第26話 初雪

 とりあえず出発することが決まったので日暮れになると俺たちは買い物に出かける。何しろジョバンニは装備一式をドラゴンに焼かれ失っていたし、キャシーも剣とあの時着ていた将軍側付きを示す王国兵の皮鎧を焼かれている。そしてメーヴは武器も防具も持っていなかった。

 俺も王国兵の皮鎧はボロボロで使い物にならない。でも以前から着ている革の鎧は

健在、キャシーもお揃いの鎧を持っている。だがそのキャシーは自分の鎧のサイズ調整をしてそれをジョバンニに着用させた。単純にお金がないのとお揃いで作った鎧は特注。筋肉の形に打ち出した黒い革鎧の表面には金属で防御力を伴った意匠が施されている。前に出て戦うスタイルのジョバンニにはふさわしい、そう言う事らしい。

 そしてジョバンニの持つ剣は俺がジルから引き継いだあの剣。今となっては思い入れはないがジョバンニが言うには使いやすくて値打ちのある剣らしい。

 今回は防寒対策として鎧の上に動きを妨げない半袖の毛皮のコートを羽織る事にした。


「ねえ、俺の剣は?」


「とりあえずはいらないかな、だってバーニィは新しい魔法も覚えたでしょ?」


 そう言うメーヴはキャシーと話し合い皮鎧と言うよりはコルセットと言った感じの薄手の鎧。ぎゅうっと体のラインにそって絞られたそれはおっぱいの上半分が露出していた。一応、ほんの一応両肩と背中を覆うパーツもついているがその部分は取り外し可能。そして腰には太いベルトで留められた皮製のミニ丈のスカート。ブーツは膝上まであるニーハイ。すっごく寒そうだが二人はヴァンプ、寒さには強いのだ。


 そこにレイピアと呼ばれる細身の刺突剣をぶら下げる。なんというかお色気重視、まあ、悪くはない。


「私たちは冒険者と言うよりも妻として同行するんです。だから戦闘に備えるよりも夜の戦い、ベッドの上で勝利する為配慮してます」


「うんうん、そうだよね、そもそも鎧なんかあったってドラゴンみたいな強いのには勝てないし」


 そのドラゴンも寒いのは苦手、冬場は巣穴に引きこもり。春まではそこは安心らしい。


 メーヴとキャシーは色っぽいその姿の上に日よけのつばの広い帽子とマントを購入した。なんとなく悪の魔法使いみたいな感じになっていた。


 そしてメーヴも伯爵からの身分保障を受け、今はブロンズのタグをつけている。今回の件も伯爵からの特別任務。プラチナのジョバンニ、シルバーの俺、カッパーのキャシー、そしてブロンズのメーヴ。タグの色はバラバラだが何をするにもただ働きは嫌だった。だってお金ないもん。


 まあ、そんなこんなで買い物をすませ、翌朝、迎えに来た馬車に乗り込み出発する。前に乗った将軍の馬車よりは少し小さいが6人乗り。両脇に長椅子が設置されその間にはテーブル、そしてブレイザーと呼ばれる火鉢が設置されていて暖かい。その上には薬缶が置かれていた。


 御者はもちろんリヴィア伯の親衛隊長、ヴォルド。彼はなんだかんだ有能で戦いだけでなく治世の面でも様々な働きをしているらしい。彼はメーヴの眷属、ヴァンプなので寒い中御者台で馬を操っていた。


 そして俺とジョバンニは当たり前のように長椅子に横になり、それぞれの女に膝枕をしてもらう。今日はエミリアで宿泊、明日はマイセンの以前野営したピルナと言う場所に向かう。そこは小高い丘の上で交通の要所。マイセン南部の中心とするには適したところであるらしい。そこにはすでに商会の支部が建設済み。


「それはそうとさ、メーヴ、あんたってやっぱりアレなの?」


「アレって何よ」


 メーヴはめんどくさそうに髪をかき上げ目線を俺に戻すと手を取っておっぱいをいじらせる。


「アレってあれよ。前に王子がヴォルドを逃がす時にさ、体に落書きしてたじゃない」


「それが? …ああ、そう言う事? ふふっ、彼はね、ああやって私の気を引きたかったのよ」


「えー、そうかな、気を引く為にあそこがユルイとか書かないと思うけど?」


「うふふ、私はもちろん違うわよ? そうでなければ彼は私を選ばない、そう思わない?」


「…まあ、そうだけどさぁ」


「…そうよね、バーニィ?」


 そう言ってニコっと笑い俺と目を合わせる。だがその目は笑っていなかった。


「あ、えっと、あの時はまだ敵同士だったし、ほら、目につく為? そんな感じで」


「そうよ、私は臭くもないしゆるくもないもの。そうよね?」


 まあ実際メーヴをヴァンプ臭いとは思わない。キャシーは結構臭ったけど、あとヴォルドも臭かった。


「私が血を吸ったのは成人の儀の時、ジャンだけよ? 他は眷属にするため魔力は流し込んだけど血は吸ってないもの。でもキャシー? あなたの臭さは別の原因かもよ?」


「なによそれ! 私だって兄さんは吸ったけど、他は、それに脇もあそこも臭くないから!」


「まあ、あなたの主はあのロイド、彼は大したことないし」


「え、そんな名前なの? 私、顔も良く思い出せないんだけど」


「えっ?」


「…そのね、恥ずかしいけど血を吸われてすごく昂ぶっちゃって、でもその後すぐに王子たちが来て、あいつ、やられちゃったから」


「…なるほど、まあ結果としては良かったのかも」


「どういう事?」


「あなたは眷属であって眷属ではない。つまり、ロイドはあなたを使役できない。あなたはその場で兄の血を吸った。つまりロイドは服従に値する価値をあなたに与えられなかったのよ」


「そうかも、私、伯爵みたいに誰かを様つけで呼ぼうとは思わないし。って事はメーヴ、あんたは伯爵と?」


「うふふ、私はこのバーニィだけ。ジャンには女を宛がったの。ヴァンパイアの本能、眷属を作ると昂ぶり、それが異性なら関係を、その時の快楽の記憶、それが主従の縁となるのよ」


「つまりあんたはその昂ぶりに耐えきったって訳?」


「そう、すごく苦しかった。でも私はバーニィのもの、一族の習わし、それにヴァンパイアの本能、そう言うものに勝てなければ私は彼に並べないから」


「そっか、王子にはあのネコって人が」


「そうね、それもあるわ。だけど私は想いを濁さなかった。今回も眷属を、そうしたけれど」


「そう、そこだよメーヴ、お前、なんで眷属づくりやめたの? あのままみんな眷属、そうしちゃえば余裕で勝てたのに」


「…バーニィ、それはね、私は正直勝ち負けなんてどうでもよかった。けれど眷属とすれば関りを。あなた以外の異性と関りを、縁を作ることがすごく不純に感じて。もちろん体を触れ合うなんて無理、私はね、結局あなただけ、そう言う女なの」


「ねえねえ、話は戻るけど、私のようなあるじを持たない眷属ってどうなっちゃうの? あるじが居るからこその眷属でしょ?」


「そうねえ、はぐれ?」


「はぐれって何よ! あの時ゴブリンたちにも言われたけど!」


「…実際のところ判らないのよ。ドラゴンの炎は全てを焼き尽くす。普通の火炎とは違うわ。それを浴びて復活した、そう言う話を知らないもの。…一つ言えることはあなたはその辺の眷属たちより強いって事」


「そうなの? …じゃあさ、私も眷属とか、作れる?」


「どうかしらね、そう言う可能性はあるかもだけど、今言ったように前例がないのよ。これまでドラゴンの炎に焼かれて生き残ったのは彼の父、暴虐の英雄ヴァレンスだけだから」


「…そうだね、俺も聞いた事がないよ。ドラゴンの炎はね、熱だけではなく、滅するという魔力が込められてるってディージャが言ってた。だからドラゴンは最強、例え炎に強くともあのブレスを浴びれば存在していられない。あの時俺が着けていた装備はね、炎、雷、氷結、すべての攻撃魔法をレジスト出来るアンチ魔法の装備だった。

ダンジョンではその通りの効果、攻撃魔法は全てレジスト出来てたからね」


「そっか、私、あの時は必死で」


「キャシーは眷属が欲しいの?」


「そうじゃないよ、でも」


「でも?」


「…ジョバンニは人間だから、いつか私を置いて死んじゃうでしょ? …それに」


「それに?」


「ほら、年取っちゃえばアッチの方だって」


 そんな話にみんな大爆笑。やはりヴァンプは欲深く出来ている。


「まあ、大事な事ね。とりあえずやってみたら?」


「…うん」


「えっ? 俺、同意してないけど」


「嫌なの?」


「嫌っていうか、その、あーっ! まだ、考え中だろ!」


 ジョバンニは相変わらずダメ、俺が顎で合図するとキャシーは彼の首筋に噛みついた。


「なんか痛い! まって、ゆっくり、こういうの初めてだから!」


「そう、相手の血を吸うと同時に自分の魔力、自分自身を流し込むの。それが混じり合いこの上ない高揚をもたらすわ」


「んっ♡ んっ♡」と喘ぎを漏らしながら血を吸うキャシー。最初は不安そうな顔だったジョバンニも今は高揚した顔。


「ああ、ダメ、すっごくムラムラする!」


「…わたしも」


 そこから二人は慌ただしく裸になり、俺たちの目の前にも関わらず激しく睦みあう。終わった時は二人とも放心状態。そして俺はそれにあてられたメーヴに乗りかかられる形でおっぱいを吸わされていた。


「あれっ? なんか牙みたいのが生えてる。ちっちゃいけど」


「…そう、ならばあなたは彼女の眷属、そうなった。もっとも不完全ではあるみたいだけど」


「そうなの?」


「私はわからないよ、そう言うの詳しくないし」


 メーヴはおっぱいをしまうと立ち上がり、目にも止まらぬ速さでジョバンニの腕に切りつけた。


「あ、痛い! なにすんだよ!」


 ところが傷の入った腕は見る見る間に修復していく。


「あ、治った。ちょっと、すごくない?」


「…うん、これで私たちは同族、ずっと、永遠に一緒だよ?」


「えっと、なんか複雑だけどそうみたいだね、ま、いっか」


 基本的に善良なジョバンニは自分に嘘をつかない。こういう場面でも甘い言葉は出てこないし自分を飾る嘘も言わない。そう言う部分が空気が読めない、としてジャンやディージャに嫌われているところ。だが俺はそう言うジョバンニが好ましく思えた。…まあ、バカだとは思うけど。


 その日はエミリアに宿泊、前につかった石造りの本営はここの正式な代官となったソーヤ夫妻が住んでいる。俺たちはそのソーヤたちが住んでいた村長の屋敷に泊ることに。何しろこちらにはヴォルドが居る。彼はこの村を襲った張本人。あの時の当事者であるソーヤやその妻のミラと顔を合わせればトラブルになりかねない。


 夕食は本営で、そう言う話。それまでにヴォルドに風呂を沸かすように言い、彼はおとなしく従った。何しろメーヴは彼のあるじだからね。


 風呂を使い支度を整える。ソーヤの本営に出向いたのは俺とジョバンニの二人だけ。ヴォルドは流石に顔を出せないし、キャシーもソーヤの元カノ、そして珍しくメーヴも残ると言った。


「王子、それに将軍もようこそエミリアへ」


「ああ、うまくやっているようだな」


「俺はもう、将軍じゃない、ジョバンニと呼んでくれ」


 とりあえずそんな挨拶をしてソーヤの妻、ミラが俺たちに酒を注いでくれた。


「…あれからこちらでも色々あって、大変なんだよ」


 今は軍も王都に帰還、竜人たちも引き上げたという。こちらに残るのはソーヤの配下である新兵10名とマイセンからの避難民、そのうちの300ほど。他の難民は各村に分かれて暮らしているという。


「僕も村の出だからよくわかるけど、縁のない人って言うのはさいつまでもよそ者、そうなっちゃうんだ」


 ソーヤたちは数がすくない。難民たちの方がはるかに多い、そうなるといつ反乱となるかわからない。だからソーヤと配下たちはこの本営で暮らしている。万が一に備えて。


「それで対策は?」


「うん、こっちでも色々とやってはいるけれど」


 ソーヤたちの取った手は縁組。難民たちの娘と配下の兵士、それを娶わせ縁を作っているという。そうすれば相手の家族だけでなく、その一族も縁のある人。できるだけ数の多い一族と、そうしているが配下はわずか10名、本人たちの好みや向こうの好みもあり、結果としては50名ほどが縁のある人、そう言う形になったという。


「その人たちは既に畑も割り振り家も、ここで永住、そうしてくれるって。けれど他の人はマイセンが落ち着いたら帰りたいって言ってて。あまり長い時間をかける訳にも行かないんだ」


「なるほどねえ」


 そう適当な返事をするとジョバンニが意見を言った。


「村は君たちとその50人、それでやっていけるのかな?」


「…そうですね、以前のここと同じくらいの数になりますから。畑も無事で家もある。村の立て直しと言う意味ではちょうどいい数です。けれど伯爵からは将来的に開拓も進めたいと言われていますから」


「しかし、開拓となれば収穫までに時間がかかる。それまでは村で面倒を、復興と同時にと言うのは難しいのではないか?」


「…はい、正直に言えばそうです。それに帰りたいと言っている人たちは頑なで」


「あの人たちは勝手なんです! 私たちは敵の領民だったあの人たちを受け入れて、なのにわがままばっかり!」


 ミラは我慢できないと言った感じで口を挟んだ。


「…ミラ、君のいう事はもっともだよ。だけど彼らも好きでそうなった訳じゃない」


「でも、あの人たち、マイセンの人のせいでお父さんもお母さんも、村のみんなも殺されて! それでも戦争だからって、仕方がなかった、そう思って受け入れて!」


「ミラ、それは何度も話をしただろう?」


「……」


「そうだね、悪いのは戦争、将軍だった俺が一番悪いさ」


「…将軍はみんなの仇を討ってくれて、」


「そう、でもマイセンの人からすれば俺は仇さ」


「…だって戦争を仕掛けてきたのはあっちじゃないですか!」


「…マイセンはね、もうギリギリだったんだ。産物もなく、作物の出来もよくない。食料に乏しく、生きるのがギリギリ、だからこちらに」


「でも、私たちは悪くないです! みんな真面目に畑を耕して、春には麦を、夏には野菜、鶏の世話や家畜の世話、ずっと同じ事の繰り返し、…正直つまらない、そう思ったこともあります。でも、ちゃんと真面目にやってて、なのにあんな死に方を!」


「戦争と言うのは誰が悪い、と言うものではないんだよ。必要だからそうなった。悪いのはマイセンの辺境伯? だとしたら彼はもう、死んでしまった」


「…そんなの判りません! でも、」


「君の両親や村の人は死んでしまった。それは事実、でも君は生きてる。死んでしまった人たちの気持ち、やりたかった事、それがわかるのは君だけ、そうじゃないかい?」


「…そうですけど、だから村の復興を頑張って、」


「そうだね、君には出来る事がある。君の夫のソーヤはここの代官、二人が頑張ればこの村はどんどん発展するさ。あった事はあったこと、時は巻き戻せないし忘れる必要もない。そして他の難民たちもみんな同じような事情を抱えてる。忘れられない痛みがあるから、だから譲れない、頑なになってしまう」


「…私、どうすればいいんですか?」


「そうだね、彼らは戦争に巻き込まれ、ドラゴンの襲撃を受けた。そこから命からがら逃げだした、それは悪い事かい?」


「いいえ、」


「だったら君が彼らだったらどうしたいか、それを考えて出来る事をしてあげればいい。君はここの村長の娘、君の夫はここの代官、他の人よりも出来る事は多いだろう?」


「…はい、」


「そしてその事を誇りに思うべきだよ。君の両親も村の人たちも亡くなった。けれど君たちが彼らの遺したものを守り抜く、より豊かに、より幸せに、そうなることができるから。亡くなった彼らが君に望む事があるとしたらそう言う事ではないのかな?」


「…お父さん、お母さん、そうですね、あの人たちに認めてもらえるような村に」


「そう、その為に必要な事は何か、わかるかい?」


「必要なこと、ですか?」


「それはね、まず、君自身が幸せになる事。自分が不幸だと思っている限りは誰かを幸せには出来ないからね」


「…はいっ!」


 ほんとジョバンニは人前だとすごくいい事を言う。


「ですが将軍、難民の対処、それにはマイセンの安定が絶対です。時間はあまりありません。不満が爆発すればまた恨みが」


「…王子、私、あなたに失礼な事を言いました。助けてもらったのに、自分の事ばかり、ごめんなさい、謝ります。だから力を貸してください」


「過ぎた事さ」


 あくまでもそう、気にしていない、そう言う顔を作った。本当はちょっとイラっとしたけど。


「そう言えばミラ、お前と一緒に助かった女たちは?」


「あ、彼女たちは他の村の親戚の伝手で嫁入りを、」


「一人は僕の配下に、その彼は副官、そう言う形で頑張ってくれています。それに彼女たちがここに残れば特別、そう言う存在に」


「…それもあるんです。私と同じ、みんな自分が一番つらい、そう思っていて敵だった難民の人と縁を、そんなの嫌だって」


「判らないでもない話さ。それに彼女たちはみな美人だったからね、他所に行っても大事にされるさ」


 そんな話をして酒を酌み交わす。立場を得たなら得たなりに大変なものだ。


「…将軍のお話はすごく、身に沁みました、僕たちには出来る事がある、それは幸せなことなんだって」


「よしてくれ、俺はもう将軍じゃない」


「でも、私たちにとってはあなたは将軍、この村の仇を取ってくれた英雄です」


「そうですよ、戦争は勝利、それなのになぜ辞任を?」


「…そうだな、先ほどの話で言えば俺には将軍としてできる事、それが少なくなっていた。だけどただのジョバンニ、そうなればまだまだできる事がある、それに気が付いた」


「そうですか、まあ、将軍をおやめになられてもプラチナタグの冒険者、英雄には代わりありません」


「ま、ぼちぼちとやっていくさ。今の俺は王子たちの商会、あそこの一員だからな」


 その後はジョバンニの昔話、冒険譚を聞いていた。前に村長の家で読んでいたのも彼らの物語だった。


「本当にいろいろあったさ。たくさんの仲間の死を乗り越えても来た。プラチナタグを手にしたときは嬉しくもあり、責任感に身が引き締まる思いもした」


「…王子と僕もいくつかの冒険を、仲間だったグランとジェーンを失って、ダンジョンでは連れて行ってくれたジルさんたちも。何度も死にかけて。でもこうして生きているから、だからできる事があるんです」


「そうだ、君はここでミラを救えた。ちゃんと実績を基に代官になっている。次はここの事、大変な分だけ見返りも大きい。…ここを復興、そうなった時、君への一番の見返りは何だと思う?」


「えっと、なんだろう、金貨? 昇進?」


「ふふ、一番の見返りはね、君の妻、彼女の尊敬と愛情さ」


「あは、そうですね。それが一番です」


「ソーヤさんったら」


 ひとしきりそんな話をしてお開きに、外ではマントを羽織ったメーヴとキャシーが待っていてくれていた。


「…えらかったね、バーニィ。あのミラと言う女を許してあげられた」


「見てたの?」


「私はあなたから離れない、そう約束したでしょ?」


 そう言うメーヴに一羽の蝙蝠が、その蝙蝠はすっとメーヴに吸い込まれていった。


「以前のあなたならあの女を引っぱたくくらいはしていたわ」


「そんなことないさ」


「あるのよ、でも今はあの頃とはちがう、だからご褒美」


 そう言ってメーヴは俺の手を引き物陰に。そしてマントを開いてその中に俺を抱え込む。マントの下はなんと裸。そのまま二人で抱き合い、求め合った。


「…見て、バーニィ。雪よ」


「本当だ、でもお前が抱えてくれるから寒くない」


「そう、これも一人では出来ない事、二人なら寒さも感じない」


 ニコっと笑うメーヴを抱きしめキスをする。俺は幸せだった。


 


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