第7話
高校に入った時ぐらいから、男の子によく告白されるようになりました。
子どもの頃から容姿を褒められることが多く、学園祭でミスに選ばれ何かと周りの注目を浴びました。
勉強が忙しいからと——たいして勉強なんてしていませんでしたが——男の子の交際の申し出は全てお断りしました。
クラスの人気者の男の子をふった時は女の子たちにもったいない!と言われましたが、その男の子がどうしても私には魅力的に見えませんでした。
すらりと高い身長も、サラサラした髪も、健康的な肌の色も白い歯も、女の子たちがきゅんきゅんすると騒ぐ切れ長の目も、私は全然興味がありませんでした。
それよりも私は姿形の美しい植物を眺める方が断然好きでした。
植物はオスとメスを同時にあわせ持つものが多いですが、中にはオスとメスが分かれた ものもあります。
アカマツやイチョウなどがそれです。
他の人には分からないでしょうが、私にはオスはオスらしく、メスはメスらしく見えました。
オスの木は枝葉の具合ががっしりとしていて頼もしく見えます。
頼もしく思えるという気持ちがきゅんきゅんなのだとしたら、私はオスの木にきゅんきゅんしているのでしょうが、そこのところはまだよく分かりません。
ただ他の女の子たちがどんなに逞しく見えるという男の子でも、立派なオスの大木に比べたら非力な蟻んこ同然です。
私は1人っ子でした。
よほどの家庭の事情がない限り今の日本では大学に進学するのが当たり前だと、学校の先生も皆言っていました。
それは高校の時の絶対的存在の1つでもありました。
本当は私は大学に進学なんてしたくはありませんでした。
そこで少しでも植物に近づきたいと、植物学科のある大学を受験しましたが残念ながら不合格でした。
私の頭は他人から褒められる容姿ほど褒められるものではなかったのです。
家から近いあまり名前を聞いたことのないような大学に進学しました。
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