幕間 動き出す闇

そこは暗闇に包まれていた。一切の光も音もない。


「皆、揃った様だな」


そんな静寂を打ち破る様に落ち着いた、けれど覇気を感じさせる声が響いた。


一条の光が椅子に腰をかける一人の男を照らす。


男は6、70歳の老人に見える。だが、外見とは裏腹に覇気に満ち溢れている。


男の言葉に反応するものは誰もいない。しかし、男は気にする素振りも見せず続ける。


「雨宮秋はやはり異世界に転移していた。そして先程、特安の連中に保護された事を確認した」


ザワリと場にどよめきが生じる。けれど、それだけだ。やはり、誰も姿を見せなければ声を発する事もない。


「奴は唯一の成功例。逃す訳にはいかない。よって私はここに雨宮秋捕獲作戦の実行を提案する」


反応はない。


しかし、男は満足げに頷く。


「それではこの案は可決となった。作戦の指揮並びに人選は私が行う。他に意見のあるものは?」


誰一人として応える者はいない。


「ではこれにて本日の会議を終了とする」


男が宣言すると同時に光が消える。そしてまた、その場を暗闇と静寂が支配した。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る