第38話『結びつく記憶』


     8.


「その突き飛ばした人物は誰なんですか?」

 大雑把にアリバイと、当日の出来事を話したところで、小太り中年の時暦十司さんは訊ねてきた。

「いえ、誰だったのか憶えていません。確かに顔は見たはずなんですけど、どうにも記憶が曖昧でして……。りりすちゃんに――鎖理りりすちゃんに聞いたらわかるんじゃないんですか? 同じときに校内をうろうろしていたわけなんですから」

「それがそういうわけにいかないんですよ」

「? どういうことですか?」

 隣にいる飛魚紀六さんと目配せをしてから、時歴十司さんは言った。

「鎖理りりすは意識不明の重体です」

「えっ? ど――どうして?」

「意識不明の状態で池に浮いていた定刻くんも重体でしたが、その池に同じくして鎖理さんも放り込まれたようで意識不明の状態です。それに、鎖理さんは身体だけではなく、頭部のほうも幾度か殴られているようで」

 命に別状はないですが、意識は戻っていません。



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