第28話 マイセンの姫君
「意外と見つからないもんだね。ヴォルド、そっちは?」
「いないですね」
翌日からは俺たちも捜索に加わる。外は相変わらずの雪、城内も崩れたところは雪が積もっていた。力のあるホブゴブリンたちが瓦礫をどかし、体の小さなゴブリンたちは隙間に入り込みその向こう側を探してくれている。だが未だに一人も見つかっていない。
「ねえねえ、これは違うの? なんか人の一部っぽいけど」
ジョバンニが見つけたそれは確かに人の足っぽい。そこを掘り返し引っ張り出すと誰かは判らないが多分人。
「うわ、気持ちワルっ!」
「王子、そう言う事言わないでよ、復活中なんだからしょうがないでしょ?」
そう言いながらヴォルドがそのひとっぽい何かを背負っていく。…ちなみにメーヴとキャシーは留守番で家の事、あの二人は欲深いのですぐにエッチな事をしようとするからだ。
「ま、一人見つけたし、とりあえず戻ろっか?」
「おーい!」とゴブリンたちにも声をかけ、みんなで宿舎に戻った。
『ねえ王子、後何人探すの?』
「えっ、メーヴどうなの?」
「そうね、あと8人かしら」
ゴブリンたちとお茶を飲みながらそんな話。
「それもそうだけど復活するの? キャシーの時は結構時間かかったけど」
「そうだね、血をあげるにもここには人間はいないし」
「土に埋めてみる? 養分吸って戻るかもよ」
「ああ、キャシーはそうだったもんね」
「…そうね、私もそこは判らないわ。埋めてみましょうか」
とりあえずそう言う事になりヴォルドが外に埋めてみた。お昼ご飯を食べて午後からはまた捜索。その日は結局見つからなかった。ゴブリンたちは巣穴に引き上げ、また明日来るという。
「…8人全員生きているとは限らないわ。復活するのを諦めてしまえばそこまでだから」
「そうなんだ」
「あとは一階部分でしょ? まあ、一人見つかっただけでも御の字じゃない?」
「でも俺は、出来ればみんな助けたい」
「まあ、ヴォルドにしてみれば身内だしね。メーヴ、あんたはそう言う感情ないの?」
「興味ないから。私、バーニィ以外はどうでもいいもの」
みんなうっわ、これだよ、と言う顔をした。
その夜から外は吹雪。流石に明日の作業は無理と判断。通信機でゴブリンにもそれを伝え、明日は休みと決定する。
◇◇◇
私、今幸せです! そう叫びたくなるほどに。バーニィは学生の頃のような穏やかさを取り戻し、その中にも芯の通った強さも感じさせてくれる。彼は私が居れば幸せ、私は彼が居れば幸せ、そう言う事が実感できる。
思えば彼に再会するまでの私は小賢しい女でした。彼と何かを常に天秤にかけ、彼の気持ちを私に傾ける。そんな努力をしていたんです。天秤の反対側に乗せていたのは家であり、家族であり、公女としての私自身。父にも、兄にも、みんなにも私を良く見せたかった、公女に相応しい娘だと、そんなつまらない事が彼への気持ちを濁らせる。だから意地を張り数十年も彼と離れることになる。
私は最初から二番目、ネコ先輩がいたから。それ以上望まない、その代わりに彼に私の望む男性になってほしかった。勉強を一緒に、魔法も、生徒会の事もそう。全ては私の見栄。ネコ先輩に勝負に出られなかった私の臆病さ。
けれど今は天秤はいらない。私は彼だけ、誰に嫌われても構わない。他の人には興味がないの。私が身を飾るのは彼の為、料理を作るのも、掃除をするのも全てが彼だけの為。
こうしてリビングでみんなで話をする。そう言う時も私の興味は彼にしか向かない。彼が笑えば私もつられて笑う。愛しくなって堪え切れず彼の頬にキスをすると彼は私を抱き寄せおっぱいをいじりだす。みんなの前でも構わずに。そんな事がすごく嬉しくて、お風呂では彼の髪と体を流してあげる。何もかもを私がお世話してあげる。そう、かつてのネコ先輩のように。
彼が外に出ている時、私はキャシーと家の事。今日の献立を二人で考えたり、お掃除をしたり、彼女もまた、ジョバンニの為、そう言うところが意外と合って彼女とは仲良く過ごし、笑い合う。そうしながらも私の一部を蝙蝠にして彼の側につけている。常に彼を感じていたいから。
そして夜は激しく彼を求め、彼も私を激しく求めてくれる。はしたない事もたくさん口にする。夜の私は自分でも驚くほどにわがまま。彼も私にわがままと欲を素直にぶつけてくる。それが絡まり合って深い絶頂と満足を感じられるの。寝る時は彼を胸に抱え、愛しく思いながら深い眠りに。朝起きると彼が私を抱えてくれている。そういう安心感。
不満も不服も何もない。ただ毎日が楽しくて幸せで、明日も幸せ、それは約束された未来。
ゴブリンクィーンは言っていた。幸せには定義があるのだと。私はその定義を間違っていたから不幸だった。ただそれだけの事。間違った努力は幸せには届かない。だから今している努力は正しい事。だって、こんなに楽しいから。
だから私はまた努力をする。彼の好みの下着を選び、彼が手を入れやすいよう胸の開いた服を着る。彼の好みの献立を話し合い、お洗濯をしながらキャシーと夜のテクニックについて意見を交わす。何度でも彼に見初めて欲しいから。何度も彼に求めて欲しいから。…そして私だけを見て欲しいから。だからもう、私は二番目じゃないんです。自信があるから。
明日はお休み、ずっと彼と一緒。何をしようか迷います。したい事があり過ぎて。
休みを一日はさみ、俺たちは捜索を再開。もちろんここにはヴァンプではない死体もたくさんある。頭の潰れた辺境伯、転げ落ちたのか手足が変な方向を向いた形で死んでいる伯の夫人、その他兵士や城の使用人、彼らの遺体は冬であることも幸いし、原型をとどめていた。ゴブリンたちの手も借りてそれらを纏めて埋葬し、戦神の駕籠があらんことを祈ってやった。一応俺は信者だからね。
「なあ、ヴォルド」
「なんだ、王子?」
「おまえさぁ、恋人とか居なかったの?」
「そんなのおらん。俺は村の出で成り上がりものだからな。あのソーヤと言う奴と同じだ」
「それで?」
「騎士身分ともなれば相手もそれなり、そう言う事を求められる。ましてこのマイセンは閉鎖的、狭い世界だったから。村の娘を娶ればその女がバカにされる。かと言って貴族の女には相手にされん」
「けどさぁ、好きな人ぐらい」
このヴォルドは女の趣味が良い。エミリアで殺さずにいたミラたちはみんな美人だったもんね。
「まあ、憧れ、というかそういうのはあったさ」
「誰?」
「…ここの姫様だ。彼女もメーヴ様に闇の祝福を受けたが流石に生き残ってはおるまい」
「えっ? メーヴが女を眷属に?」
「姫様は優れたお方だったからな。メーヴ様は自らは皆の前に出ず、姫様を通じてみなに意向を伝えておられた」
なるほどね、誰かを前に立て、自らは影に、そっちの方がうまく行きそうだ。
「とりあえずさ、探してみようぜ? 生きてたらお前が口説け。ジャンの所だって人が足りてないんだ。その姫様を連れて帰れば喜ぶだろ?」
「…えっと、でも、俺なんかが、」
「ジョバンニのように復活するまで面倒みてやればいいだろ? なあジョバンニ?」
「…そうだね、今更身分は関係ない。思いを遂げられる機会を逃すべきじゃないと思うよ?」
「そうだぞ、お前はジョバンニと違って女の趣味がいいんだから」
「俺だって悪くないよ!」
「えーっ」
「何だよそれ、キャシーは気が利くいい女だろ!」
そんな話の後、ヴォルドはがぜんやる気を出し、ホブゴブリンたちに混じって瓦礫をどけ、捜索を続けていく。
「おーい、もう帰るぞ!」
「ごめん、俺はもう少し、」
「バッカ、夜目が利いても一人じゃ危ないだろ」
そんな感じで数日の間精力的に活動する。人間の遺体は埋葬、ヴァンプも何人か見つけたがすでに死んでいた。そして一人、焼けただれ枯れ木になった女のヴァンプが。おそらくこれが姫様なのだろう。
「けっこう焼けてるね」
「…うん、完全に炭になってるよ」
とは言え焼けたのは火災によるもの。ドラゴンに直接焼かれたキャシーとは違う。それだけ生きている可能性が高かった。生存しているかどうかはメーヴでないと判らない。
「まあさ、死んじゃってたら置物にすればいいじゃん。朝顔とか植えて」
「うーん、朝顔よりもつる草の方が。だって朝顔って一年で枯れちゃうじゃん」
「そこがいいんだろ? 来年はまた違うの植えてさ。ジョバンニはわかってないなぁ」
「ちょっと、生きてるかもしれないだろ!」
ともかく俺たちは捜索を切り上げヴォルドは枯れ木を大事そうに抱えていた。
「…これは生きてるわね。すごいねバーニィは」
メーヴは基本的に俺としか話をしない。眷属のヴォルドの事は一切無視だ。だがヴォルドは「よっしゃぁ!」とガッツポーズ。早速枯れ木の世話のやり方をジョバンニとキャシーに聞いていた。
その日の夜もみんなで食事。ヴォルドは枯れ木を抱きかかえたまま幸せそうな顔。そこに知らない男が一人、入ってくる。
「あ、アレン」
ヴォルドがそう言うとアレンと言う男はそのヴォルドに手をあげ微笑むと俺に抱き着くメーヴの前に膝をついた。
「メーヴ様、このアレン、ただいま戻りました」
「…そうですかお前は私の夫、バーニィ―に忠義を。その忠義に曇りがあれば必ず殺します」
メーヴは彼を見ようともせず冷たい声でそう言った。彼と目があった俺は苦笑い。
「ほら、これも食べなきゃダメ、おいしい?」
「ああ、うまいさ」
ポカーンと固まったそのアレンをヴォルドが連れ出して風呂に入れ着替えを。着ていた服はボロボロだったからね。戻って来たアレンは何というか貴公子っぽい感じ。
そのアレンにも食事をとらせ、俺たちは改めて自己紹介。アレンはマイセンでは文官のトップ。諸事に優れた英才だという。そのアレンにヴォルドが状況を説明、アレンはメーヴの片腕として作戦を進めていたのである程度までは把握していた。
「…なるほどな、メーヴ様の祝福を受けた中で生きているのは私とヴォルドのみか」
「この枯れ木は姫様。一応生きておられる」
「まあ、それはヴォルド、お前が面倒見てやればいい。私はメーヴ様の計画を進めねばならん。ですよね? メーヴ様」
ところがそのメーヴは返事もせず、俺に跨りおっぱいを吸わせていた。
「そう、強く吸ったら声が出ちゃうから。んっ、そうよ、優しく」
「なあ、アレン、そいつらは放っておいた方が良いよ。基本的にバカだから」
「そうそう、いっつもイチャイチャしてさ、メーヴは慎みってのがないから」
「…もう、そんな事ないです! バーニィはこうしておっぱいを吸わせないと不機嫌になるから」
「はいはい、どうでもいいけどこの人困ってるよ? ちょっと涙目だし」
「え? 放っておけばいいじゃないですか。そもそもバーニィが掘り出してあげなければ復活出来なかったのよ?」
「ま、いいや、アレン、あんたの部屋はそっち。一応家具はあるから暮らせるはずだよ?」
「…うん。すまぬな、キャシー殿」
そう言ってアレンは項垂れながら自室に入って行った。
「あの人も大変だね。きっと主従の絆とかそう言うのが大好きなタイプだよ? ま、メーヴは良い女だし、彼からしてみれば理想のあるじってとこじゃない?」
「…えっと、その、メーヴ様は前は本当に理想的なあるじで、」
「ヴォルド、あんたもさ、そう言う堅苦しいのやめなよ。見てわかる通りメーヴはポンコツ、あれが本性なんだから」
その翌日、ヴォルドの献身的な世話もあり、枯れ木が羽化をし、姫様も復活。その姫様はどちらかと言えばクール系。赤い髪を肩で切りそろえた切れ長の目をもついかにもデキる女。
「メーヴ様、マーベル、ただいま帰還いたしました」
夕べと同じく着替えを済ませた姫様はメーヴの前に膝をつく。
「そうですか、あなたはヴォルドとそれが我が夫の意向です」
やはりメーヴは完全に興味がないようで、ソファーの上で俺に抱き着きながらそう言った。
「えっ? …どういうことか、ヴォルド!」
「えっと、そのですね、その」
ヴォルドは全然ダメ、どもっちゃってるもの。
「ならばアレン! 貴様が答えよ」
「…そうですね、ヴォルドは姫様に想いを寄せていた、それをあるじの夫である王子が」
「…王子、メーヴ様の夫であられるあなたの意向は尊重する、だが、生涯の伴侶を勝手に決められては困ります」
「えっ、ヴォルドじゃダメなの?」
「…ヴォルドが逞しく、武勇に長けた男であることは知っている。民の出であることも関係ない。だが」
「なに?」
「彼は私より弱い。この身を捧げるならば私よりも強い男でなければ」
え、ヴォルドって相当強かったよね。そのヴォルドはがっくりと膝をついて項垂れていた。あーあ、残念。
「えっと、ならさ、アレンは?」
「ふん、話にならんな。こ奴は小賢しいだけの臆病者だ」
そう言われたアレンも涙目で苦笑い。っていうかこの姫様、予測とかなり違うんだけど。
「あ、そうだ、ねえジョバンニ?」
「王子、話なら私が聞くよ? んっ?」
「いやさ、ほら、ジョバンニはバカだけど、これでもプラチナタグの英雄じゃん? キャシーみたいな貧相なブスより姫様のほうがって」
「はぁ? 残念、私とこの人は眷属、強い絆で結ばれてるんだよね。王子はバカだからそう言う事わかんないかもだけど」
「…人の恋路に割り入る真似はせぬ」
うっわ、なんかメンドクサイ。
「でもさ、ヴォルドはいい奴だし、お似合いだと思うけど?」
「ジョバンニ殿、ヴォルドは確かに人柄も悪くない。命を救われた恩もある。だが私がその恩に報いる形で彼に嫁いでもどこかで彼を蔑むことになる。貴殿はわからぬやもしれぬが北の民は強さというものをことのほか重視する」
「じゃあどうするの?」
「男などはいらぬ。しばらくはメーヴ様のお世話を」
「えっ?」
「キャシー殿だけでは手が足りないであろうからな」
うっわ、余計な事言いだした。俺のセンサーによればこいつは間違いなく口うるさい。メーヴに何とかしろと合図を送るがメーヴも困った顔をしていた。
「まあ、それがいいかもね」
「よくねーよ、バカ!」
ジョバンニってホント空気読めないよね。
「…ほう、王子、私に不服があると? こう見えても家事は出来る方だ、もちろん剣も。メーヴ様をお守りするには私が最適だ」
あーあ、どうしようかな。
ともかく探索は終了、その日はお祝いとなり酒と料理が振る舞われた。
「ヴォルド、何でフラれてんだよバッカ」
「あのね、俺、すっごく傷ついてる、ほっといてくれよ!」
「まったく、これだから。アレン、お前あいつ何とかしろよな。お前たちの姫様なんだろ?」
「無理、それは無理ですって!」
「そもそも何であんなもん掘り起こしたんだよ」
「あんたがそうしろって言っただろ!」
「だって、普通姫様って、こう、おしとやかな感じじゃん? ヴォルドは女のセンスもよかったし」
「…俺ね、小さなころからデカくて、強かったから。ああいう自分より強い女に憧れがあって」
「あいつ、そんなに強いの? 見た目はごつくないじゃん」
「王子、姫様は技に優れておいでで、剣に関してはここでは敵なしでしたから」
そんな事を話していると向こうから料理を持った女たちがやってくる。
「よろしいかメーヴ様、このような事はすべてこの私が、メーヴ様はあるじとして構えておられればそれで。そうであろう? キャシー殿」
「えー、メーヴは料理も上手だし、何もさせなけりゃ王子とイチャイチャしてるだけだよ?」
「そのあたりは少し改めて頂かねばな」
「ちょっと、あなたには関係ないでしょ!」
「いいえ、我らのあるじとして相応しき振る舞いを」
「口を出さないで!」
「ダメですね。時にはあるじを諫めるのも仕えし者の役目。一時のご不興は覚悟の上です」
「もう、もう、最悪!」
「ま、メーヴはポンコツすぎるからね。少し鍛え直してもらったら?」
そのあともメーヴはあれこれとお説教を受け、涙目になっていた。
女たちも揃い、みんなで酒を。マーベルとアレン、二人だけでも助かった。それを祝って乾杯する。意外な事にマイセン出身の三人は芸術神ヒロミの信者で楽器の演奏が上手だった。アレンはリュートを弾き、ヴォルドは四角い箱を打楽器のように叩く。そしてマーベルは素晴らしい歌声を披露した。俺たちも大はしゃぎで彼らの曲を楽しみ、メーヴを抱き寄せつたないダンスを踊る。
「ここは娯楽が少ないからな、みな、こうして楽器や歌を嗜むのだ」
「そうなんだ、みんなすごく上手だ」
歌い終わったマーベルは俺たちの側に来て酒を飲みながらそんな話をしてくれる。口うるさくてカタブツでメンドクサイ女と思っていたが、気は利くし話も面白い。
馴染んでみればみんないい奴だった。
「もう、バーニィ? 飲み過ぎよ?」
「うるせえな、いいだろ?」
そう言ってメーヴを強く抱き寄せキスをする。結構酔ってハイテンションだった。長椅子に座り、隣のメーヴに料理を食わせてもらう。マーベルは酒のお替りを注いでくれた。
「んで、マーベル、お前の意見は?」
「そうだな、ピルナの丘にはアレンを。あいつは諸事に長けているから心配ない」
「でもさ、一人じゃさみしいだろ?」
「あはは、難民たちも来るのだろう? それならそこから側付きと女を、こうなっては身分もヘチマもないからな。ヴォルドも難民から妻を、そうすればその親族も面倒見てやれるさ」
「お前は?」
「私はメーヴ様と王子の世話を、キャシーもジョバンニ殿の妻なのだぞ? いつまでも雑用をと言う訳にも行かんだろ」
「けどお前お姫様だったんだろ?」
「そんなものは関係ない、むしろそう言う立場は邪魔でもあった。私は戦えるし家の事もできる。…ここは狭い世界、しきたりにうるさく息苦しくもあった」
「…もう、バーニィは私が居ればいいんです!」
「メーヴ様、あなたには私たちのあるじである責任があるのです。確かに愛する人に他の女の手をかけたくない、その気持ちは判るが、私たちもまたあなたを慕い、夫である王子の事も。そう言う事は判ってもらわねばな」
「勝手です、そんなの」
「ふふ、そうかもしれません、でも私はそうしたいのです」
「まあ、メーヴ、マーベルがそうしたいっていうならそれでいいじゃん。こいつはブスじゃないし」
「そうか? 私はブスではないのだな?」
「バーニィ!」
そう、俺は酔っぱらっていた。なんとなく気が大きくなり、素面ならばしない事をし始める。メーヴを抱え上げ、抱っこするように抱き上げる。そして空いたところにマーベルを座るよう促した。
「いいのか?」
「お前もあいつらももう仲間だからな」
そう答えてメーヴを抱っこしながらマーベルの手を引き、隣に座らせる。そして肩に手を回して抱き寄せた。
「…そうだな、仲間であるからには遠慮はいらん、ふふ、私も少し酔ったようだ。酒がとてもうまく感じる」
気が付くと俺はメーヴの強く抱きしめながら反対の手でマーベルのおっぱいをいじっていた。
「だから、俺はな、ヴォルドの奴に言ってやったんだよ。好きな女がいるなら助けてやれって!」
「それで私は助かったのだな、だが、私にも気持ちと言うものがある」
「バーニィはね、こう見えて優しいのよ? ヴォルドは直接戦った相手、そう言う相手にそこまで」
「…そうだな、うん、そうだ、普通はできぬ」
メーヴはあちこちいじられ既に蕩け顔、マーベルは普段と変わらぬ口調だが、自ら俺におっぱいをいじらせていた。そして俺は完全に酔っぱらっていた。
「お前もカタブツなんだよ、あいつにこうやっておっぱいぐらい触らせてやればいいのに」
「んっ、そんなのはダメだ、女はな、好きな男でなければ、そこ、つまんだらだめだぞ?」
「あは、そうよ、バーニィ。女はそういうもの、体の欲だけじゃないの、心の欲、好きな相手、そうでなければ、やんっ♡ そんなにしたらダメよ?」
「そうだぞ? メーヴ様は王子の事が好きだからそこまで乱れる事が出来る。女の矜持、みんなに良く見られたい、そう言う想いは男には想像がつかぬほど大きなもの。それを超える想いがあるから人前でもこうして」
「そうなの、私、バーニィだけ、他の人には興味ないから」
「だが、それでは困ることもある。だから私が二人を支える、そう言う話だぞ?」
そう言いながらもマーベルもべったり体を寄せて来ていた。
酔いが心地よく、楽しくて仕方ない。すっかり酔っぱらった俺はメーヴとマーベルに両脇を支えられながら寝室に。
「それでは私はここで、」
「うるせえ! お前もこいっ!」
「あ、バカ、何を!」
そんなマーベルもベッドに引き入れそのあとはなし崩し。まあ、酔っぱらってたからしょうがないよね。
…そして朝が訪れる。
二日酔いの頭痛を感じ目を覚ます。なぜか左右におっぱいが。まあいいかと思いその両方に顔を埋めた。
「んっ、なんだ、起きたのか?」
「えっ?」
「えっ? とはなんだ、…私は初めてだったのだぞ?」
「えっと、おい、メーヴ、起きろ!」
「もう、なによ、まだ眠いのに」
「ああ、メーヴ様、おはよう」
「えっ、バーニィ?」
「えっ?」
「ふむ、私は心身ともに御側役となった。何しろ女の初めてを捧げたのだからな」
「いや、その、」
「バーニィ!」
「ちがうって、お前も居ただろ!」
「そう言う問題じゃないです!」
「ふむ、私もここで暮らさねばな。主従は常に一緒、寝起きも共に、当然の事だ」
「バカ、バカ! なんでこうなるのよ!」
「酔っぱらってたんだよ!」
「ともかく! 私が居るからにはだらだら過ごす事は許さん! ほら、支度を!」
俺とメーヴはベッドから追い出されしぶしぶと支度を始める。その間にマーベルはてきぱきとベッドメイクを終え、自分の荷物を部屋に持ち込んでいた。そして裸になると俺の前に堂々と立った。
「ちょっと、なにしてるのよ!」
「王子も私のあるじ、お仕えするにあたっては完璧で居たいからな」
「それと裸になることは関係ないじゃない!」
「メーヴ様、こうして裸を晒せるのは手入れに自信があるからだ。さあ王子、私はどんな下着をつければいい?」
「自分で選びなさいよ!」
「そうだなぁこんなのはどうだ?」
「そうか、こういうのが好みなのだな。覚えておこう」
そして服を着ると今度はメーヴを裸にした。
「ちょっと!」
「メーヴ様も夫の好みは知るべきだぞ?」
「私は知ってるの!」
「いいからいいから」
一応嗜みのあるメーヴはおっぱいを腕で隠し、股をぎゅっと閉じて俺の前に立たされる。
「こういうのはどうだ? メーヴ様はおしとやか、だから下着で意外性を」
「悪くないね。でもこっちの赤い線の入ったやつは?」
「なるほどな、メーヴ様は肌が抜けるように白い、下着はそのくらいの方が引き立つ」
「ちょっと、早くして!」
「下の毛の処理はきちんとされているようだな」
「うるさいわね! ちゃんとしてます!」
なんだかんだでマーベルのペース。なんでこうなった。
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