第34話『冷え込む朝と……』


     4.


 そんなこんなで翌朝、十二月四日水曜日。

 昨夜降っていた雪によって相変わらずの大雪具合ではあったが、空は雲ひとつない晴天だった。積もっている雪の表面はきらきらと煌めいている。

 日光で溶け始めて、それが周りの気温で凍ろうとしているからだろう。

 やはり自転車で通学するのは不可能なので、徒歩で登校する。道中、小学生たちと出会った。

 小学生たちは道端の隅に積もっている雪や、塀の上に積もっている雪を集めて遊んでいた。道路のほうは車が走っていることもあって、大幅に溶けている。

 今日の一限目は体育だ。

 ショートホームルームを終えてから更衣室に移動して体操着に着替える。僕は年がら年中、上下長袖のジャージを着ている。あまり肌を露出するのが好きではない。

 体育館までの移動途中、ふと春子さんを見つけた。

 春子さんは、上下半袖だった

 まじか、こいつ。

 元気すぎる。

 体育館前に移動すると、体育館の扉は開いておらず、体育担当教師の三ツ木先生と藤宮先生の到着を生徒たちが待っていた。手と手を擦り合わせて息を吹きかけたり、小刻みに動いて身体を温めようとしたりしている者がいる。

 しばらくすると、藤宮ふじみや頃子ころこ先生が軽く謝りながら鍵を持って駆けてきた。

 到着が遅いことを生徒たちは文句を言う。

 満を持して扉が開かれた。

 真っ暗闇の体育館に開かれた扉から光が差し込む。差し込んだ光に照らし出される体育館内。

「――――」


 その体育館内のど真ん中に、人が倒れていた。


 大勢の生徒がそれに気づき、先生とほか数名の生徒が駆け寄る。僕は体育館の扉前で立っていた。

 離れた位置ではあるものの、その倒れている人の特徴を掴むことはできる。

 異様に肌が白くて、血色が悪い。

 血の気がない。

 衣類をすべて剥がれていて、一糸まとわぬ姿で横たわっている人物。体躯から女性であることは容易に判断できた。女性というより、女の子、だ。

「…………」

 僕らと同じくらいの年頃と思われる女の子。

 その女の子は、風水水海という名前の女の子だった。


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