3章 アリシアの作戦 その3

 早速アリシアはお茶会の計画を立て、令嬢たちに手紙を送った。企画会議では、案の定ホプキンスは始終渋面だったがなんとか皆の了承を得られたので、すぐにお茶会の場所として庭園を確保したし、令嬢たちからも色よい返事をもらえた。さらに、既婚者ではあるがカレンも参加してくれるので心強い。

(カレンも協力してくれるのだから、あとは私次第ね)

 昔、ラーラにくっついてお茶会に参加したことがある。ラーラが主催する際には手伝いもしたが、アリシアが主催するのは今回が初めてだ。緊張するが、失敗するわけにはいかない。

(全ては、ジュリアン様のため。エンブレン王国の明るい未来のためよ!)

 そうしてお茶会の日まで、着実に準備を進めていたアリシアだったが――

「……アリシア、今度お茶会を開くんだって?」

 執務の合間、ジュリアンの唇から零れた言葉にアリシアは目を瞬かせた。

「……は、はい。四日後はお仕事がお休みなので、令嬢たちに声を掛けてお茶会をすることにしたのです」

「それって例の、僕のお妃探しのためだよね」

「……はい」

「ふぅん……まあ、頑張るといいよ。君がお茶会を主催するのは初めてだよね? 困ったことがあれば相談してくれ」

「……はい。ありがとうございます」

 ジュリアンの反応はいたって冷静で、事務的だ。そこからは、「まあ、どうせ無駄だけど」という彼の本心がにじみ出ているようだ。

(でもそれ以上に……「どうでもいい」って感じもするわ)

 アリシアは目を細め、地方領主への手紙の内容を推敲する主君の姿を少し離れたところから見つめた。

 ジュリアンとお互い宣戦布告をして、しばらく経つ。

 この数日間でアリシアが気づいたのは、「ジュリアンの態度が非常に淡々としている」ということだ。

 夜の薔薇園で求婚したことを思い返すとロマンチックだったな、と思うが、それ以降「口説く」と宣言した彼の態度から、やる気は感じられても愛情は感じられなかった。

(……まあ、あれこれ期待しているわけでもないけれど)

 もともと物事に頓着せず、去る者追わずの精神を持っているジュリアンだから、アリシアへの求婚も愛情があって行ったことではないのかもしれない。

(そうしたらますます、私を選ぶ理由が分からなくなるけれど……でも、いつか愛情を持ってどなたかに求婚するようになれば、問題ないわ)

 終わりよければ全てよし、である。

 そのためにもアリシアは、お茶会を成功させなければならないのだ。



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