第一回
「心なんていらない」
彼の呟きに、答えてくれる者はいない。そう思っていたのに。
「じゃあ、わたしに心をかして」
いつの間にか、隣には突き放したはずの少女がいた。血の繋がった兄妹でもなく家族でもない。つい最近、出会ったばかりの子どもに気を遣われるなんて。最悪だ。
「君に預けたところで、どうなるっていうの?」
しかも誰かに心を預けるというのは、帰りを待ってくれる恋人のために誓う騎士の言葉だ。
「いっぱいあたためて、ぽかぽかになったらかえしてあげる。そしたら、笑ってくれる?」
その言葉に、彼はそっと自分の頬に触れる。笑い方なんて忘れていた。
彼女に言われてようやく気づくなんて。やっぱり最悪だ。
誓いの意味すら知らない少女に苛立ちを覚え、ぶっきらぼうに告げる。
「いいよ君にやるよ」
本当に──俺の心を、温めることができるのなら。
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