第22話『それで、本当のところは?』
8.
「――この一ヶ月で起きたみっつの事件について」
みっつの事件。
それは、三体の死体を出したという意味である。
第一の死体は、首を吊って死んでいた中河友二。
第二の死体は、階段から転落死した疋田広志。
第三の死体は、トイレの個室で溺死していた鈴木由紀子。
中河友二。学校内でも悪目立ちしている問題児。素行が悪く人に迷惑ばかりかける人物。それが最初の被害者。
疋田広志。中河友二との人間関係はあったものの、第一の事件が起きる少し前に揉めていたため、りりすちゃんから最有力容疑者として扱われている人物。それが第二の被害者。
鈴木由紀子。最初の被害者であるところの中河友二と交際していたという。普段から学校をよくサボっているなどの素行の悪さは見受けられる女子。それが第三の被害者。
僕が知る限りの事件に関する見解と被害者に関する見解を述べた。
「それに、そのりりすちゃんって子は、なんて言っているんだい?」
「すべてが殺人事件だと言っています。一見自殺に見えなくもない中河友二の死に方ですけど、死因は撲殺らしいですから、必ず人為的なものが関わっているのと考えているみたいです。そこで立て続けに起きたふたつの事件ですけど、これも同一犯――というか、同列のものだと考えているみたいです」
「便乗犯ってことは考えていないわけね」
便乗犯ではないかと考えているのは僕だ。
とはいえ。僕が考えているようなことは、りりすちゃんは既に考えているだろう。
といったところで、塩焼うどんが運ばれてきた。
目の前の鉄板に放たれる。鉄板の上で熱せられる。それを僕と衣織せんぱいは適当に、お皿に運んで食す。
「それなら、こう考えることができるわけね――」
衣織せんぱいはひと口、水を飲んだ。
「既に死亡しているふたりが犯人と」
「……はい。そういうことです」
「りりすちゃんはそれに関して何か言及していなかったの?」
「口封じって考えているみたいですよ。中河友二の一件は共犯って考えていたみたいですから、その共犯者たちが、露見する前に疋田くんを殺したって」
「ふふっ」
愉快そうに笑う衣織せんぱい。
「まあ、それが妥当だろうね。そう考えるのが妥当だと思うよ。私もそう考えちゃう」
衣織せんぱいは、焼きうどんを口に運んだ。
「それで、本当のところは?」
「え?」
「真相を聞いているんだよ、定刻くん。『いました』とか『いた』とかって、過去形な言い方をしていたんだけど、それはひょっとして無意識だったのかな? まあ、過去形の訊き方をしていたってのもあるんだけど、それに過去形で答えてきたんだから――今は違うんじゃない」
「…………本当のところは口封じなんかではなく、復讐だったそうです」
「復讐。復讐ね。穏やかじゃないね。よく聞く言葉だけど、私がよく聞くのは復習のほうだよ。いやあ、小学校の頃に読んでた漫画に登場するキャラが異様に『復讐する』『復讐する』って言ってたから、先生の言う復習を復讐と勘違いして混乱したことがあるよ」
「助走と女装みたいな話ですね」
「そうそう。体育で、助走して走れよみたいなことを言われると、女装して走れって思っちゃうやつね。今だったら流石にわかるけど、助走って語彙がなかったから小学校のときは凄く疑問だったよ――っと、閑話休題。それでそれで、復讐ってどういうこと? 疋田広志くんが殺されたのは復讐だとしても、一体誰が彼に対して、そのタイミングで復讐をしたんだい?」
「中河友二の彼女です」
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