第10話
どうして彼と付き合わないのかと、私を責める女の子もいました。
「識子さんさえいなければ、私が彼に告白するのに」
と、その女の子は泣きました。
「付き合っている人がいないなら、付き合ってあげればいいのに、冷たい人」
そう思われていることも知っていました。
私が今まで誰ともお付き合いしたことがないと言うと周りはとても驚きました。
言ってしまって、一瞬しまった、と思いましたが仕方ありません。
「そんなに美人なのにもしかして処女?」
「今どき結婚するまで守るとか?」
私のことを冷たいと言って距離を置いていた人たちも興味津々に近寄って来ました。
中には一生懸命、結婚前に全部済ませて相手を判断した方がいいと私を諭そうとする人もいました。
またこんなことを言う人もいました。
『男は女がいて本当の男に、女も男がいて本当の女になるのよ』
学生時代は私を変わり者だと判断すると離れていく人たちが殆どでしたが、それは同世代の若い人特有のものだったようです。
彼らは私の噂話をしながらも、自分たちの興味のあるものの方が大切でした。
それに比べ社会に出るといろんな年齢の人たちと一緒に働きます。
とりわけ私よりずっと年上の女性たちは執拗に私のことを干渉してきました。
子育ても終わり暇なのか、自分が生きてきた平凡な人生を少しでも意味のある中身の濃いものにしたいのか、私が聞きもしないのにあれこれ人生のアドバイスのようなものをしてきます。
私はそんな彼女らの話を深刻そうに聞きながら、早く休憩時間が終わらないかと、時計ばかり気にしていました。
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