第6話

 植物人間


 もしかしたら私には植物の血が混ざっているのではないか?


 本気でそんなことを思い、図書室の本で調べまくりました。


 でも出てくるのは事故や病気で体が動かなくなった人たちのことや、奇病で体の一部が植物のような形をしてしまった人の記事と、他は空想の恐ろしい怪物のイラストばかりでした。


 私のように植物の言葉が分かり樹液の音が心地良いという例を見つけることはできませんでした。


 とてもがっかりしました。


 私は少しでも大好きな植物たちに近づきたかったのです。


 でももしかしたら、という思いはぬぐいきれませんでした。


 私の体にもあのきれいな音で流れる樹液が流れているのではないか?


 切り傷で流れる血は赤いけれど、もっと奥、私の中心を流れる血は透き通った透明な色をしているのではないだろうか?

 

 

 私にはまだ初潮がおとずれていませんでした。


 私の年代の女の子の中ではかなり遅い方でした。


 人と同じでないことをひどく心配する母は私を病院に連れて行きました。


 検査の結果はどこにも異常がないとのことでした。


 異常がないのに、それでも母は不安がっていました。


 あそこの病院は評判が悪いから、他のところで検査を受け直した方がいいかも知れないと言い出しました。


 その矢先に私に初潮がおとずれました。


 トイレの水に落ちる赤い重い血は濁って汚い色をしていました。


 もしかしたら私にもあのきれいな音のする樹液が流れているかも知れないというほのかな希望は打ち砕かれました。


 どす黒いその血は私の中心から滴り落ちていました。


 ショックでした。


 そんな私とは反対に母は大喜びでした。


 これで識子も女の子になった、と。


 私は自分に植物の血が混ざっていることを望んではいましたが、私はしっかりと自分は女の子のつもりでした。


 初潮がくる前の私は女の子ではなかったのでしょうか?


 女の子でなければなんだったのでしょう?


 もし永遠に初潮がこなければ私はなんになるのでしょう?


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