第31話 カップリング

 くそっ、完全にハメられた。何がって? 俺がアレアと名付けたゴブリンの事に決まってる。この女、実に抱き心地がいいのだ。オババはずっと俺を遠見の魔法で見ていた。俺の好み、そう言うものを研究し尽くしていたに違いない。


 アレアの肌は緑色。顔は小顔でしゅっと通った鼻と少し突き出た口をしていてゴブリンらしさを残している。だがその表情は愛嬌があり、実に可愛らしい。そして首筋や体には魔力を増幅させるための紋様が描かれている。昔見た魔法少女もののアニメの敵役や主人公がパワーアップした時にこういう紋様が浮かび上がる、そんな設定があった。恐らくオババはそう言うところまで研究したに違いない。


 おっぱいは程よい大きさ、尻はきゅっと上がったアスリート体型。手足も長く、そこはゴブリンっぽくもある。自分たちの特性を殺さずに俺好みに仕上げてくる。オババの執念は俺の心を射抜いていた。


「ねえ、バーニィ、アレア、もっと愛して欲しいな♡」


 そのアレアは人の言葉で可愛く誘う。そんな言葉にまた、俺は乗せられる。だが、それでいいとも思っていた。一晩中眠らずに行為を繰り返し、朝を迎えた。アレアはそう言うところはしっかりしていて俺の支度を整え、自分も下着をつけて、オババの着ていたシャーマンのローブを羽織る。そこにメーヴとマーベルが顔を出した。


「バーニィ、実はな、先ほどゴブリンが知らせてくれてな、ピルナの丘の家が完成したそうだ。私とメーヴは先にそこへの引っ越しを。あなたを迎え入れるための準備をしておく」


「もう、私はバーニィとここに残るって言ってるでしょ!」


「黙れクズ女、あのアレアにも仲を深める時間は必要だろ?」


「だって、そんなの関係ないじゃない」


「もう、メーヴはホントダメね」


「ダメじゃないわよ!」


「いい、メーヴ。私がこうして妻となった以上、バーニィ―は私たちの長でもあるの。ゴブリン一族の王、マーベルはそう言う事がよくわかってる。あんたと違って」


「そうだぞ、アレアは立場があり、その上でバーニィに寄り添った。それは私たちがここで暮らすうえで大事な事でもある」


「私はこんなところで暮らさなくても、リヴィアで彼と」


「ともかくゴブリンは正式にバーニィの眷属、アレアたちは家族となった。バーニィ、これでこのマイセンはあなたにとっても故郷になる。私はその事を嬉しく思ってるぞ。このクズ女は港でもどこでも捨ててくればいい」


「もう、捨てるとかあるはずないじゃない! バーニィは私が居なければダメなの!」


「マーベルの事はアレアたちも頼りにしてる。そっちのポンコツはどこかに埋めとけば?」


「なによそれ! もう、みんな勝手なんだから!」


「いいから行くぞ!」


「あ、それならさ、ヴォルドとアレンをこっちに。あいつらも仲間だからな」


「ああ、わかった。あいつらをここに来させる。道案内に誰か一人連れて行ってもいいか?」


「うん、マーベルは家族だから。みんな言う事聞くよ。そっちのポンコツは違うけどね」


 ギャーギャー文句を言うメーヴはマーベルに引きずられていった。


「あーせいせいした、マーベルは好きだけど、メーヴはさどこかでアレアたちを、見下してるから」


「そうなの?」


「ああいうね、上級魔族のお嬢様ってのはみんなそうだよ? ネコのバカもそうだし。…でもね、こうなれて本当に良かった。アレアはゴブリンだけどこうして王子に愛してもらえた。みんなにもそれは伝わってる。だからアレアたちもみんな王子を、バーニィを愛してる。…こうなることがオババの悲願、それを私は果たす事が出来たのよ。さ、朝ご飯食べたらお風呂に入ろっか?」


「ああ、いいねえ」


 みんな幼いころから知っている。だからアレアと馴染むのも早かった。最初から心に壁を築く必要すらない関係、アレアは俺がわがままを言わずとも全ての面倒を見てくれる。


「アレアがきれいに洗ってあげる、もう、おっぱいいじったら上手にできないよぉ」


 姿形もゴブリンっぽくはあるが美人、人間や上級魔族とは違うモンスターっぽさがあるのがまたいいのだ。


「アレア、チューしろ」


「…うん、アレアもチューしたい♡」


 そんなこんなでまたイチャイチャ。アレアは明るく茶目っ気もあり、それでいて従順。オババから引き継いだ色んな知識も持っていて今話している人の言葉もその一つ、魔法もオババが研究した紋様の力もあり、魔界においてもかなり上の実力者。なにしろゴブリンは魔界の人口の三分の一を占める大きな種族、地上にもあちこちに群れを作って住んでいる。そのすべての長がこのアレアである。


 さっぱりしたところで風呂から上がり、アレアの部屋でゆっくり過ごす。オババから引き継いだこの部屋には暖炉もしつらえられていて、とても暖かい。こちらで作られた長椅子に座り、アレアが出してくれた魔界の紅茶を啜る。アレアはそんな俺に抱き着き、上に跨ると、ゆっくり体を繋いで腰を振った。…その時、アレアの耳に付けたオババが遺したピアス、その一つが振動した。


「…誰、忙しいんだけど」


『お前こそ誰にゃ!』


 そのピアスは通信機、向こうの声はネコの声だった。


「アレアはね今のクイーンだよ?」


『…オババはどうしたニャ?』


「オババは昨日亡くなったよ? 後を継いだのがアレアなの」


『オババが? …それで、お前は何で名前を?』


「えへへ、王子がね、そう名乗れって名前つけてくれたんだ」


『…バーニィはどこにいるニャ!』


「彼? 彼はね、今私の下、ずっと体を繋いでるんだよ? 今はねアレアのおっぱい吸ってるから話せないんだ」


『ゴブリンのお前と? あいつ、気が狂ったニャ!』


「あはは、そっかネコは知らないもんね。オババはね王子の好みの姿になるよう私を成長させたんだよ? だから王子ったらすっかりドはまりしちゃって。オババはずっとそう言う研究してたから」


『…まあ、そこはどうでもいいニャン。地質調査はどうなってるニャ?』


「こっちも色々忙しくて、ほら、アレアはバーニィの奥さんになったから」


『それはどうでもいいニャ!』


「…だからね、私たちの王はバーニィ。彼の言う事しか聞かない」


 急に冷たい声になったアレアはネコを威嚇するようにそう言った。


『お前は魔界の決定に逆らう気かニャ?』


「なにそれ、別にいいじゃない。あ、そうか魔界のルールで私たちを罰しようとするならアレアたちゴブリンは魔界を抜けるね。みんなこっちで住めばいいし、だからあんたともここまで」


『ちょっと待つニャ! そんな事したら魔界は!』


「しらないよ、そんな事。ともかくバーニィが、私たちの王が命じなきゃ、私たちは動かない」


『…ともかく時間が欲しいニャン。早まった真似はダメニャよ?』


 そこで通信は切れ、アレアは俺の上で激しく喘いだ。



――魔界 ダンジョン三課 6号ダンジョン建設本部


 ネコ、マダラ、クロノスの三人は深夜にも関わらず顔を揃え、新たに勃発したこの危機に対処すべく話し合う。


「…つまりだ、王子はゴブリンたちの王になり、連中を配下に納めたと? だがどうやって? 魔界の王子と言えどもそうやすやすとあいつらが従うとは思えぬ」


「…それはあのオババが」


「クイーンか? ああ、今は地上に、そう聞いたが。しかしあいつは魔王グリューナを嫌っていたはずでは?」


「ニャーとバーニィは小さいころ、よくオババの所に遊びに行っていたニャン。オババはことのほかバーニィを可愛がってたにゃ」


「だからと言ってそれだけでは。同じ妖魔であるからと言っても縁がなければ。流石にゴブリンを娶るのは無理だろう? 奴らは姿形が俺たちとは違い過ぎる」


「…新しいクイーン、アレアと名乗る女はあいつと関係を持ったと言ってたにゃ」


「それは無理だ、ゴブリンの大人、そうなれば男や女になると言うが、アレは流石に」


「オババは長年かけてそこを何とかする研究をしていた、そして新しいクイーンに引き継ぐとき、その姿がバーニィの好みになるよう調整した、そう言ってたニャ。だからアレアはバーニィの妻、夫であるバーニィはゴブリンの王」


「…余計な事を、それで?」


「アレアはバーニィの命でなければ動かないと。文句があるなら魔界から一族をすべて引き上げると言って来たにゃ」


「…それは、宜しくありませんな」


「よろしくないどころじゃない、魔界の経済は崩壊する。あいつらの労働力と購買力あればこそここの経済は回っているんだぞ!」


「左様ですね、魔界の人口、その三分の一は彼ら。彼らが居なければ何事も立ちゆきませんな」


「…そうニャ、だから対策を」


「…ともかくだ、そのアレアの意向は無視できんな。だが、王子に接触しようにもゲートの使用を制限されていては」


「…そうですな、そのアレアさんが先代のクイーンの力を余すところなく受け継いだとすれば、」


「そうだ、力技ではどうにもならん。あのクィーンはゴブリンたちの知識と技術の蓄積、その結晶体だからな」


「…そうニャね、遠視の魔法はオババだけしか出来ないニャ。瞬間移動もオババは時空を超えて魔界と地上を移動できる。ゲートを使わずに」


「奴と戦ったものはいないが、魔法においては最上級とみるべきだろうな。魔法もまた知識と技術だからな」


「どっちにしてもアレアを何とか動かさなきゃ先に進めないニャン」


 そんな話のあと、マダラは部屋を出て、自室にこもり、術式を施した。


『…どうしました、我が信徒』


「偉大なる知識神マチルダ様、迷える下僕にその英知をもって救済を」


 そう、マダラは知識神の信者。この魔界に知識神から授かった技術を持ち込んだ張本人である。


『…なるほど、魔界はいまオーバーロードによるマナ不足と』


「ええ、このままではせっかく安定を見た魔界も再び騒乱に」


『つまり魔王の支持率が下がっていると?』


「はい、このままでは不満が爆発しかねません」


『私は魔界の文明化を肯定した訳ではありませんよ? あくまでもヴァレンスへの対策、その為の処置。だから技術も生活や娯楽をメインに動力などは認めていません。ですが私が禁じた動力を研究し、工業化を進めたのはあなたたち』


「それは重々、ですが一度手にしたものは手放せぬものにて」


『では、こう考えてはどうです? 今の魔王は賞味期限切れ、新しい指導者をあなたが後押しし、今の行き過ぎた文化を制御する。それは立派な大義になりうると思いますよ?』


「…ですが、それは、」


『出来なければあなたも賞味期限切れ。そう判断するしかありません。どちらにしても魔界の行き過ぎた工業化は抑制を、それが私の意向です』


 神との交信を終え、マダラは落胆したように座り込む。彼は知識神とのコネクションを最大限に生かし、この魔界の影の支配者として経済を握っていた。自分で積み上げた物を自分の手で壊さなければならない。そうしなければ彼は知識神から見捨てられる。


――人間世界 マイセン近郊 ゴブリンの巣穴


 わずかな時間でアレアの部屋は様変わりしていた。ベッドは二人で寝られる大きなものに。家具や調度品もオババの好みの落ち着いた色合いのものからアレア好みの若々しいものへと変わっている。これらの家具は山から切り出した木材をゴブリンの男たちが加工したもの。桑畑が作れればかいこを飼って生糸をつくり、シルクの織物も作れるという。今は魔界から連れて来た羊を飼い、将来的に羊毛を作る予定らしい。


「へえ、色々考えてるんだな」


「うん、バーニィには少しでも幸せな暮らしをしてほしいから」


 そう言うアレアを抱き寄せキスをする。ホントアレアは何もかもがちょうどいい。そんな事をしているとゴブリンの子供に連れられたヴォルドとアレンが訪ねて来た。


『ヴォルドはね、ボクたちといっぱい遊んでくれたんだよ?』


「はは、俺はここの生まれだし、村の出だからそう言う事もたくさんしてきたからな」


「そうか、良かったな。二人には少し話があるから後でいっぱい遊んでもらえ」


『うん、ヴォルド、また遊んでくれる?』


「ああ、いいとも」


 その子供が去って、向かい側の椅子に二人を座らせる。茶を出してくれたアレアを見ると二人はびっくりした顔をする。そのアレアは俺の隣に座り、べったりと寄り添った。


「…その、王子? なぜ俺たちをここに?」


「お前らも仲間だからな。ああ、コイツはアレア、メーヴとマーベルの二人と同じ俺の妻だ」


「その、王子? 彼女はゴブリンなのですか?」


「そうだ、コイツはゴブリンのクイーン、オババの跡を継いで今は一族の長でもある」


「もう、アレアたちの長はバーニィだよ? ちゃんと自覚してよね」


「あはは、そうだな、俺はこいつを娶りゴブリンの王になった」


「へえ、すげえな」


「…そうですね、これは大きな事。それで王子我らをここに、その目的は彼女たちとの今後の関係、そう言うお話ですか?」


「そうだなアレン。知っての通りここの開発を進めるにはこいつらの力が必要だ。ピルナに建てた商会、あそこを拠点に鉄鉱石や木材をリヴィアに運び込む。向こうからは食料を、当面はそう言う形」


「ええ、そのピルナにはヴァレリウスに逃れ、難民となった同胞たちを集め、資材の運搬をと」


「そう、まずは商会の周りに小さな集落を、春が来たら畑づくりも進め、少しずつ食料の生産も増やしていきたい」


「それにはピルナでのゴブリンと難民たちの関係が円滑である必要が」


「そうだ、幸いにもマイセンの人たちは魔物や魔族を知らない。だからゴブリンたちも最初から一緒に、そうしてしまえばいつしかそれが当たり前、そう言う形に」


「…確かに、ヴァンパイアのメーヴ様の時も魔族だからと言う忌避感は皆ありませんでした」


「あくまでもマイセンの中、そう言う話、外に行くのは人間だけ、ここでの事は口にしない、そうすれば余計な争いも起こらない」


「…実質的に独立を?」


「そうだな、表向きはリヴィア伯、あいつが領主。だがこちらの事は全て俺たちで決める。その為にはしっかり纏まれる要素が必要だ。そこでお前たちにはゴブリンたちの実態を見てもらう事にした。どうだ、感想は?」


「んーっ、そうだな、思ったより住みやすい感じ? じめじめしてないし、キレイだし、トイレなんか水で流せるんだぜ?」


「そうですね、生活レベルから言えば我々よりも上かと、穴の中で日が差さないというのはヴァンパイアである私たちにはむしろ好都合ですし」


「まあ、一緒に暮らせって言うなら俺は全然かまわん。あいつらの遊び相手も楽しいし」


「そうですね、我々であれば問題はありません。ですが民たちは」


「アレン、まずは何でもやってみてから、だろ? 姫様もいるんだ。みんな話くらいはちゃんと聞くさ」


「…まあ、そうですね」


 二人はなんとなく肯定的。アレアもうんうんと頷いていた。


「でさ、そうなると融和の象徴みたいな? そう言うのが必要じゃん」


「象徴?」


「例えばさ、俺とコイツみたいに夫婦になって仲良くしてりゃみんなだって一族だって認めてくれる」


「はい、縁組とはそう言うもの。マーベル様との事も、我々にとっては同じ意味を」


「そういうこと、だからさ、そうだなぁ、ヴォルド」


「なんだ?」


「お前はこのアレアをどう思う?」


「どどど、どうって、その、あの、」


 ダメ、ヴォルドは全然ダメ、思えばマーベルの時もこうだった。


「じゃあアレン、お前は?」


「…その、好ましく、素敵な女性だと思います」


「ならさ、二人はうちのゴブリンの女を妻に、もう一人難民から娶れば丁度良くない?」


「え、お、お、俺が二人も妻を?」


「おまえさぁ、今更だろ! エミリアでも5人の女をやっちゃってたんだろ?」


「あ、あれはな、俺は手を付けてない!」


「え、バカなの?」


「見目の良い娘を残しておけとメーヴ様が言ったから」


「あー、ほんとダメ、そんなんだからマーベルにフラれるんだよ!」


「言うなよ、それを! 結構傷ついたんだからな!」


「とりあえずアレン、そう言う感じで」


「…承知、私は王子の一族、そうなりましょう。そして永遠に忠誠を」


「まあ、メーヴ様はあんなだし、俺もそんな感じで」


「アレアも賛成だよ、外で暮らせるならその方が良いもん。そっか、そうなったらアレアも一緒に暮らしていいよね?」


「えっ?」


「なんで、いやなの?」


「いや、全然いいと思うけど、ここは大丈夫なの?」


「そっか、でも一人シャーマンを置けばちょうどいいし。アレアは全体の統括だから」


「まあ、それで良いならいいけど」


「うん、決まり。二人とも女の子の支度には時間がかかるから、それまでお風呂でも入っておいでよ。ちゃんとキレイにしなきゃ嫌われちゃうよ?」


 そう言ってアレアはゴブリンの女を呼び、案内させる。それを見た二人はものすごく怪訝な顔をしていた。だって普通のゴブリンだったからね。


 その間にアレアは二人のゴブリンを呼び出した。一人はさっき、ヴォルドたちを案内してきた子。もう一人はどこかおどおどした感じ。


「なあにアレア? 早くヴォルドに遊んでって言ってよ」


「…ボクに何か用?」


「あなた達はね、今から大人、女になってお嫁になるの」


「えーっ、ボクは男が良かったのに」


「話はちゃんと聞きなさい。あなたはヴォルドのお嫁さんになるのよ?」


「え、やったぁ! そしたらずっと遊べるね!」


「…その、ボクは?」


「あなたはアレンって言う人のお嫁さん。大丈夫、いい人だから」


「早くしてよ、ねえ!」


 そうせかされてアレアは二人の心臓にぷつっと爪を刺す。そしてアレアの力が流れ込み、二人の体は少しずつ女のシルエットに変わって行く。


「へへ、王子、あたし、大人になったよ? ほら、おっぱいだってこんなにおっきいんだから!」


「…その、私、変じゃないですか?」


 一人は中性的な快活な顔、髪は暗めの赤でゆるく外にカールしたショートカット。体つきはしっかりした感じ、腹筋も割れていた。おっぱいは中々の大きさ、年頃は十代後半と言った感じ。いかにも元気、そんな感じの女の子。

 そしてもう一人はストレートの金髪、顔も細面で伏し目がち、目立たないけどよくよく見れば可愛い感じ。おっぱいはちっパイで全体的に細身だった。


 二人とも肌は緑、目は金眼。耳は尖っていてゴブリンぽさは残っている。二人には名前が必要と言う事になり、赤毛の快活な方はルル、金髪の方はソフィと名付けた。


「それじゃ二人とも奥に行って服を着てらっしゃい」


「「はーい」」


「ちゃんとパンツも穿くのよ?」


 しばらくして出てきたのはルル。厚手の綿のチュニックにズボンは革のホットパンツ。裾には返しがついていてそこは毛皮になっていた。そしてブーツは膝上の長さ。実に判ってる、そう言う格好だった。

 そしてソフィの方は清楚なワンピース。足元はショートブーツを履いた露出少な目の恰好、こっちも中々、ゴブリンたちのセンスは実にいい。


 そして風呂を使ったヴォルドとアレンが帰って来た。


「やっほー、ヴォールド!」


「えっ?」


「やだなあ、忘れちゃったの? 一緒に遊ぶ約束したでしょ?」


「ああ、あの子なのか?」


「そうだよ、あたし、ヴォルドのお嫁さんになるから。そしたらずっと遊べるでしょ?」


「あ、うん、えっと」


「ほーら、ちゃんとチューしなきゃダメなんだよ?」


 そう言ってルルはヴォルドとキスをする。ヴォルドはゆでだこみたいに真っ赤になっていた。


「えへ、あとはちゃんと夫婦にならないと、こっち、あたしの部屋で」


 そんなルルに手を引かれたヴォルドは俺を振り返り満面の笑みで親指をぐっと立てた。


「…あの、私、ソフィと言います、アレンさま、私でいいですか?」


 とぎれとぎれにソフィがそう言うとアレンはニコっと笑いそのおでこにキスをする。


「もちろんです、あなたは私の生涯の伴侶、何事も二人で、そうしてくれますか?」


「…はいっ! 私、ずっとお側に!」


 そう言ってソフィーもアレンの手を引いて部屋に向かった。とりあえずカップリングは成功。アレンは貴公子風の色男だからいいけど、ヴォルドはあのままじゃ一生結婚とか無理っぽかったもんね。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る