五月下旬


皐月(5/25)


 柿の木の柔らかかった新芽がクチクラ層を形成して、てらてらと輝いている。日中の気温は三十度を超えたらしいが、乾いた風が絶えず吹いている分、過ごしやすい。季節は初夏。緑は一段と深く、鳥たちはその濃い陰の中で巣を掛け、卵を抱き、子を育んでいる。


 夜は空気が湿気を含んで、仄かに甘い匂いがする。


 先日、四国まで足を運ぶ機会があった。岡山から香川へ渡って、愛媛、高知と巡った。瀬戸内の浜は花崗岩を多く含み、眩しいほど白い。

 ところ変われば生物相も変わり、こちらではあまり見かけない生き物の声を聞き、姿を見た。河鹿蛙かじかがえるの鳥の囀りのような美しい声、鮮やかな黄鶲きびたき、日本猿の赤ら顔。寄宿先の部屋は山の尾根に建っていて、絶えず小啄木鳥こげら杜鵑ほととぎすの鳴き声が聞こえてくる。勿論、初鰹も食べた。まさしく、目には青葉 山ほととぎす 初鰹。


 清流の冷たい流れに足を浸し、滝の落ちる音を聞きながらおにぎりを頬張る。これほど美味いものはない。


 目と耳と舌と、鼻も肌も使って異郷を堪能した。大変楽しい旅行であった。

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