第14話 愛しのイブ

 あの後、結局皆で楽しくご飯を食べて、イルミネーションを見て回って……沢山はしゃいだ。


 そして夏輝達とも別れ……ホテルに到着してしまった。

「ね、ねぇ……?深城さん?ここって……」

「お母さんの友達が経営してるラブホだって!」

(ラブホだって!じゃなくて……)


 ピンクのイルミネーションを纏っていて、それはハートマークの形になっている。

 繋ぐ二人の手も汗が滲んでいるのが分かる。

(まあまあ、年齢ダメでしょ?追い出されるって……)


 中に入ると、大人の女性が微笑んでいる。

「あ、優都君達よね?話は聞いてるわ。ふふっ……」

 その人は赤い口紅で妖艶に、且つ優しく頬笑む。


「あ、あの予約してたって本当に……?」

「ええ、新婚のクリスマスだもの。責任を持って預かるわ……!」

 気になっていたことを聞いてみる。

「で、でも年齢って……」

「しーっ……」

(ま、まじかぁ……)



「ハーレムクリスマス、お楽しみに~」

 僕らは部屋の鍵と色々な道具箱を受け取り、部屋へ向かう。


「そ、その……覚悟は、出来てるから」

 舞桜は恥ずかしそうに呟く。

「私も優都になら、全部あげる……」

 続いて静乃さんにぎゅっと手を握られる。


「やったね!お兄ちゃん……!勿論私もだよ?」

 深城も僕の背中に抱き着いてくる。

(まじかよぉ……僕の理性!頑張れ……!)


 部屋に着くと、照明が三種類あった。

 二つ目はピンク。三つ目は紫。


 そして問題なのは……ダブルベッドが綺麗に二つくっついていること。

(普通の意味で捉えて良いんだよね?でもそれならくっ付けないね)


「えいっ」

 深城がピンクスイッチを入れる。

「え!いきなり!?」

「何言ってるのお兄ちゃん……二人はもうお風呂入ってっちゃったよ?」


「えっ!?」

 確かに二人はバッグを置いて、洗面所の電気が点いている。


「あ、あの……舞桜の誕生日の時は……」

「へ?誕生日の時?あー、あの……でもね、分かってたよ?分かってたけど……素直になれなくてね……?」

 深城は恥ずかしそうに、僕を抱き締めてくる。


「顔、見られるの恥ずかしいから……」

(あぁ……)

 抱き締め返さずにはいられなかった……

「だから二人がツンツンしてたことも、許してあげて?」


「で、お兄ちゃんはこっから何してくれるの……?」

 彼女にうるっとした声で聞かれる。

「キ、キス?」

「その前に、私のことすき?」


「うん……好きだよ。いつも元気付けてくれてありがと」

「うそつき……でもありがとなんて、ずるいよ……!私こんなに好きなのに……」

 ぎゅっと抱き締められて、僕の心も締め付けられる……


「じゃあ嘘でも言うよ。愛してる。僕は深城の味方だ」

「ずるいよ……!敵だよ……」


「深城……」

「嫌だ……」

(本当は嬉しいくせに……)

 僕は彼女に口づけをする。

「ちゅっ」

「それだけじゃ……寂しいよ」


「深城が辛いなら……深城の為にならなくても支える。渚が言うかもしれないとかじゃない!僕がそうしたいんだ」

 そしてもう一度口づけをして、言葉を続ける。


「今まで二人三脚で葉月家を、伯父さんと支えてきたんだ!感謝して当たり前だ!」

「ほんとに?」

「ほんとだよ、ちゅっ……」


『ガチャン』

 もう一度キスをすると、二人がお風呂から出る音が聞こえる。

「深城、入っておいで」

「うん……」


 僕はベッドに座る。

(やっと深城とハッキリと話できた……よかった)

「優都?」

「寝てるの?」

「いや、起きてるよ……」


「優都……好きだ」

「私も……愛してる」

 今日一日我慢してきたんだろう。二人は僕に抱き着いてくる。

 シャンプーの良い香りと、二人の女の子の匂いが僕の心をくすぐる。


「僕もだよ。でも、本当に付いてきてくれる……?僕がまたいつ不安定になるかなんて……」

「させない……!」

「何度だって……!」

(本気なんだね……)


 二人の温かい体に包まれて、眠くなってきてしまう。

「眠い?」

 起き上がった静乃さんに頬を撫でられる。

「うん……」


「キス……欲しい」

「私もよ……」

 舞桜に続いて静乃さんももう我慢出来ないらしい。

(そんなこと言われたら……!)


『ギシッ』

 僕は舞桜を押し倒して、熱いキスをする。

「んちゅっ……はぁむ、れろ……れろ、じゅる……」

「もっろ……じゅる、もっとぉ……」

 可愛らしいお願い通り、彼女の口を舐め尽くす。


 静乃さんが僕の腕裾を引っ張る。

「私も……」

「何してほしい?」

「キス……熱いのほしい」

 彼女も恥ずかしそうに、でも切なそうな顔で……


「よくできましらっ、ちゅるっ……あむっ、んちゅうぅぅ、れろれろ」

「すごい……ちゅ。もっろ、すっれぇ……じゅるる」

 その言葉に我慢できず、熱いキスを交わす。互いの舌を吸い合う。


 キスをする度に脳が蕩けて、もっと二人を愛したくなる。


『ガチャ』

「優都……早く入って、戻ってきて?」

 静乃さんにも僕は焦らされてしまっている。


 急いで体を洗って、お風呂に入って戻ってくる。

 そして三人とキスを重ねて、結構な時間が経った。

「もう十時半……二時間もキスしてたね?」

「うん……でも、大好き。愛してる。伝えられてよかった……!」

 静乃さんが涙を流して優しく頬笑む。

 僕はもう一度彼女を押し倒して、キスを重ねようとする。


「その、私も熱いの……だからお願い……」

「静乃のお願い……?」

 絶対に守ろうと思っていた、彼女の心からのお願いだった。


 それを聞いてからの記憶は、僕だけど……もう僕の物じゃなくなっていた。



「うぅん……」

 目を覚ます。外からは朝の日差しが見える。

 隣には……寒くて布団に潜る三人がいた。

 しかも皆全裸で……勿論僕も?朝の日差して見えないや。


(あれ?やったんだね?あぁ……思い出してきた……)

 ちゃんと意識があるって事は大事には至ってないはず……


(何やってんだァァ!)

「優都……大好き……」

 隣の静乃さんが僕の手を握る。凄く幸せそうな笑みを浮かべて。


 だけど静乃さんの抱える本当の恐怖を、この時の僕は分かってもいなかった……

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