三月下旬


弥生(3/29)


 季節外れの雪が降る。水気を多く含んだ牡丹雪。花も新芽も凍る寒さである。姫林檎の薄赤い蕾が雪を被ってうなだれている。先ごろ発芽したばかりの烏瓜の実生も凍えている。勇み足を踏んだだろうか。

 町がひっそりと静まり返っているのは雪のためか疫病禍のためか。いづれにせよ今日は遣らずの雪となった。

 季節外れの淡雪の寿命は短い。寒さを堪えて窓を開けると、もうそこかしこから雪解けの音が聞こえてくる。束の間の銀世界を眺めながら布団にくるまる、贅沢な日曜日。




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