2012.10.31 銀河③ 02

 デスクトップ上に必要最低限のフォルダしかないことから、前に付き合っていたOLを思い出した。

 あの女のパソコンは、仕事と趣味の二つのフォルダしかなかった。趣味のほうにはカテゴライズされたオナニー用の諸々が整理されていた。


 このパソコン上にも『趣味』というフォルダをみつけた。

 クリックして開くと、そこからもフォルダが細分化されている。


『サンダーバード』『モスマン』『フライング・ヒューマノイド』


 訳の分からないフォルダ名の中に、エロいものを紛れ込ませておくのは、常套手段だ。


 フォルダ名『ロッド』。

 岩田屋のロッドとは、なにを隠そう久我銀河のことだ。

 銀河のあだ名のロッドとは竿のこと、つまりチンコだ。となると、このフォルダには、エロ画像や動画が入っていてもおかしくはない。

 フォルダ『ロッド』の中には、画像、動画、文書と様々な種類のファイルが揃っている。


 銀河は喜々として、画像ファイルを開いていく。

 山と空が映った風景。学校の日常空間。ニュース画面、BAGHDADのライブ映像。

 共通点は見当たらない。意味不明すぎる。

 ギャルの弟は、精神が病んで入院しているのかもしれない。だとしたら、是が非でも姉を目の前で抱いてやるべきだ。入院して家族のお荷物となっているガキの精神が完全に崩壊したほうが、みんな楽になれるだろう。


 文書ファイルもクリックした。

 ここまでくると、もうエロいものは出てこないだろうと諦めている。

 だから、逆に官能小説が出てきたら、オナニー中の楓にばれてもいいので、大爆笑するだろう。

 銀河は真顔のまま、それを読み進める。


『 空中を肉眼では捉えきれないほどの高速で飛翔する。謎の飛行生物。


 アメリカでは『空飛ぶ棒』という意味のフライング・ロッドや単にロッドと呼ばれる。日本ではスカイフィッシュという名前でも浸透している。

 アメリカを中心に全世界に出没し、写真やビデオで撮影されている。日本では、兵庫県神戸市の六甲山が出現の中心となっている。一節では、同山の地獄谷に棲息地があるという。


 スカイフィッシュ研究のパイオニアは、アメリカ・ニューメキシコ州在住の映像コーディネーター、ホセ・エスカミーラだ。

 一九九四年三月始め、エスカミーラがロズウェルで、三日間にわたり、ビデオによるUFO撮影を行った。三月五日に撮影した一六分間のビデオテープに奇妙な物体が写っていたのだ。

 それは、いわゆる金属的な質感をもったUFOとはちがい、黒い棒状の物体だった。


 カメラの内部的な誤作動によって写りこんだ単なるノイズではないかという意見も出たが、エスカミーラは納得しなかった。

 二週間後の三月一九日、今度はロズウェルにほど近いミッドウェーに二台のビデオカメラを持ち込んで、再度撮影を行う。


 すると、二台のカメラに、やはり黒い棒状の奇妙な飛行物体が写りこんでいた。カメラのノイズならば、同じものが撮影されるはずがない。鳥か昆虫の可能性もあるが、何度も同じシーンをコマ送りで再生するうちに、明らかにちがうという確信が強くなる。


 目視できなかったが、高速で空中を飛ぶ「何か」が、二台のカメラを確実に横切っていたのだ 』


 長い文章なので、内容がほとんど頭に入ってこない。楓が長文のメールを送ってくる悪影響が出ている。

 いつの間にか、長い文には拒否反応を起こす身体となっていた。

 とりあえず、流しみ程度で続きを読んでいくと、印象に残ったものがある。


 捕獲作戦が、メキシコのゴロンドリナス洞窟で行われた。


 スカイフィッシュ(ロッド)は、洞窟(穴)に住んでいる。


 人間の男に生えている棒も、女の穴に住みたいという習性がある。

 チンコはマンコに入れたい。

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