2012.10.31疾風【最終章】04
十五歳になる頃には、聖里菜の金髪も見慣れてくる。
それどころか、背伸びする少女のことを可愛いと思いながらも、対等に扱うように心がけてきた。
聖里菜が疾風と頻繁に会うのは、日に日に弱まっていく父の姿を見たくないという理由もあったようだ。そもそも聖里菜は、父と弟の病院費用を稼ぐために、芸能界で富を築こうと努力してきたのだ。
家族思いの長女として、父に孫を見せてあげたいという話もしてくれた。
協力することになり、中出し解禁。
子宝に恵まれる曰くつきの宿に泊まった日のことだ。旅先での中出しセックス物のAV撮影のように、何度も何度も生チンコで子宮をノックした。
互いの携帯電話が着信を告げても、無視して愛しあった。だから、父親が危篤状態の連絡も、死亡報告の連絡も無視してしまっていた。
セックスに使っていなかった布団に二人で入り、目覚まし代わりのアラームをセットする段階で、聖里菜は父の死を知った。
当たり前だが、聖里菜の精神的ショックは大きかった。意識を失って倒れるまで『死にたい』を連呼し続けていた。
帰りの車内で目を覚ましたときの聖里菜も様子がおかしかった。軽い記憶障害でも起こしているようで、どうしMR2に乗っているのかもわからない状態だった。
だから疾風は教えた。
聖里菜の貞操を守ったときのように、実に自然に彼女を救おうと思った。
『忘れたの? 里菜ちゃんと中出し温泉旅行したくて、無理やり連れてきたんだよ。ごめんね。俺のせいで、お父さんの死に目にあえないことになって』
聖里菜に責任はないと強調する。
『全部、俺が悪いから』
『せや。思い出した――アホなこと言うて、うちが殺したる!』
憎まれるのが、疾風にしてみれば嬉しくてしょうがない。愛した女が『死にたい』を連呼するよりかは、愛した女に『殺す』と騒がれるほうが希望に満ちている。
聖里菜の父親が死んだ病院までの道中に、助手席で暴れられた。カースタントでも、同じように運転の邪魔をされるシーンがあったのを思い出した。
Vシネマ時代のように、疾風は聖里菜と喧嘩しながら、病院の駐車場で別れたのだ。
時は流れ、助手席に聖里菜を乗せて、病院の駐車場に車をとめる。
過去を思い出していたくせに、疾風は当時よりも迂闊になっている。
「あのときの続きみたいだな」
「ホンマやな。殺す、殺すって息巻いてたときやろ。あれの続きいまからやろうや」
助手席の聖里菜はひどく落ち着いた雰囲気で疾風をみつめている。身長はそこまで伸びていないのに、胸が大きくなって色気がムンムンだ。
「続きって言っても、どうすんだよ? 俺をぶっ殺すか? 悩殺はされそうだがな」
「アホ言うなや。最後になるんが、あんなんってどうなんって話や? あのころ、うちはシップーと対等やと信じとったんやで」
「俺もそのつもりだった」
「嘘つくなや。
それやったら、あんなことは言わへんやろ! 全部、シップ―が悪いなんて、言うてほしい訳ないやろ! うちは、うちは! 初恋のアホの背中を見てきたから、泥まみれになってでも生き続ける覚悟はあったんや!」
叫びながら、聖里菜は目に涙をためている。
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