2012.10.31 有③ 05

「俺もカード持ってるけど、二枚もいらねぇか。となると、そうだな。こいつがカード貸すかわりに、俺は君がいつもオナニーで使ってるバイブの代わりになるもん貸すよ」


 フランケンの申し出に、ドラキュラは牙をむき出しにする。


「おまえ、ずるいぞ。俺もチンコを貸すほうがいい」


「だめだって。お前はチンカスまみれをどうにかしてないから、その子もいやがるって」


 性欲モンスターたちは大爆笑。

 有には、なにがおかしいのかわからない。ただ単にこわいだけだ。


「ちょっと、子供がいるところで、下品なこと言うってなに考えてるんですか?」


 あずきの言葉に、フランケンは大きな顔を触りながらニヤニヤする。


「AVコーナーから子供と一緒に出てきたJKが文句いうなよ」


「これには、訳があって」


「わかってる。お兄さんらは、全部わかってるから」


 あずきの言い訳を聞く気がないようだ。


 へらへらしながら、喋り続ける。

「ショタで妥協するぐらいに欲求不満なんだろ。可愛い顔のJKは、みんなエロいもんな」


「行こう、監督くん。こんなのと関わっちゃだめ」


 あずきに手を引っ張られる。男たちに背を向けて歩き出す。


「ひどい言われようだな。でもよ、邪険に扱わないでくれよ。絶対に、そのガキよりも、楽しませることができると思うからよ」


 背後からの声は、プレッシャーとともに近づいてくる。


「ケチケチすんなよ。帰るんなら、せめて揉ませてくれよ。いいだろ? な?」


 答えを求めていない問いかけだ。

 フランケンが先行して、あずきの胸を後ろから掴もうとしている。気づいたからには、有の体は自然に動く。

 あずきと繋がっていた手をふりほどき、変態から守るように体を張る。


「ボクちゃん、邪魔しないでくれる? それに、勘違いしてるみたいだから、教えとくね。胸やマンコなんてのはよ、触られても減るもんじゃないんだ。むしろ、その子は触られたら気持ちいいんだぞ」


「最低。死んだらいいのよ、あんたたち」


 悪に対して沸点の低いあずきだ。黙っていればいいものの、あからさまに連中の神経を逆なでする。

 あまり刺激しないほうがいい。


 性欲モンスターたちは手馴れている。

 店の柱と棚の影を利用することで、すでに有とあずきは死角に追い込まれていた。


「この前みたAVにも、こんなシチュエーションあってな。勉強になったから、試したかったんだよ。この死角のつくりかたも完璧だろ」


 フランケンとドラキュラがオスの本能をむき出しにする。どんなハローウィンメイクよりも、見たものの恐怖をあおる顔だ。


「大丈夫だから、心配しないで。俺ら痴漢が趣味なだけだから」


「つーか、可愛いな。やべぇ、ちゅーしちゃおうかな。大声出される前に、手じゃなくて口で口を塞ぐのは定石ってか」


「やめといたほうがいいですよ」


 ここまで調子に乗った二人組に、有は同情する。

 ここでやめたところで遅いかもしれないが、あなた達の未来は最悪だと、忠告を続けようと思う。

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