六月下旬


水無月(6/22 夏至)


 梔子くちなしの純白の花が八重に綻んでいる。玄関の戸を開けると噎せ返るような甘い香りが漂って来る。


 土手沿いに咲いた紫陽花に蜘蛛の巣が懸っている。霞のようにきめ細かい巣に、ポロンと丸い雨雫が溜まっている。


 なにか良い匂いがするなと思って顔を上げると、果樹園の梅の木から熟れて黄色くなった実が落ちている。枝にはまだたくさん青い実が残っている。


 柿の木ももう五百円玉くらいの小さな実をつけはじめた。こんなに早い頃から実をつけていることを、この歳になるまで知らなかった。


 畑の柵の上で雉鳩が交尾をしている。大変貴重なところを見させて頂いた。雉鳩は求愛の際、頭を上下に振る踊りをする。


 蝉の声はまだ聞こえない。今年の梅雨入りは六月七日。久しぶりの梅雨らしい梅雨。どこから入ってくるのか家の中をダンゴ虫がよく這っている。


 今日は夏至。一年で一番、昼の長い日。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る