第6話『窓の外の歩行者』
6.
そんなこんなで、九月も終わり十月に入った。
蒸し暑さが過ぎ去り、肌寒さが急に押し寄せてきた十月。季節も移り変わり、そろそろ二学期中間テストが始まろうというある日のことだった平穏が続いていた。
そんなある日だった。
いつものように授業を受けている僕たちは、それに気づかなかった。桜庭谷高等学校は、山の一角にある平地に建っている。学校の周りにはフェンスがあって、そのフェンスの向こうには始末に困るような、人の手が加えられていない木々や雑草が生い茂っている。
雑木林と呼んで差し支えないだろう。
雑草で足元はほぼ見えず、いつ斜面になっていて滑り落ちていくかわからないような場所。無造作で無作為に成長しまくった木々に、伸びっぱなしで剪定とは無縁な枝。その枝の新緑は赤く染まり始めている。
そんな景色に隠れていた――その存在に僕たちは気づかなかった。
力なく、吊られている人間の存在に。
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