2012.10.31 銀河① 01
射精の瞬間、銀河はカレンの頭をおさえつける。
顔や服を万が一でも汚さないようにと、銀河なりに気をつかったのだ。
精子をカレンの口の中に出し切れば、たとえばハローウィンの祭りに出かける用事がこのあとあっても、大丈夫。
銀河なりの優しさは、男の傲慢さに直結している。
「あー。良かった。相変わらずカレンさんのフェラは最高っすね。給食を我慢して、会いに来た甲斐がありました」
本日、一〇月三一日の岩田屋中学校の給食は、パンプキンスープをメインとした献立だ。実は、我慢するほどでもなかったことは、黙っておく。
カレンは銀河を睨みつけてきた。
ダッシュボードからティッシュを取り、口をおさえる。
「なんだよカレンさん、飲んでくれたらいいのに。パンプキンスープに混じってる生クリームみたいなもんですよ。たぶん」
つばと精子が混じったティッシュを丸めて、カレンはゴミ箱を探している。結局、銀河の顔に投げつけてきた。
ゴミ箱と思われているのかもしれない。
「あたしは料理人よ。舌がバカになるでしょうが」
「えー、調理中の味見で、おれの味を思い出してもらいたかったのに」
職場では『神の舌』と異名をつけられているほどに、カレンは繊細な味がわかるそうだ。そんなものを精子で汚せるのも、セフレの特権だ。
「残念ながら、精子の味で思い出すのは、別の男の顔だからね」
「ほんと、そいつが羨ましいよ。カレンさんを調教してるんだもんな」
羨ましいとは言ったものの、それよりも感謝の気持ちのほうが強い。
どこの誰かは知らんが、中学生のカレンに性行為のイロハを叩きこんでくれてありがとう。
おかげで、カレンが仕事終わりに車内でフェラをしてくれていますよ。
カレンの過去を、銀河はいくつも知らない。それでもいいと思っている。
互いに傷だらけの笑顔を浮かべるという共通点だけで、罵り合いながらでも関係は続けられる。
車内に風が入ってきた。
カレンが車のドアを開けたようだ。ドアから身を乗り出して、カレンは口をゆすいだ水を地面に吐き出す。
「おれにも水くれませんか?」
「ドブ水でも飲んでろ、クソガキが」
「間接キスもいやがるなんて、ほんとにカレンさんは可愛いっすね」
肉体関係を持っているのに、一度も唇を重ねたことはない。
彼女なりのこだわりだ。
性的なこだわりは、誰しもが一つは持っているものだろう。
いままで百人以上の女を抱いてきた銀河でも、決して生で挿入しないというこだわりを持っている。
「そんなにキスしたいんだったら、金本ちゃんのところに行ったら? 小学生の女の子だから、キスぐらいしかしてないんでしょ?」
「いや、若菜ちゃんは金曜日だけの相手だかんね」
金本若菜。
従姉妹の久我遥の同級生で小学四年生だ。生理がきていない相手にも、キスだけの関係で終わらないのが、久我銀河。
岩田屋のロッドという蔑称は伊達じゃない。
「どの曜日に、誰と会うのか決めてるんだっけ? ゲーム感覚なルールを守ってんなら、あたしと水曜日に会うのはどうなのよ?」
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