣装室から持ってきた着替えが入っているのだろう。
「プロデューサープロデューサー! サーシャちゃん服の下にすっごいジャラジャラしたの着てた! あれ着てトレーニングしたら超パワーアップしそう!」
「持ち上げたときにもしかしたらと思ったけど、やっぱり鎖帷子着てたか! サーシャ、見せてくれないか?」
「はい、こんなものでよければ……ちょっと恥ずかしいですけど」
ハイテンションなことりの報告にプロデューサーのテンションも上がり、恥ずかしそうに口ごもるサーシャから鎖帷子を受け取った。
銅より鮮やかな赤い色をした鎖帷子が両手にずっしりと乗せられる。
「おおっ、見た目ほどじゃないけど結構重いな。俺の若いころに針金を曲げて鎖帷子を作ってるヤツがいたけど……やっぱこうして見ると完成度が段違いだな。これの材質は?」
「フレイルも同じ材質ですけど、ガロン鋼という軽くて強い金属が使われてます。私はあまり重いものは使いこなせないので」
「えっ? これかなり重かったよ? これが軽いとかありえないよ」
「これを普段から着てサバイバルしたり、敵と戦ったりしてるんだからこの重さが普通になってるんだろうな。戦士とかだともっと重い鎧とか着て、ごつい剣を振り回したりしてるんだろう」
(意外と体力系の仕事いけそうだな……サバイバルロケとか考えてみるのもいいか?)
会話をしながらサーシャをどうプロデュースするか考えているのであった。
「とりあえずさっきまで着てた服は明日にアー写……ようはどんなイメージのアイドルなのかを、他の人にわかりやすく紹介するための写真だな。それの撮影に使うから洗濯しておいてくれ。乾燥機使えば何とかなるだろうから、使い方を聞くか他の人に洗ってもらうかしてくれ。フレイルもイメージ作りに使うつもりだ」
「わかりました。あと鎖帷子も着ていった方がいいですか?」
「そいつは……服の下に着てもわからないし、この国で必要になることほとんど無いしな……そうだ、ことりは基礎トレの時にこれを着ていけ。超パワーアップできそうなんだろ?」
ことりが言った感想を思い出し、キラキラと黒い瞳を輝かせることりに鎖帷子を渡す。
「サーシャちゃんこれ貰っていいっ!? 」
「大丈夫ですよ、でも無理はしないでくださいね」
「試しにトレーニングの間着てみるだけだ、無理そうならまた考えよう」
「えーっ! 今着てもいいでしょ?」
「その……汗とかたくさんかいてましたし……今はちょっと……」
「ボクは気にしないんだけどなー、まぁいいや着ちゃえ!」
「ちょっ……ことりさん!?」
ことりはサーシャの静止を無視してジャラジャラと鎖帷子を着こむ。白いTシャツと赤い鎖帷子、デニムのホットパンツがことりのボーイッシュな魅力と合わさり、一つのファッションとして成立していた。
「重っ……いけど意外と動きやすい。サーシャちゃんよくこんなの平気で着てたね。さっき着替えた時もそんなに筋肉がついてる感じじゃなかったのに」
「自分ではそんなに気にしたこと無かったんですけど……」
「ファッションとしてはありだが、衣装にするには音声さん泣かせだな……」
身体を動かしながら鎖帷子の着心地を確かめることりを眺めながらプロデューサーは売り出し方を考えるのであった。
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