第17話
私は幸せでした。
そして私は子どもの頃からずっとあった息苦しさから解放されました。
1週間に1度スーパーに出かける時以外は、裸で過ごしました。
このままずっとこうして暮らしたい。
それが叶わないのなら、彼の根元で朽ち果て土と化し、彼の一部になりたい。
そう願いました。
ある日、ほとんど誰も訪れることのない私のところに1人の男性がやって来ました。
ただ同然で家を貸してくれている大家でした。
電話で話しただけで彼とは会ったことはありませんでした。
年配の男性かと思っていたら、まだ若く、私と同じくらいの歳に見えました。
と言ってもこの数カ月、私は1度も鏡を見ることがなかったので——家に鏡はありませんでした——私がどんなふうであったのかがうる覚えになっていましたが。
それから大家の男性はよく私のところに現れるようになりました。
「どこか不都合なところはないですか?なんでも言ってください」
やってくる度に、壊れて雨漏りする屋根を直してくれたり、切れっぱなしになった電球を交換していってくれました。——暗くなったら寝ていたので電気は必要ないのですが——私は大家には体の静養でここにいるのだと嘘をつきました。
そうでないと変な女だと思われ、ここから追い出されるかもしれないと思ったからです。
大家の男性は同情の色を顔に浮かべ、より一層私の世話を焼くようになりました。
正直、私には迷惑でした。
いつも大家は突然やってくるので、また窮屈な服を着ていなければなりませんでしたし、大家がいる間は自由に彼や他の植物たちと会話することができません。
ですが大家です。
無下にはできません。
どうやら大家の男性は私に恋してしまったようでした。
どうにかして大家に嫌われることなく大家を遠ざけることはできないだろうか?
私は考えました。
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