三月下旬


弥生(3/27)


 西南の強い風が吹いて満開の山桜が花弁を散らしている。花吹雪と言うに相応しい見事な散り様。


 三月初頭あたりに蒔いた烏瓜からすうりの種が芽を出した。冬の間に近所で拾ってきた実から取った種である。暖かくなるまで待とうかとも思ったが、ウリ科のたくましい植物であるからと、結局いてしまった。

 種は蟷螂かまきりの頭に似た形をしており、両側の目に当たる部分は空洞、額から顎に当たる部分に胚を格納している。全部で三、四十粒はあったので発芽促進処理(種皮に切れ込みを入れ一晩水に浸す)をするものとしないものとに分けて蒔いた。以来、毎日水やりを欠かさず今か今かと待っていた。

 今日、一番乗りで芽を出したのは処理をしたもの。朝見た際にはまだ発芽していなかったが、午後になって気温が上がりだした頃にもう一度覗くと黒い種皮を頭に被った実生みしょうがプランターの隅に顔を出していた。立ち上がったばかりの茎は薄紅色を帯び、丈は既に二、三センチほどもある。朝には影も形も見えなかったことを考えると、凄まじい成長速度。或いは芽吹いているのをうっかり見逃していたのかもしれないと思われるほどである。

 烏瓜はどこにでも見かける蔓性の植物である。繁殖力旺盛なので日除けなどにする以外にはあまり人にありがたがられるものでもない。しかし夏の夕べから夜にかけて咲かせる純白のレース状の花は美しく、不思議である。

 種から育てると花を作るまでに二、三年かかるというから、成長を見守りながら気長に待つことにする。

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