六月初旬


水無月(6/4)


 紫陽花あじさいの季節が来た。外をほっつき歩いていると、そこここで赤に青に紫に咲いているのを見る。我が家の庭の西に咲いているのは濃い紫。梅雨入りまで保つだろうか。


 今年初めて露草つゆくさが咲く。花弁は三枚、二枚の鮮やかな青の花弁が緑の中で一際目を引く。朝に咲いた花が昼頃に見るともう溶けてなくなっている。露草と呼ばれる所以である。


 烏瓜が蔓を伸ばしはじめた。近くに添え木を挿してやると、動物のような素早さで、すぐに蔓を巻き付ける。連日の陽気で今日は九株目と十株目が芽を出した。鉢植えが少し手狭そうである。

 一足先に出た朝顔もにょきにょきと蔓を伸ばし、三十糎ほどの丈になっている。南東側の嵌め殺しの窓の外に蒔いた分も、すくすくと育っている。そろそろ網を巡らせ、夏の間の日除けにする予定。


 どくだみの白い花がそこかしこで咲いている。葉は揉むと独特のにおいを発する。子供の頃、何を血迷ったか、この葉っぱを齧ったことがある。以来二度と口に入れたことはない。種々の薬効があることから別名を十薬という。良薬口に苦しということだろう。その独特の臭気と旺盛な繁殖力で敬遠されがちな植物だが、朝霧の中でぼんやりと白い花を無数に咲かせる様は幻想的の観がある。


 梅の実が熟して、道に落ちている。まだ熟れ切っていないのか、風のために掻き消されているのか、匂い立つというほどではない。梅雨そのものは憂鬱だが、梅の実や紫陽花にはやはり雨が似合う。もし梅雨がなければ、それはそれで寂しいと思うのかもしれない。


 庭に来るのは雀の親子ばかり。もう親とさほど大きさの変わらない幼鳥が、盛んに餌をねだっている。暫く親がそっぽを向いていると、幼鳥は自分で餌をついばみ出す。初めからそうすれば良いものをと思うが、まだ独り立ちは先のようである。


 午前中は無風から微風、じっとりと熱が籠り、走るとすぐに汗が噴き出す。昼過ぎ頃から風が吹く。風呂上りの夜風が涼しい。

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