2012.10.31疾風【最終章】05
「じゃあ、どうしたら良かったんだ? あんときは、あれが正しいって思ったんだ」
「恨んでくれても、生きる気力を取り戻してほしかったってほざくんやな? ふざけんなや。無理やり旅行しとったんとちゃうわ。うちも楽しかったのに。それやのに、アホ!」
身体以上に心の成長が著しい聖里菜は、涙を流せるようになっていた。
疾風も成長した。しかも、ついさっきとてつもなく前に進んだ。
朱美との関係が変化したことで、出来ることが増えている。
彼女がいるけれど。
その弟はとてつもないチンピラだが。朱美ともしたのだから、いまさら躊躇う必要もない。
聖里菜に触れてるだけのキスをする。
それだけで、消えかけた恋をかきむしるような真似をしなくてすむ。
疾風の口を開かせるように聖里菜の舌が入って来る。ちょっと待て待て待て。ここまでは、さっき朱美ともしていない。やり過ぎだと思って、口を離す。
聖里菜の手が疾風の背中を掴む。いまだに息が当たる距離で顔を突き合わせている。
「悪かった。あの時の俺は、里菜ちゃんを子ども扱いしてたみてぇだ」
「いまも子ども扱いしとるやんか。里菜ちゃんって呼ぶなや。いやなんや、その呼ばれ方」
「でもさ、里菜ちゃんってあだ名は気にいってんだよ。背抜きって言葉があってだな」
理由を説明しようとすると、キスをされる。向こうのペースにさせないために、今度は疾風のほうから舌を入れる。怯むかと思ったら、すごい舌使いを駆使してきた。
これは、色々とまずい。
引きはがして、今度は運転席に疾風は座りなおす。
「お前、どこで覚えたんだよ。この舌使い」
朱美とも舌を絡めていたら、なにか思うところがあったかもしれない。わざと他の女のことを考えて、聖里菜に対する興奮をおさえこもうと必死であがく。
「舌使いはおろか、腰使いも進化しとるんやけど――あんた、もしかしてうちが星野里菜名義でAVデビューしとるんも知らんの?」
「マジか、元芸能人デビューじゃねぇか。知らんかった。そいつは見ないと!」
聖里菜は呆れた笑みを浮かべる。さっきまで泣いていたのが嘘のように、涙はすでに乾いている。
「せやった。こういう奴やった。自分が携わったVシネマのシリーズ完結も、うちが教えるまで知らんかったもんな」
「んなことよりも、どこのレーベルでデビューしたんだよ」
「そこ重要なん?」
「重要だろ。それによって、どんなプレイしてるかも変わってくるんだから」
「もうええわ。アホ。とにかく、里菜ちゃんって呼ばんといて。うちの体でチンコをシコリよるアホどもが、イベントで馴れ馴れしく里菜ちゃんって呼んでくるんが、ちらつくねん」
「じゃあ、これからは逆に里菜ちゃんって呼ばれる度に俺の顔をちらつかせろよ」
Vシネマ時代の口喧嘩のように冗談を言ったのだが、聖里菜は恥ずかしそうに黙り込んでしまった。
乙女チックさをごまかすように、聖里菜は疾風の手を掴む。
そのまま巨乳に誘導して、揉むように促される。
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