第18話『死体がみっつ』
4.
県立桜庭谷高等学校で発見されたみっつ目の死体。それを発見した人物は僕のよく知る人物だった。
翁系沖名さんだった。
それは月曜日のこと――丁度僕とりりすちゃんが話していた頃の出来事だった。放課後の掃除当番に当たっていた翁系さんたち数人は、掃除の対象であるトイレに向かったとのことである。
そのトイレは、ほとんど使われていない。校舎内に位置しているのは確かだが、誰も使用しないような校舎の隅にある。僕だけではなく、りりすちゃんも翁系さんも――そこのトイレを利用している人物を見たことなかった。
掃除する意味があるのかどうか怪しいが、当番である以上は仕方がない。翁系さんと数名はトイレ掃除に向かった。
トイレに這入ったところで、翁系さんと数人の女子は異臭に気づいたらしい。
トイレは元より臭いがする空間ではあるものの、利用されていない空間なのだから従来の臭いがするはずもない。
それも相まって、その異質な臭いが際立った。
そして、トイレのうちのひとつ――よっつ並んでいる個室の一番奥が、閉じていた。
それを見た翁系さんは嫌な勘が働いたという。
今月に入ってから死体がふたつも発見された学校に通っているのだから、少し神経質になっていたというのもあるだろう。翁系さんは、閉じっ放しの個室を見て、そしてこのトイレと呼ばれる空間に充満している異臭を嗅いで、反射的にこう思ったらしい。
ひょっとしたら、死体が腐敗した臭いかもしれない。
と。
そうかからないうちに個室を確認するとのことで、隣の個室にある洋式便器の蓋に登って、個室内を覗き見た。
すると、閉じっ放しに個室の中にはいた。
人がいた。
人――だったものがいた。
便器に頭を突っ込んだ、セーラー服を着た女子生徒と思わしき人物の腐乱死体があったとのことである。
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