第11話
その日も誰かが家族旅行で行った温泉地のどこにでもあるような温泉まんじゅうを食べながら、3人の子持ちの店長の話を聞かされていました。
「まぁ、私の人生なんて平凡を絵に描いたようなもんだけどね」と言いながらも彼女の人生について話すのを止めません。
「でも子どもはいいわよ〜」彼女は会話の中で何度もその言葉を繰り返しました。
窓の外でイチョウの黄色が風で揺れていました。
私は将来結婚をしなくてはならないのだろうか?
その問いは喉に詰まった異物のように私を息苦しくさせました。
そしてその人の子どもを産み母とならなければいけないのだろうか?私にできるだろうか?
たとえようのない不安に包まれました。
私が他の人と違うところは植物の言葉が分かるだけではありませんでした。
私は多くの女性が望むことを望みませんでした。
できれば私は一生結婚せずに1人でいたいと思っていました。
私を取り巻く絶対的存在は驚くほど大きくなっていました。
休みの日は1人で登山に出かけました。
連休を使って泊まりで行くこともありました。
山に入ると呼吸が楽になりますし、何よりも山の木々や愛らしい野草たちと会話すると癒されました。
皆、自然に触れると癒されると言います。
私のように植物の言葉が分からなくても、彼らの発するエネルギーをちゃんと受け取っているのです。
私は他の人よりも少しだけ感覚が敏感なだけなのだと思うこともあります。
山の植物たちは都会の植物たちと違ってあまり口数が多くはありませんでしたが、いつも私が無事に登山を行えるように助けてくれました。
急な天候の変化や間違った道に進みそうになると、必ず植物が教えてくれました。
1度数キロ離れたところに熊がいると白い一輪草の花が教えてくれました。
どうしてそんな遠くのことが分かるのかと尋ねると、その辺りにいる同じ一輪草から信号が送られて来たと言うのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます